不思議の国より不思議な国のアリス
ハムレット 対 アリス Hamlet vs. Alice

今や国家が消え、地球が一つになっています。今から50年後の世界です。折から、地球の大統領を選ぼうと、世論が沸いています。候補者の一人はハムレット、他はアリスです。先ずプロフィールを見てみましょう。

ハムレット アリス 参照

生誕年

1600 1862
生誕地 デンマーク イギリス
年齢 30歳前後 7.5歳
性別
活躍した時代 エリザベス朝 ヴィクトリア朝
学歴 ウッテンベルク大卒 小学校在学中
家庭教師による初等教育

血液型

A B 著者推定
体型 痩せ型長身
(肥満という説あり*)
標準体型、目に力あり、髪の毛豊か。 *河合祥一郎「ハムレットは太っていた」
出自 デンマークの王子
先王の長男、一人っ子
(王位継承者)
オックスフォード大
クライストチャーチ学寮長の二女*
*モデルから推定
性格 古来諸説紛々*解らないのが魅力。
「宮廷人の、武人の、学者の、目、口、舌」を兼ね備えた人**
思索好き、自意識過剰、行動力のない男、 (精神分裂?)
犬のように可愛く、小鹿のようにやさしく、誰にも礼儀正しく、人を信じ、好奇心が旺盛。***)
物怖じしない、決断力あり、柔軟性あり。
*中西信太郎「ハムレット―序説」など参照。
**オフェーリアから見て
***Alice on the Stage
by L.Carroll
置かれた状況 叔父に父王を殺され、王位を簒奪される。母はその叔父と再婚。 第1次:うさぎ穴に落ち、不思議の国に入る。
第2次:鏡の向こうの国に入る。
とった行動 悶々と悩む。自ずから積極的に行ったのは旅芸人の演劇指導のみ。 自らのリスクで、行動をとり、幾多の試練を乗り越える。
結果 関係者ほぼ全員死に、国滅ぶ。 第1次:生還。
第2次:王位に着く。
余罪 恋人を狂気に追いやる。
その父を殺す。
学友2人を殺す。
なし
友人関係 ホレイショウ (白の騎士)

異界とのつながり

父王の亡霊 多数
趣味 読書、演劇、剣道 水泳、クロケー、編物、チェス

日本へのデヴュー(翻訳)

150以上* 140以上** *ハムレットの翻訳史
**楠本君恵『翻訳の国の「アリス」』
研究論文 100,000 1,000 著者推定

映画化

50* 34** *「読まずにわかる!シェイクスピア」アスペクト1999
**Undergrand Residents

支持層    

大人(英文学、演劇愛好家)  子供、大人(コレクター、児童文学愛好家、英語の先生、数学者、医者、生化学者、哲学者、言語学者、論理学者、心理学者)


アリス
のための応援演説より (1)

・・・と言うわけで、私は心からアリスを支持します。二人の人となりと経歴をもう一度、振り返って見ましょう。

確かに、ハムレットは血筋正しく、学問にも武道にも優れた青年です。彼は特に英文学学徒と演劇人に絶大な人気を持ち続けてきました。絶えず研究の対象になり、彼の出る演劇が、世界のどこかで、いつも上演されておりますし、いつも満席という人気です。役者であるからには一度はやってみたいという役柄です。

しかし、私に言わせれば、彼の性格が曖昧で、結局良く分らないという魅力がそうさせているの過ぎません。いわば、答えのない謎々なので、皆が寄ってたかって解こうとするだけの話なのです。
彼の行いを見れば、その正体は明らかになります。

ハムレットの置かれている状況は極めて簡単なものなのです。
叔父に父王を殺され、母もその叔父に取られてしまう。父王の亡霊が復讐を促しています。国外からノルウエーが攻めてくることが懸念されています。ハムレットの抱えた問題は復讐するかどうか ノールウエーの侵略にどう備えるか?という単純なものですが、ハムレットはどんな行動をとり、どんな結果を生んだでしょうか?

何もせず、悶々とするだけで、恋人オフェーリアを狂気に追いやり、その父ポローニアスを殺め、叔父の企てで、自らも危うく命を落す目に会いますが、それは何とか逃れたものの、結局、仕組まれた御前試合に出て、自らの命を含め、全員が死ぬという惨事をもたらしています。
手を拱いていて全員死地に追いやった男。皆さんは、そんなハムレットに地球の将来を託しますか?

一方、それに比べて、我がアリスはどうでしょうか?
学歴こそありませんが、その勇気と聡明さとやさしさで、難局をこなしていきます。これから地球を支える子供たちに愛されているだけでなく、心ある大人に幅広いファンを持っています。特に今後の宇宙の謎を解き明かそうとする物理学者、精神の奥を極めんとする心理学者、知恵の基盤を極めようとする言語学者・・・生化学者、数学者、医者、画家、それに言うまでもありませんが英語、英文学者などになどの絶大なファンをもっています。何よりも重要なのは、ごく普通の人にも愛されていることは、アリス・グッズの売れ行きでわかります。

彼女は2次にわたる冒険の旅に出て、想像を絶する不可思議な状況に遭遇しますが、彼女は、物怖じせず、けなげにも、それらを克服し、無事生還し、第2次では女王の座につくという偉業を達成いたしました。

その間、ハムレットと異なり、出会う人たちには礼儀正しく、思いやりを持って接し、誰一人として殺めることをしていません。
地球は一つになったというものの、これから、地球環境の変化、科学技術の進歩がもたらす変化、狂信者の不穏な行動などどんな不測の出来事が起きるかもしれません。

そのような状況のもとで、私は、この物怖じしない、賢くて、変化に対応できる、心やさしいアリスにこの地球の運命を委ねたいと思います。

ご清聴ありがとございました。(拍手)


アリスへの応援演説より (2)

・・・という訳で、ハムレット氏の優柔不断の原因は外部の状況の複雑さにあるのではなく、彼の内面にその原因があると思い、心中を探ってみました。

独り言をそっと聞いてみますと、来世について煩悶をしていることが分かります。例のTo be, or not to be,で始まる独り言は結局、復讐を実行した場合、あの世に行ったらどうなるのか心配しています。
叔父クローディアスを殺す好機にめぐり合うこともあるのですが、その叔父がお祈りの最中なので、もし殺せば、この叔父を天国に送り込むのではないかと実行をためらいます。
そもそも彼は父王の亡霊について、確信がもてません。一体、彼は何を信じているのでしょうか?なんだかあの世のことが気になる青年のようです。迷っている間はいいとして、彼がある確信に達したときはどうなるのでしょうか?
歴史を振り返りますと、宗教的信条の違いによって、どれだけ戦争やテロが起こったことでしょう。

皆さん、アリスは、そのような地獄、極楽や宗教に無縁の子です。彼女にあるのはinnocence無邪気そのものです。不合理なものにきっぱりと「ノンセンス」という力を持っています。私はこの真っ白な心を持つアリスに明日の地球を委ねたいと思います。

かのワーズワース氏も言っておられます。

子供は大人の父
これからの日々が、どうか、 
自然への畏敬の念で結ばれていきますように。

The Child is father of the man;
And I could wish my days to be
Bound each to each by natural piety.

アリスをよろしくお願いします。(拍手)
03/5/8


ハムレットのための応援演説より(1)  オフェーリア

ご紹介いただきましたオフェーリアでございます。
ハムレット様の応援演説が出来るとは夢のようでございます。
ハムレット様のお母様、ガルドルード様を除いて、女性で、もし、ハムレット様のことをお話できるとしたら、私しかないと、後援会の方に言われて、壇上に立っております。まだ、頭の具合が良くなっていませんが、ひとことお話させていただきます。
ハムレット様は何と言っても、気高い御気性、王子さまにふさわしい秀でた眉、学者もおよばぬ深い御教養、武人も恐れをなす剣さばき、デンマークの運命を担い、この国の精華とあがめられた方でございます。
流行の鑑、礼儀の手本、あらゆる人の賛美の的であられました。
大胆且つ慎重で、国の安寧を一身に引き受け、軽率な行動を慎まれた点において、ハムレット様に勝る方はおられません。これからの地球を託すに相応しい方です。
国政の難しいことは私にはわかりませんが、ハムレット様は何より大切な人を愛する心の深い方です。私は末っ子で父ボローニヤスからも、兄レアティーズから大変愛されて育ちましたが、ハムレット様の愛情はその何人分にも当たります。
「尼寺へ行け」とハムレット様に言われたときも、その愛情にしびれてしまいました。人を深く愛することのできること、人類の将来はこれにかかっているのではないでしょうか?
一方、対立候補のアリス様は、勇気、探究心、行動力共に備えた素晴らしい方だと思います。
実は、私もファンでフルタ製菓や北陸成果のアリス・フィギュアもよく買いましたし、アリス・グッズを結構集めておりますが、ハムレット様に比べて次の点で問題があります。
第一は慎重さにおいて欠けるところあるということです。正体不明なものに対して、To drink ,or not to drinkやto eat ,or not to eatと自問すべきなのです。やっとまとまりかけたこの地球に必要なのは徳川家康的、(笑) 間違いました、ハムレット的慎重さだと思うのでございます。
第二の難点はアリス様はまだ恋を知らないことです。かの公爵夫人の教訓ではありませんが「愛だ!愛だ!世界を廻しているのは」というではありませんか。恋の経験の無いお方にこの地球をお任せするわけには参りません。
第三の難点は記憶力が弱いということです。彼女の歌う唄はみな間違っています。最もパンプティ・ダンプティの一節はあれでいいんですけれど・・・こう見えても私は少々狂っていてもちゃんと歌詞は覚えています。
(オフェーリア歌う)
    いかにして まことの恋人 見わけえん
       杖 わらじ 貝の形の 笠かぶり
    恋すれば 人目しのんで 通いきぬ
       巡礼の それ その姿の いじらしく

あら、制限時間いっぱいの合図が出てきました。(係りの人が演台へオフェーリアを連れに来る。)
(係りの人に手を引かれて、オフェーリア歌いながら退場))
    顔もかくさで 車にのせて
    ヘイ・ノン・ノンニー  ノンニー  ヘイ・ノンニー
    涙の雨に 墓石ぬれてー


さようなら皆様、私のいい人、ハムレット様をよろしく。(涙、笑、拍手)    翻訳協力:福田恒存先生
(04・07・24)
  
  


ハムレットのための応援演説より(2) ホレーショ new

 

友人ハムレットが、エルシノアで、フォンテンブラスに王位を譲られ、昇天されてからもう随分時が流れました。

歴史を語り継ぐべき私も、その後、活字、演劇、映像などあらゆるメディアで、ハムレットのことは何千、何万と取り上げられているので、もはや用済みの人間と思っておりましたところ、このたび、地球に再臨され、大統領に立候補されるという、大変な事態が発生しました。

おそらく、ハムレットを語るなら、皆さんどなたも、私ホレーショの事を思われるでしょう。

これから、少し、彼の人となりをお話させていただきます。

私とハムレットの出会いは、私がボローニヤから、ウッテンベルク大学に留学してきた時に始まります。初めてのドイツで、ごつごつしたドイツ語の飛び交う中、戸惑っておりました所、同じ時期に、デンマークからやってきたハムレットが喧騒の片隅でいつも本を読んでいるのが目に付きました。彼は母方がドイツ人なので言葉の不自由はないようでしたが、根が孤独な性質なのでしょう。なんとなく馬が合い、すぐ親しくなり、校庭の木陰で、居酒屋で、下宿で、昼も夜も、ともに時を過ごしました。

夜を徹して、文学を語り、神学の論争をしたのも数え切れません。硬いことばかりではなく、ローゼンクランツやギルテンシュターンなどとビヤホールで気炎を上げたり、時には悪所へ繰り出すこともありました。この頃のハムレットは、学問はできるし、スポーツは乗馬、剣術何でもござれ、友達には親切で、よくおごり、その上、あの男ぶりですから、まあ非の打ち所のない「いい男」でした。

他国の王子もいましたが、ハムレットは抜きん出ておりました。

彼を学生組合の代表に選ぼうという機運の盛り上がっている最中、父君を失われ、帰国されることになったのですが、私は、その前の夏もエルシノアを訪れていて、父君を存じ上げているので、葬儀に列席のため、彼の帰国に付いて参りました。それから後のことは皆さんご存知の通りです。父君の亡霊との出会い。仕組んだお芝居「ねずみ捕り機」での立会い。英国からの帰還。レアティースとの剣術の試合。そして、そこで起きる悲劇的な出来事。これらすべて私の眼前で起きたことです。王位継承王子としてのハムレットに、私は臣下の礼を取ろうとしたことが何度もありましたが、いつも、対等の友人として付き合うことを望まれ、心底、親友として心を許していただきました。

私がハムレットのことを、その心中を含めお話すれば、なぜ、ハムレットが大統領に相応しいかお分かりいただけるのではないかと思います。

よく人は「ハムレット」は「復讐劇」だと言います。然し、私に言わすれば、「非復讐劇」と言うべきです。なるほど、最後にはクローディアスに刃を向けますが、いわば、偶発的と言うべきで、本当に復讐するのであれば、他に、いくらでもいい機会があったわけです。この劇はハムレットが復讐しないでいるところに本質があるのです。

勿論、彼も人の子、何度も復讐の念に取り付かれたことがあります。これは自然の情というものです。英国随行のローゼンクランツとギルテンシュターンを死地に送り込んだのも一種の復讐とも言えますが、後に、このことを彼は悔いていました。

クローディアスに対する心の動きは、身近にいて、痛ましいほど揺れました。狂人の真似で、何とか隠そうとしていましたが、彼の中に、どうしても復讐したくない、報復はやってはならないという気持ちがありました。これを弱さととる人がいるかも知れませんが、両親の深い愛情に育まれた、彼の純な天性と思索の積み重ねによって磨かれた高い知性によるものです。復讐の可否に付いて何度彼と話合ったことでしょう。結局、彼は『目には目を、歯には歯を』の規範を超えなければならないことの結論に達しました。ですから、父君の亡霊があたかも復讐を促すかのように出没した時は本当に彼は悩んでいましたが、英国行きから帰還されてからは、その心は定まったようです。若し、復讐の意図をお持ちであれば、その方法や手順に付いて、私に相談されないはずはありません。これまでのお付き合いの中で、最後まで、親友として、このホレーショを信頼してくださったと思います。ですから、死を目の前にして、ハムレットの死に殉じて、自害しようとする私を制し、ハムレットが「つらいだろうが、お前は残って、私の気持ち、取った態度を皆に伝えて欲しい」と頼んだのはこのためです。ハムレットが復讐の計画を持たなかったことは私以外は知らないからです。

テローその報復―テローその報復という時代は、もう、終わりにしなければなりません。ハムレットはそのことを考え抜いた男で、新しい時代に相応しい人物です。

私はハムレットの勝利を見届けたいと思います。(沈黙―拍手)

 

対立候補のアリスちゃんについて一言申し上げますと、可愛い利発な方だと思いますが、公爵夫人をはじめ、多くの人が証言しておられるように、いかんせん、余りにものを知らなすぎます。そして、ハンプティー・ダンプティ氏のご指摘のとおり、7歳半というのは、坐りの悪い年頃です。縞のストッキングを履き、前垂れをしていた子にこの地球を委ねていいものか?

これで、私の話は終わります。(拍手)
 〔ハムレット・ファンの方からの応援演説をお待ちします。〕

04・11・11


アリスへの応援演説より (3)  白の騎士 new

42回も落馬をしながらやってきましたので到着が遅れました。お詫びします。

私とハムレット氏とは思わぬ共通点がありまして、ハムレット氏が創案されたのは「ねずみ捕り機mouse-trap」という宮廷芝居、私の方は馬上「ねずみ捕り機」です。私の発明になる「ねずみ捕り機」は万一、馬上にねずみが現れたときにそれを捕獲するもので、鞍に括り付け携帯できます。馬上にねずみが現れることがないと仰るかもしれませんが、万一のことを慮るのが政治の要諦であり、この程度の配慮がない者に政治を語る資格はありません。

さて、今回のアリスの立候補には、私は諸手を挙げて賛成するものです。

アリスは長い間、愛玩されるものとして扱われてきました。それは別に悪いことではないのですが、地球が大きく転換を遂げようとするとき、昼寝で時を過ごすべきでないと思います。

日本ルイス・キャロル協会の第10回研究大会のシンポジュウム「日本におけるアリスの受容史」において、K大学N教授は「アリスは受容の時期から能動の時期が来ている」と総括されました。それには色んな意味が含まれているようですが、コロニアリズム全盛のヴィクトリア時代の視点から、ポスト・コロニアリズム的視点を持つべき時期に来ているという意味のことをおっしゃいました。誠に時宜を得たご発言と快哉を叫ぶとともに、アリスが立候補して、既に、能動に打って出ていることを嬉しく思っています。

ポスト・コロニアリズムといえば、他者、異種、辺境、弱者・・・など自己と異なるものとの関係を新しい視点を持つことですが、皆さん、アリスの体験を思い出して欲しいと思います。終始、異類との出会い、思想・信条・行動様式など全く異なった者達の間を渡り歩きました。まともなのは私ぐらいで、よくもまあ、これだけ、話の通じない者達に出会ったものだと思います。それでも、女王になって帰還しました。つい最近まで、コロニアリズム丸出しの政策で、あちこちに軍隊を送っていた某国の轍を踏まないように、ポスト・コロニアリズムの視点を持てる者に大統領になってもらう必要があります。アリスの産みの親、キャロル氏は動物虐待に対する反対運動に尽力され、また、「ベニスの商人」の中の、シャイロックに改宗を迫る場面に、強く異を唱えられました。そのような、ポスト・コロニアリストの先駆とも言うべきキャロル氏の血を受けたアリスも、個人の尊厳、思想・信条の自由を尊ぶことにおいて、まれを見る資質を備えている人でもあります。

その点ハムレット氏は年は取っておられるが、王宮育ち、ドイツの酒場で馬鹿騒ぎしたのと、渡英の途中、海賊たちと渡り合った以外にさして変わった経験がありません。先ほどホレーショ氏がアリスはものを知らないことを非難されましたが、ハムレット氏にとって、知るということは、本であり、言葉、言葉、言葉なのです。これがいかに無力であるか、皆様、よくご存知のはずです。

アリスは若さには珍しく人の話を聞く力を持った人です。老骨の話も実によく聞いてくださった。人の話を聞く力こそ良き為政者の必須の資格と思うのです。

ポスト・コロニアリスムにも一脈相通じることですが、アリスが女性であるということは大きいと思います。これまでの2000年は、男性原理で動いたと考えられます。占星学によれば、20世紀までの2000年間はうお座(双魚宮)の時代で、これからの約2000年間は水がめ座(宝瓶宮)の影響が強まる時代だと、言われています。

形からも分かるように、男性の時代から女性の時代へと移っています。また、水がめ座の時代は水がめ座生まれのキャロルのキャラクターの活躍する時代でもあります。

家父長的、男性原理がすでに働かなくなっていることは、皆さん、もう実感しておられることでしょう。これまでの政治、経済、社会制度の多くが、破綻を来たさないまでも、妙に無力となっているのは、時代が大きく変わってきつつあるためです。to be, or not to be.の二元的思考、words, words, wordsつまりロゴス優位の男性原理はその力を失う時代に入っているのです。

ハムレット氏を選ぶか、アリスを選ぶか、もう迷うことはありません。

今日も夕日がきれいですね。そろそろ退場の時間です。さようなら。

(拍手。 アリス、ハンカチを振る。)

〔アリス・ファンの方からの応援演説をお待ちします。〕

04・11・13改


アリスのための応援演説(4)  チェシャ猫  NEW

ニヤニヤ笑いの顔から登場して、驚かれた方もおありかも知れませんが、これが私のトレード・マークなので、どうかお許しください。

私の持論は、私を含めすべての者がキチガイだということです。失礼ながら、今日ご出席の皆様方も同様です。
でなければ、こんな演説会にお越しになるはずがありません。
勿論、アリスもハムレット氏も同様であります。
問題はどのような自覚のあるか否かによってその人の生き様は大きく変るということです。

先ず、ハムレット氏について申し上げますと、彼はキチガイの自覚がない。自分は正気で、キチガイを装っていると思っている。1幕5場で自分はキチガイの振りをすると言っています。彼の狂気は敵を欺くための佯狂です。
そして、観客も彼の行動、深刻に悩むハムレットを見て、これが正気のしるしだと思っている。
最後の最後、彼は何と言ったと思いますか? 

「後は沈黙」

正気もここに至るか! という感じですね。
観客もそんなハムレットを見て、安心し、しばしの間、自分がキチガイであることを忘れて、家路に付くというわけです。

アリスがキチガイであることは、既に「不思議の国のアリス」で私が証明して置きましたので、そこを是非読んでいただきたいのですが、青虫先生に「お前はだれ?」と問われ、朝から色んなことがあったものだから、自分のことは分からないと言っています。青虫先生がアリスの精神鑑定に「ウイリアム父っあん」を唄わせたところ、 間違っているのに自分では大体正しいと思っているのですえね。青虫先生は親切にも、最初から最後まで間違いる事を指摘してくれています。キチガイの中で過ごしているうちに、自分もキチガイだと思うようになったようです。
それは、クロッケーの会で王様に私を自分の友達として紹介しているところでも分かります。

しかし、キチガイだという自覚は今ひとつ足りません。そこを補っているのが、ヴィクトリア風の良識というもので、これを手立てに、この世界を渡っていくのですが、最後まで正気か否かわかりません。

ハムレットは正気の犬です。正しくないものには吠えたいのです。アリスは私同様キチガイ猫で、キチガイと馴染んでゆきます。

さて、自分は正気だと思っているハムレットとキチガイと同類であると思っているアリスとは、どちらが良いかという点を論じて私の話を終えます。

もし、あなたが、この世は正気の世界が本来のものであって、キチガイは病気の世界だとお考えなら、おそらくハムレットを選ばれるでしょう。その代わり、悩み、苦しむことでしょう。
一方、この世には正気といったものはないのだ。キチガイつまり自分の妄想しかないのだと思う方はアリスを選ぶでしょう。奇妙な体験を続けるでしょう。

どちらを選ぶか、あなたが好きな方がいいと申し上げたいのですが、おそらく、皆さんは、どちらが良いかと知りたいと思われていることでしょう。


一つだけ選択のための情報を差し上げましょう。
人類の歴史の中で、大量に人や動物を殺してきたのは、自分たちは正気だと思っている人たちです。

次は、投票所でお会いしましょう。ニャ〜

〔尻尾から徐々に消え、最後、ニヤニヤ顔のニヤニヤだけがしばらく残り、それもやがて消える。― パラパラと拍手〕

04・12・12

皆様:両氏への応援演説を募集しておりおります。ここまでお送りください

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