アリスとチェシャ猫との対話(8)

48 猫: 直感と感情がどう違うかということを説明するためには、人間の心の働き方について述べておく必要があります。添付ファイルで一つの絵を送りましたので、ごらんになってください。
 人間の心には,外界から感覚器官を通して情報が送られてきます。それに対して、感情と思考というふたつの異る反応が起こります。感情と思考はまた互いに影響しあいます。これらの反応の結果として次の行動への意志が起こり、行動を通して外界へ働きかけます。そしてその結果がまた感覚器官を通して入ってくる、というサイクルを描いています。
 私も文字の使い方はあまり厳密には使っていませんが、チョッカンという言葉には二つの書き方があります。直感と直観です。厳密に言えば、この二つは違うものだと思います。
 感覚と感情と思考に、入力に対する反応ではなく、入力なしに起こるものがあります。通常の入力が無いのに起こる感覚を超感覚(ESP ;Extrasensory Perception)といいます。入力なしに起こる感情が直感であり、入力なしに起こる思考(厳密に言えば、入力とそれに伴う思考なしに結論のみが突然浮かびあがる現象)が直観です。
 (感情の中には、体調によって起こる気分があります。これは入力がないように見えますが、体調を感じる感覚があって、それに対して反応していると考えられます。ここでいう直感は、そのような現実の何にも結びついていないようなものです。)

 例をあげましょう。よく虫の報せとか第六感などといって、事故を予知したりすることがあります。たとえば、なんとなくいやな感じがして飛行機に乗るのをやめたら、その行機が墜落した、というのは直感が働いたのだと思います。もし、このとき飛行機が落ちる情景を白昼夢のようにして見ていたとしたら、それは超感覚です。
 これに対し、直観というのは、超理性あるいは超思考とでもいうべきもので、推論や証明なしにいきなり結論が心に浮かびあがってきます。アインシュタインは相対性理論を、推論や計算によって得たのではなく、最初に答えがあって、数学はその検証のために使ったのだ、といわれています。この「最初に答えがある」というのが直観の特徴だと思います。

 超感覚も、直感(超感情?)も、直観(超思考)も、常に正しいとは限りません。したがって、アインシュタインがやったように、それを通常の理性や感情で検証することが必要です。無批判に「超なんとか」に従うのは危険だと思います。

49 アリス:大変明快なご説明で感動いたしました。
脳の右脳左脳の機能分担の学説にも合致し、ユングの心理の4機能とも通じ、わかりやすいご説明で、なんだかすっきりしました。特に図解はコンピューターに馴染んだ者には、入力装置、演算装置[デジタルプロセッサー(思考)とアナログプロセッサー(感情)の二つがついていている]、出力装置というシステムと容易に理解することができます。そこで、入力なしの直感や直感の問題に入るわけですが、その前に確認したいことがあります。それは添付ファイルのなかの外界とありますのは心の外にあるのでしょうか?それとも絵全体が心のチャートなのでしょうか?

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