THE LADY OF THE LADLE 1854 | しゃもじの麗人 |
THE Youth at eve had drunk his fill, |
ゆうべ 若者 したたか 呑んだ 丘の上の 「ロイヤル」で お昼の散歩はたっぷりと 「海兵隊の遊歩道」 (そこは 元気な 水兵さんの 「荒海越えて進軍」する所 泳げず陸にいる手合いには そこは唯の海水浴場) それから町へとさ迷い歩き いちいち横丁入ったり出たり 道幅次第に狭くなり なんと家々頷きながら 道を隔てて挨拶してる 「もう一息で ご一緒ね」 彼は登る不思議な階段 天まで届くばかりなり 金持ち貧乏区別なく 踏み車のよう踏まねばならぬ その朝 若者身なりを正し 頭にポマード擦り付けて 周りのみんなが言うことに それはご立派 威風堂々 ふんずり返って歩くさま まるで貴族の御曹司 澄ました顔から 思いもかけぬが なんと若者惚れていた −賄い女に 浜辺に立って溜め息ついて 逆らう波をものともせずに 大海に聞けよとばかり歌います 調子をつけて憂さ晴らそうと 弔歌 ヒルダ号で あの子は行った 消えてしまった ウィットビーからは 彼女の名前は マチルダ 僕の胸をグッと刺した ゴリア号で 追おうとしたが 知って悲しい アナウンス 「本船は出帆いたしません 明日までは」 彼女は僕を「ネディー」と呼んだ (大した意味もないんだが) 少し彼女が待ってたら きっと間に合っていたはずだ 彼女のすぐあと歩いていたが お前も覚えているだろう 金のタイピン取るために ちょっと帰った隙だった 脂身料理の盛り付け上手 ソーセージでは天下一 悲しや お前を失って さらに切符も無駄にした きっと彼女は笑っているよ ヒルダ号の甲板で 僕はといへば 財布とお金 ああ 僕の「チルダ」 お前も無くした 金のタイピン 若者 はずし チョッキのポッケに忍ばせた 両手を組んで穏やかに 浜辺に坐り 眠りに落ちた |
キャロル22歳の作。この年頃は一膳飯屋の賄い婦にも惚れることがあるものです。問題のマチルダは故郷でいい縁談でも見つかって帰郷したのではないでしょうか。 前日、自棄酒を飲んで、翌日は町をさ迷い歩き、浜辺で大声で歌い、ついには寝込んでしまうこの青年に親近感を感じます。一篇の短編小説の趣があります。 キャロルはこんな情景を離れた目で見ていたので、結局結婚しなかったのだと思います。 さ迷う歩いている町はどこなのでしょうか?かなり古い町のようです。ご存知の方はお教えください。 この詩は、詩の中にも出てくるウィットビーの新聞(Whitby Gazzette 1854年8月31日)に載り、後、「ミッシュマッシュ」に収められます。弔歌以下の部分が省略されているものが多いのは何故か分かりません。 高橋康也先生は「表題はウオーター・スコットの物語詩『湖上の美人』(The Lady of the Lake)をもじったものであろう」と書いておられます。ちょっと同詩を覗いて見ますと、第1章の第1節の最初の四行は全く同じ韻を踏んでいるのが分かりました。下に掲げておきますのでご覧ください。(下記*参照) ( ⇒ お寄せいただいた情報ご意見 ) 2005・4.23 (改4・27) 目次へ |
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*The Lady of the Lake から The stag at eve had drunk his fill, Where danced the moon on Monan's rill, And deep his midnight lair had made In lone Glenartney's hazel shade; But when the sun his beacon red Had kindled on Benvoirlich's head, The deep-mouthed bloodhound's heavy bay Resounded up the rocky way, And faint, from farther distance borne, Were heard the clanging hoof and horn. |