白川静さんに学ぶ
漢字は楽しい
 小川鉄郎 新潮文庫 2010
 白川静さんと遊ぶ
漢字百熟語 
 小川鉄郎  PHP新書  2010
 白川静さんに学ぶ
漢字は怖い 
 小川鉄郎  共同通信社  2007

左の本の出版元も年号も私の読んだもので、複数の版本があり、出版社によって本の大きさが異なるのでこれから買う方は揃えるのが良い。

小山鉄郎の本は、白川静の膨大な著作の中から、面白いところを、つまんで見せてくれるので、面白くないはずがない。

白川漢字学の面白さは、字源に古代民族学的知識に裏付けられていることもあるが、文字を構成する部品(松岡正剛は漢字マザーと呼んでいるのであるが)の原意を押さえ、それが、漢字の世界に共通して使われていることを示すことである。その代表例は口(サイ)で、これを祝詞を入れる器と見ると、それを元に、破綻することなく色々な字の説明がつくという点である。その一貫性が面白く、白川静説の正しさを納得させられるのである。民俗学的根拠もその一貫性も第三者によって反論も検証も出来るという意味で、学問的だといえる。

小山鉄郎さんは新聞記者的に、白川静さんの著作や直接本人に取材して、読者に分かりやすい形で示してくれる。
白川静は学者だから、いちいち、詩経にはこうある、説文にこうあると、典拠を挙げなければいけないし、それが漢字学なのであるが、小山さんの場合は、白川静さんはこうおっしゃる、こう考えておられるという形で記述できるから、気軽に字から字へ飛び移り、その関連性を示スことができる。
こんな作業を色々な方によって、縦横になされることによって、白川漢字学はこれからも磨かれていくのであろう。そして、結局、また白川静さんの著作への回帰促すのである。

小山さんの本で侮れないのが、挿絵である。甲骨文字や金文も掲げられているが、「はまむらゆう」の挿絵があるために、ぐっと身近なものとなる。象形文字としての漢字の説明に、文章と同等の訴求力がある。

挿絵と言えば、金子都美絵『絵で読む漢字のなりたち −白川静文字学への扉』(太郎次郎社2010)は、白川静が好きで、その世界を細密な切絵によって表現しているものである。丁寧に、かつ、レベルの高い挿絵であるが、写実の世界なので、抽象化されたより簡単な「はまむらゆう」の挿絵とは、文字との隔たりがある。文章は「常用字解」など白川静の著作から引いている。白川静オマージュ本の一つ。

松岡正剛『白川静』 参照

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