図説 マザーグース 
藤野紀男 著
河出書房新社 ふくろうの本 
2007年



130頁にも満たないバンディーな本に、なんと豊富に図版や写真が収められていることでしょう。
その版が、みな鮮明で美しいのは、著者の貴重なコレクションやご自身の撮影された写真がそのまま使われたからだと思います。文章を読まなくても図版を見ているだけで楽しい本です。
この本の帯に「マザーグース入門の決定版」とあります通り、「マザーグースとはいったい何か?」といった初歩のことから始まり、基本的な事柄を、平易に、正確な情報を読者に伝えていますが、私が帯を書くとしたら「マザーグース楽しみ方入門」と書いたかもしれません。

現在、マザーグースを楽しんでおられる方は沢山おられ、マザーグースにまつわることなら何でも楽しもうという風になってきています。マザーグース本や関連グーツのコレクションから始まり、本や映画や他の様々な媒体に現れるマザーグースの用例収集、挿絵、翻訳の比較の楽しみとバライティーに富み、学問の世界とオタクの世界にまたがり、豊かなマザーグース世界が広がっています。
この本はそんな楽しみ方の入り口の見本帳でもあります。

平野敬一先生の「マザーグースの歌」(中公新書 初版1972年)で、マザーグース・ファンになったと言う話をよく聞きますが、それから35年経ち、その間、沢山の優れは本が出、楽しみ方の幅も増えました。マザーグース学会など支える活動も広がっている現在、そろろこのあたりで、手ごろな案内書が欲しいと思っていたところに出たのがこの本です。

マザーグースは英米のものですが、果たして本国ではこんな楽しみ方をしているのでしょうか?またそのための本があるのでしょうか?向こうの様子は知りませんが、逆輸出してもいいのではないかと思います。

もしあなたがマザーグースについて全く知らないのであれば、私のお勧めする一つの読み方は、まず巻末の原詩を読んで、その番号の詩に対応する本文を読まれることです。そこから豊かなマザーグースの世界が広がり、110篇の代表的なマザーグースを読み終えた頃には、きっと本格的なマザーグース・ファンになっていると思います。

何だか入門書的に紹介してしまいましたが、プロのための本でもあります。
マザーグース受容史、ハーン、夢二、白秋の使った底本、ハリウエルの集成本の版本問題・・・本書のコラムはマニアを楽しませてくれます。
藤野紀男先生は既に沢山の著作を発表されておられますが、先生の40年間わたる追求の成果のエッセンスをこんな形で味わうことが出来るのはファンにとって嬉しいことです。

07・04・19

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