不思議の国より不思議な国のアリス

電話帳の国のアリス −アリス密度分析―

alicestatistics

アリス:私、最近、私の偽者が出てきて困ってるの。

ナイト:人気がある証拠だよ。偽者が出るようになると本物と言うからね。悦ぶべき現象です。一体、どのあたりで偽者が出るのかね?

アリス:大阪かしら?札幌かな?

ナイト:お父さんが数学者なのに、そんなあやふやなことでは困ります。アリス密度はどうなっていますか?

アリス:アリス密度なんて知りません。また、f(x)とかΣとか出てくるんでしょ。記号を使わずに教えてしょうだい。

ナイト:記号を使った方ははるかにやさしいのに馬鹿な子だね。まーやってみましょう。ある地域のアリスの偽者の数をその地域の人口で割って100000を掛けたのをアリス密度と言います。

アリス:な〜んだ。10万人当たりの偽アリスの数でしょ。でも、どうやって調べるのかしら。

ナイト:それは簡単なんだが、民族や言語の影響をできるだけ除くために、個人を対象とせず、企業、団体で計算します。

アリス:個人を除外するのはなぜですか?

ナイト:個人の名前だとその国の伝統が強く出すぎで分りにくいんだ。日本でも明治や大正時代、アリスは、美ちゃん、愛ちゃん、綾子ちゃん、彩ちゃん、すず子ちゃん、まりちゃんと呼ばれていたことがあったし、ロシヤではソーニャやアリーサと呼ばれていたことがあるんだよ。

アリス:ナイトさん。物知りね。

ナイト:なーに、楠本君恵先生の『翻訳の国の「アリス」』の受け売りさ。そんな訳で、国際比較のことも視野にいれて、個人を除き、ある地域のアリスを名乗る会社、団体の数をその地域の会社、団体で割って100000を掛けたのをアリス密度として、これで知名度を測るわけです。電話帳を使ってする分析「電話帳空間に於けるアリス密度分析」は私が発明したものです。

アリス密度は、他の色々な現象と関係するから、例えば、アリス密度とケーキの消費量とか子供の出生率とか任意の現象との相関関係を統計的手法で解析し、これをアリス密度相関分析といいます。ある地域のアリス密度が分れば、そこでのオレンジ・マーマレードの消費量が推定できるといった実用性の高い分析です。分かるかね。

アリス:難しいことはさっとやってください!

ナイト:アリス密度は、時間によって変化するから、それを分析するのはアリス密度時系列分析といい、あるサイクルで変動するという説と一人当たりGNPなどの変動にリンクするという説があり、前者にはキチン説40カ月, ジュグラー説 10年, クズネッツ説20〜25年, ゴンドラチェフ説40〜60年、最後の説は太陽の黒点の変動にリンクしています。また、ロジスティック曲線、つま成長曲線にそって・・・

アリス:ストップ!止めて!何か具体的な数字でやさしい話をしてください。

ナイト:おじさんの荒い計算ですが、アリス密度は 2002年11月25日現在

東京:14.0  大阪:9.6  札幌 8.7 神戸 10.7 鹿児島 0.9

アリス:東京は矢張り文化的に進んでいますね。神戸には熱烈なファンがいるのも分る気がするわ。今年の日本ルイス・キャロルス協会の大会は神戸だそうですよ。

ナイト:素人はすぐ即断するからだめだね。実証的研究が必要です。こんなデータもあります。東京23区のうち、高いところは、江戸川区、世田谷区、練馬区。低いところは千代田区、目黒区、文京区です。

アリス:どんな所がアリスを名乗っているのかしら?

ナイト:先ず第一は喫茶店、ケーキ屋さんなど飲食関係。DRINK ME、EAT MEの世界です。第二は美容関係、アリスの髪が素敵なことが影響しているかも知れないね。第三は医療関係、アリス歯科なんて、なんとなく痛くない感じ。それに、ペットの病院もあります。中には、アリス・イン・ワンダーランドというのもあるよ。

ところが、実は、圧倒的多いには、職種が分らないものなんだ。これが40%以上あります。

アリス:ふ〜ん。さすが不思議の国の仲間ね。ナイトさんは大阪や札幌をどうやって調べたんですか?

ナイト;簡単です。図書館へ行けば、各地の企業名電話帳というのがありますから・・・

アリス:アリス密度があるくらいならハムレット密度というもあるんでしょう?

ナイト;あります。私が調べたところでは、東京、大阪、札幌では、ハムレット密度はいずれも0です。To be, or not to be? と言うようじゃあ、お客さん来ないだろうね。 

アリス:矢張り、偽者が多い方は幸せね。

ナイト:偽者、偽者といって馬鹿にしてはいけないよ。アリスもアリス・リデルの偽者でしょ。

アリス:つい忘れるところだったわ。

ナイト:ここにいる人皆偽者のさ。

アリス:皆、気違いといわれるよりましね。

ナイト:ところで、おじさんは、電話帳のアリスは早晩消えるだろうと考えています。代わりに、アリスはインターネット、WEBの世界に現れ始めています。これからは、メールやホームページのアドレスに現れるのです。

アリス:そういえば、身近にもいますね。WEBの人口は全体でどれくらいですか?

ナイト:30億か40億か正確には知りません。だだ、このままでは43億を越えることが出来ません。IPアドレスは現在2の32乗個が上限なのです。近く、一挙に無限に近い数が出来るようになると思いますが・・・。そうなると、テレビや冷蔵庫にまで名前がつく時代になると思う。

アリス:そんな中からアリスを探すのは大変じゃあないかしら。

ナイト:そんなことはありませんよ。この世界ではロシヤ文字も漢字もアラビヤ文字もすべて、共通の符号で表されますか、コンピュターで処理しやすくなります。電話帳の時代に十分数学モデルを作っておいて、WEBの時代に備える必要があるのです。

アリス:私のファンには数学者や理系の人が多いから、きっと成功すると思うわ。

ナイト:ところで、アリスの電話番号を教えてくれないか?

アリス:33−3333−3333と 42−4242−4242 まだ、電話帳に載せていませんけど。 メールアドレスはalice@alice-it.comです。ナイトさんはこちらの方を使ってください。

ナイト:そろそろ、お茶の時間にしょうか。

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