THE TWO BROTHERS 1853 | 二人兄弟 |
Oh much is the noise that is made among boys The fish hurried up by the dozens, Said he, "Thus shall he wallop about The wind to his ear brought a voice, "A good nibble or bite is my chiefest delight, "For water my thirst was not great at the first, "I stick to my perch and your perch sticks to you, "Oh, grant but one wish! If I'm took by a fish "If the fish be a trout, I'm afraid there's no
doubt "But in those ten minutes to desolate Fate "Oh hard is your heart for to act such a part; "'Twas my heart-cherished wish for to slay many
fish "Oh would I were back at Twyford school, "I am sure you'll allow you are happier now, "And as to the rod hanging over your head, "Do you see that old trout with a turn-up-nose
snout? "To-morrow I mean to invite him to dine Many words brought the wind of "cruel" and "kind", "What? prettier swimming in the stream, "What? a higher delight to be drawn from the sight "I know there are people who prate by the hour "As to any delight to be got from the sight, "They say that a man of a right-thinking mind "Take my friends and my home- as an outcast I'll
roam: Forth from the house his sister came, "Oh what bait's that upon your hook, "Whoe'er would expect a pigeon to sing, "Oh what bait's that upon your hook, "I's mighty wicked, that I is! "And when will you come back again, She turned herself right round about,
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昔 トゥイフォード校の二兄弟 学校去る時 聞かれたことに 「ギリシャ語 ラテン語 学ぶかい 一丁 駆っけくら してみせるかい それとも 向うの橋へ行き ハヤでも一緒に釣ってみる?」 「ギリシャ語 ラテン語 歯が立たぬ 駆けっこ比べも おっくだな 僕は向うの橋に行き ハヤでも一緒に釣つりたいな」 彼は二節 竿を継ぎ さらに一節継ぎ足して 釣り針入れから大針出して 弟 それに引っ掛けた 豚追い遊びする子らの その騒がしさはすごいけど 弟 橋から投げられた時は それにも勝る大騒ぎ 魚 群れなし集まって 噛み付こうと意気込んだ 放り込まれた若者は 軟くて若くて美味そうだった 兄は言う「弟 ジタバタするだろう 魚は安々彼を食う 彼の悦び癪の種 今 『ティーズ川』の怖さを叩き込もう」 どこからか 声がして 「兄さん そんなことやるべきじゃなかった 僕が一体何をした 人を殺して楽しいの? 食ったり齧ったりすることは 僕の最大の楽しみだけれど 自分がその目に会うなんて 魚に噛まれるの 真平ごめん 今ははや ハヤの大群腕を噛み スズキは膝に噛み付いた 喉の渇きは大してないが もう魚にはうんざりだ」 兄は叫ぶ「何が何でも恐れるな 互いに条件変わらない 僕らの状況極めて近い (殺人問題別だとすれば) 僕の止まり木(perch)、橋の上 お前のスズキ(perch)は水の中 僕は止まり木 お前はスズキ しがみ付くのは全く同じ 料金所(a turn-pike)がすぐ傍で、気になるのはお前の料簡 お前が槍(pike)もて向かって(turn)こぬかと 「ああ、後生だから、お願いだ。もしも魚に食われたら (餌は貴方の弟ですよ) 釣上げたけりゃ 釣上げな 打つときゃ 優しく 打とくれ」 「鱒が釣れたら 先ずとりあえず 電光石火でそれを打つ それががカマスなら すぐには打たぬ 10分間は 待つつもり」 「10分間も 放ってたら お前の弟 獲物を逃がす」 「では5分に縮めよう さすればお前は無事だろう その可能性は少ないけれど」 「そんなことする兄さんの 心はまるで鉄のよう 花崗岩 それとも鋼で出来てるの?」 「何が何だかわからんけれど 馴れるに数日かかったな 魚を殺(や)るのが私の悲願 日々に悪意が膨らむが 殺し重ねても 心は満たぬ むしろ 逆だと私は言いたい」 「あぁ トゥイフォード校戻りたい 鞭で打たれて勉強したが」 兄叫ぶ「それはならぬ。弟よ お前はカマスとうまくやれ きっと幸せ味あうはずだ ただ遊ぶだけしておけば 絶対保障 この一筋の糸 日に30にいや勝る お前の頭の上の竿 きっともうすぐ落ちるはず お前がここに住んでれば 何の咎めも課せられぬ 反り鼻老い鱒 お前は見たか (ましな話に話題をかえよう) ねえ、弟よ やさしい言葉を掛け合おう この川でその鱒一番お気に入り 明日彼を 晩御飯に呼ぼうと思う (みんな気晴らしと思うだろう) 天気がよければ釣り糸垂れて 何時がいいか決めるとしよう 彼はお呼ばれの経験なくて 作法も十分知らぬであろう どんな服装につかわしいか 教えてやるのが私の努め」 「酷だ」「親切だ」「獣達に比べれば 人は悩みの多いもの」そんな言葉が飛び交った 色んな言葉をじっくり聞いて その上 考え 答えていった 「なんだって のんびり横になってるよりも 川で泳ぐがしゃれてるだと? きらきら魚のご馳走見てよ こんな光景又とない 何だって 魚がピチピチ泳ぐのを 見るのがもっと面白いだと なんと お前は愚か者 彼らを自由にしておくよりは 殺す楽しみ遥かに勝る こんな話題をいつまでも喋る人はいるものさ 天と地 そして大海の美しさ 命の躍動享受する 飛ぶ鳥 そして 泳ぐ魚 見る喜びに関して言えば 馬鹿な人にはおあつらえ だが そんなものはごまかしで 鮭釣るのには 比較にならぬ まともな頭をしている人は 物言わぬ生き物好きになる ティーズで魚を釣らないようなら そんな頭はなんになる 友も家庭も持っていけー無頼の私はこう叫ぶ 銀行預金も進ぜよう それは私の望むこと だが 私から魚を召し上げるなら わが人生はモヌケノカラだ」 妹家からやって来た 兄さんたちを探すため その驚くべき光景見た時は 目に涙が溢れ出た 「あぁ 釣り針に付けてるその餌は 兄さん それは何ですか・」 「孔雀鳩に すぎないさ こいつは一向歌ってくれぬ」 「鳩が歌うはずないわ この人きっとトンマだわ 鳩の鳩舎と言うけれど 厩舎とは別物ね」 「ねえ 釣り針につけてるその餌は 兄さん それは何ですか」 「弟だよ」と兄叫ぶ 「悲しくも哀れなるかな この俺は 俺という奴 邪悪の極致 それとも一体何者だろう さよなら さよなら 妹よ 海の向こうへ立ち去ろう」 「いつ戻ってくるのです 兄さん 教えてくださいな」 「ウグイが旬になる頃さ そんな時は来ないけど」 妹くるりと振り返り 彼女の心臓三つに裂けた 「一人は骨までぐっしょ濡れ もう一人はお茶の時間に遅刻だわ」 |
スコットランドのバラッドにThe Twa Brothersというのがあって、これのパロディであることは明らかです。*
出だしは上記バラッドとよく似ていますが、展開は、キャロルのはノンセンスなバラッドです。 随所に押韻があってその調子で読ませるのでしょう。一連目THERE were two brothers at Twyford school,と口調が良い出だしで、place,race,daceと脚韻を踏みます。日本語にそれを反映するのは困難です。キャロルはこのようなライムを楽しんでいるのですから、余り深い意味を追求しても無駄だと思います。 妹をシチュウにするという詩は既に掲げました。今度は弟を釣り餌に使うと言う荒唐無稽な内容です。模範的なお兄さんであったキャロルが書くから、家族の面白がって読んだのでしょう。こんなノンセンスを楽しむ風土は英国特有のもので日本では余り見かけません。 最後、妹が(あるひはお姉さんかもしれませんが)お茶の時間に遅れるよと言っているのは、「不思議の国のアリス」と同じです。 この詩は「ミッシュマッシュ」に出てiいます。 なお、Teesは英国北東部の川で、キャロル11歳の時、お父さんがCroft -on-Teesに赴任し、広い牧師館で少年期を過ごします。彼の人生の中で思いで深い川で、きっとTees川でキャロルは釣りをしたことがあると思います。 Twyford schoolはパンプシャーにある学校で、キャロルの弟のウィルフレッドとスキフィングトンが通いました。この詩は2人のために書かれたのでしょう。 リデル夫人がハリーをこの学校にやろうと思っていると言うの話が1856年12月5日のキャロルの日記に出てきます。 翻訳は、本邦初訳かもしれません。先行訳があればお教えください。誤訳のご指摘もいただければ幸いです。**
05・4・12改 5・19補*このバラッドには色々とバリエーションがあるようです。English and Scottish Popular Ballad (Child) no.49, The Oxford Books of Ballads(J.KIngdley)p234の中から、後者で第一連を掲げておきます。 There were twa brethren in the north:, They went to the school togither: The one unto the other said, Will you try a warsle, brither? (warsleはレスリング、後は推測でお読みください.。) 中島久代先生が「19世紀バラッド詩の一断面 ―TennysonとCarrollのバラッド詩に見る読者意識」(「福岡女学院大学紀要」7号 1997年2月)の中でこの詩を取りあげておられます。 この詩に全訳は勿論、上記以外のバラッド”Lord Randal"(12A), "Edward"(13B) ."Lizie Wan"'51A), "Prince Rovert"(87A)とも響き合っていることを、対応する連を対比しながら論じておられ、さすが、バラッドの専門家だなあと驚嘆いたしました。 この論文は、テニスンとキャロルを取り上げ、バラッドの共同体精神とつながることによって、読者との間に共同体感覚というものを築こうとする詩人の姿を浮かび上がらせていて、大変面白いものです。。 また、自己戯画化の問題もとりあげられ、キャロルを読み解くいい鍵を提供しています。 先生にはバラッドに関する著作や翻訳があるようですので、これから読んでいくのが楽しみです。 先生の大学でのHP 先生から戴いた、中島久代/D・テイラー/中山光義共編の「イギリス伝承バラッド」(CDつき)について「読書の愉楽・私の書評」で簡単な紹介をさせていただきました。 2005・5・29 目次へ |