SOLITUDE 1853 | 孤独 |
Scarce heard, beneath yon arching trees, Here from the world I win release, Here may the silent tears I weep But when the bitter hour is gone, To live in joys that once have been, For what to man the gift of breath, Shall the poor transport of an hour Ye golden hours of Life's young spring, I'd give all wealth that years have piled, . |
ぼくは愛す 森の静けさ ぼくは愛す せせらぎの調べ ぼくは愛す 丘のべに伏し 物思いにふけること たわわな木陰を音もなく 銀の漣 流れ行く 瀬音にあわせ そよ風が 草の間を吹き渡る 世のしがらみから辛くも逃れ 唯我独尊 この聖地には とがめる人もがさつな人も ぼくをいじめに来はしない 心いくまで涙を流し 痛んだ心をあやしてやろう 泣きじゃくりながら母の胸 やがては眠る赤子のように 苦しい時も打ち過ぎて 胸の痛みも鎮まれば 静かな丘に一人伏す これほど甘美なことはない かっての喜び取り戻し 世の冷たさ うちやって 日々の心配、味気なさ 虹の光で覆ってしまう 悲しむことが定めなら もしも 死で止むこの日々を 悲運の暗雲覆うなら 生きている甲斐どこにある? 移ろいやすいこの一刻が 永の憂き目を癒すのか? 一もとの寂しく咲ける花の香が 荒野に趣添えるよう 若き日の黄金の時よ 無垢、そして愛、誠から湧き出で 果てもなく 輝きわたる 汝 青春の奇しき夢! 長年の辛苦の後に得た富も 一切合財差しだそう、 もしも、ふたたび子供に戻り 輝く夏の一日を過ごせるものならば |
私はキャロルの本質のひとつは孤独solitudeであると思っており、この点、キャロルに深い親しみを感じます。 「 もしも、ふたたび子供に帰り / 輝く夏の日過ごせるならば」と唄われた輝かしき夏の日は、9年後にアリスたちと過ごすthe golden afternoonと共に至宝の想い出として彼の心に住み着いたと思います。 この詩は1853年に書かれ、3年後、雑誌The Train (1856年3月号)に発表。ペンネーム「ルイス・キャロル」を使って発表した最初の作品です。 1869年のPhantasmagoriaに、また、1898年の、発刊がキャロルの死後となってしまった最後の詩集Three Sunset and Other Poemsの中にも収録されているので、キャロル自身もこの詩が気に入たのでしょう。 アリスが二つの物語の中でほとんど友達を持たず孤独に過ごしたことにも関係がありそうです。 多少紋切り型で、感傷的といえるかも知れません。でも、それが青春というものではないでしょうか 2013・7・4改 初期詩集目次 「不思議の国より不思議な国のアリス」トップへ |