NURSERY RHYMES
 「ビデオで楽しむマザーグース」


    Longman Video 1982
    編注 安藤幸江
    北星堂書店  1997(2006)

マザーグースをテープやCDで聞いたことは何度もあるが、ビデオで見るのは初めてである。
早速、ビデオを掛けてみる。
飛び出す絵本の中から、次々と人形や子供や大人や動物も出してきて、歌ったり、踊ったり、あれよあれよという間に70のナーサリーライムが紹介される。
詩も曲も挿絵も馴染みのものが多く、見事な画面構成で、ファンには至福の1時間が過ぎる。
安藤先生がこのビデを取り上げられたお気持ちが頷ける。

本の方は、ビデオをテキスト化したものであるが、ビデオと切り離しても一人歩きできる大変素晴らしい内容を持っている。挿絵はケイト・グリーナウエイやアーサー・ラッカムなど馴染み深いものが多く、所々、ビデオの画像から書き起こしたものや地図もある。原詩の下に「語句」の丁寧な解説があり、これだと中学3年生の学力があれば100%理解できるだろうし、間違いやすい言葉の発音や、韻律への細かな注記は、唄ったり、口ずさのに大変参考になる。
「メモ」とし書かれた先生の薀蓄を楽しむことが出来き、アガサ・クリスティーへの言及が多いことから、先生がクリスティー・ファンだとわかる。
自分の知っていることが書かれていると、得意に思い嬉しいし、知らないことがあると何だか得をした感じになった。

「まえがき」はビデオのテキスト化の経緯や先生とマザーグース本の出会いなどが記されていて興味深く、参考文献が年代順というのも面白い。115ページに含まれる情報量は大きく、ビデオをと相まって、ファンを豊かな気持ちにしてくれる。

このビデオと本を是非英語の授業に取り入れて欲しいもの。本書は、訳詩つけていないなど、そのための配慮がなされている。きっと生徒に英語を学ぶ喜びを与えることだろ。
初めての人に一挙にマザーグースの楽しみと奥の深さを味わってもらうにこんな良い方法は外にちょっとないと思う。

再び、ビデオに話を戻すと、画面の展開は飛び出す絵本(POP−UP)をベースに構成されているのだが、これは、マザーグースの持つ「意外性」に大変合致したやり方だと思う。
飛ぶ出す絵本は、私には余りにも子供っぽく思えて、手を出さなかったが、ある日、Robert Sabuda のThe Movable Mother Goose (Mother Goose Pop-Up)を手にしたとき思わぬ衝撃を受けた。この意外性こそがマザーグースの本質の一つなのだと悟った。
もう一つビデオを見ながら、私はMuberry bushなどいくつかのものは幼稚園のお遊戯の時間にやったことを思い出した。キリスト教会の付属の幼稚園だったのだが、良いことをしていただいたものだと思う。ここを起算点とすれば、私のマザーグース歴は60年以上ということになる。

06・4・15

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