「牧師館の雨傘」巻頭・巻末の挿絵

  1849?1854?







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下の絵は「牧師館の雨傘」の巻頭と巻末にキャロル自身が描いた挿絵です。この家庭回覧誌は1849年か1850年にはじめられ1854年頃に終わります。ラクビー校の卒業間際からオックスフォード入学後しばらくの時期のものです。
私はこの絵は当時の創作に対するキャロルの考えを明快に示しており、おそらく、キャロルの生涯を暗示大切なものだと思いますので、詩ではありませんがここに掲げます。
またこれに関する詩として「詩人の別れ」もご覧ください。
巻頭
上の裸の男投げている岩:左から 悲しみ、不機嫌、不安、退屈、敵意、陰鬱(絵で読みにくいものがありますので、英語を書いておきます。woe,crossness, alloverishness, ennui, spite,gloom)
傘:ジョーク、謎々、冗談、詩、お話
周りの女性:上機嫌、趣味、活力、知識、愉快、満足、陽気
巻末
人物の顔が一部欠卦て入るのは、何か上から貼られているのかもしれない。(実物を見た方ご教示ください。)




この絵はちょっと不気味な感じを与えます。それは、男か女か、年寄か若いかはっきりしないというより、いずれの要素も含めて描いてあるからです。岩を投げているのは男で、キャロルが男は嫌いだったことを示すという人もいます。良いものもたらすのは天使のような女性です。 この絵ではこの人物は雨傘を捨てて、大地に堂々と立ちその表情は明るい。しかし、私はキャロルは生涯、この傘をさしながら、世の様々ないやなことから身を守ったのだと思います。そして、読者もその後利益を受けていることになりますね。
若いキャロルが自分の中に老人を見出しているのは興味深いことです。初期の詩に老人がよく出てきます。これはC.G.Jungなども経験したことで、この時期のもう完成した自分を見ていることになります。両性有具的なのは、同じくユングのアニマ・アニムスを示しているのかもしれません。この絵の人物は気持ち悪いと言えばそうなのですが、結局、我々の求めている理想像でもあると思います。
傘の部分に注目すると、「謎々」に数学、論理学、「お話」に観劇を含めますと、写真を除く、キャロルの生涯の活動分野が含まれています。
そして、このことを20歳前後のキャロルが自覚していたということにわたしは驚嘆します。

絵の出典: The Rectory Umbrella and Misdhmasch Lewis Carroll Dover 1971

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