不思議の国より不思議な国のアリス

*2 「千と千尋の神隠し」とアリス

Alice & Chihiro

  「千と千尋の神隠し」と「アリスの物語」の類似性に気付かれた方が多いと思います。もともと、このような奇想天外の話のルーツはキャロルにあると言っていいのですが、キャラクターや場面でアリスの物語を思い出させます。先ず、トピックスを書いておきます。

■    2003年2月22日武蔵小金井にある「江戸東京たてもの園」の展示室での特別展「江戸東京たてもの園と千と千尋の神隠し」で原画を見ました。先ず、その描写力のレベルが高く、丁寧で、テニエルに肉薄しています。動きのあるものはそれを凌駕していると思いました。テニエルの細密な線画とアニメの単純化した線を比較するのはおかしいのですが・・・動画ですからもっとラフな原画かと思っていたのですが、本当に丁寧な仕事でした。中央に、原画の塊、絵コンテの集積があり、正確ではありませんが、2メートル×2メートル×1メートルぐらいの量が展示してありました。この塊だけで優に原爆一発分ぐらいのエネルギーを感じさせられます。趣味、好みは別にして、表現技術は高い水準にあると確信しました。

     この展示は2003年8月31日まで詳細は

      http://www.ntv.co.jp/ghibli/tatemonoenn/

    

■ 映画をご覧になった方は次の本も是非お読みください。

  「ロマンアルバム 千と千尋の神隠し」2001年9月初版 徳間書店

   構成・執筆:斎藤良一、今西千鶴子、加藤ちかた、鈴木隆詩、徳木吉春

   協力 スタジオジブリ  定価本体 1219円

 どうしてこんなに素晴らしい本が、この価格で出来るのか、不思議でなりません。
その中で、『「千尋」を読み解くためのBOOK GUIDE』というコラムがあり、当然「不思議の国のアリス」も出ています。将来、「アリスの物語」と「千と千尋の神隠し」の比較研究の基本文献になりことは間違いありません。


■ このアニメは、10歳の少女千尋がトンネルを通って、異界に入り、様々な出来事に出会って、やがて、また、日常に帰るという話。舞台の大半は、湯屋で、黒柳徹子と似た髪型の湯婆婆という暴君的魔女が経営する所です。アリス・ファンは色々と類似点が挙げられると思います。実は、そのことを書こうかと思ったのですが、まだ、ご覧になってない方には、変な先入観を与え、かえってマイナスになると思い止めました。

アカデミー賞の受賞が決まり、数ヶ月したら書きます。(2003・3・16)

      祝  アカデミー賞受賞
「千と千尋の神隠し」は第75回アカデミー賞(長編アニメーション賞)を日本時間3月24日に受賞しました。
数ヵ月後のこの欄に「アリスと千尋」について書きますが、皆さんのご感想、ご意見も是非お寄せください。
Yukoさんからのお便りもご覧ください。(2003・3・25)


All in the golden afternoon            ものすべて 金の光の昼下がり

で始まる「不思議の国のアリス」の冒頭の詩は

Alice ! A childish story take,
   And, with a gentle hand,
Lay it where Childhood's dreams are twined
   In Memory's mystic band.
Like pilgrim's wither'd wreath of flowers
   Pluck'd in a far-off land.

アリス!たわいもない話を受け取って、
やさしい手で、置いておくれ
子供時代の夢が
思い出の神秘バンドに撚り込まれたあたりに。
丁度、巡礼者の遥かな国で摘んだ花の
しおれた花冠のように

で終わります。
「千と千尋」では千尋が引越しで新しい町へ移動中の車の中で、元いた学校の友達からもたった花束がしおれているいることに気付くことから、物語が始まります。

(つづく)