114 猫: 一つのたとえをお話ししましょう。

 ある大きな新聞社が、優秀な記者たちを集めて、自由取材の旅に出発させました。記者たちの仕事は、世界を旅して、さまざまな記事を書いて送ることです。題材は何でもかまいません。記者の自主性に完全に任されています。

 一人の記者は、麻薬組織の内情をさぐるために南米にわたり組織のメンバーになりました。完全に組織の一員になりきって20年がたち、その記者は組織の副首領の地位にまでのぼりました。彼が帰ってきて記事を書けば、素晴らしい記事が書けるでしょう。けれども、彼はあまりにも長いあいだ組織の中にはいりこんでいたので、自分の本来の目的を忘れてしまいました。彼は完全に組織の一員になりきっており、記事を書いて送ろうという気持ちはおろか、自分が新聞記者だったことまですっかり忘れてしまっています。

 この新聞社は、この記者をどうするでしょうか。

 この記者が普通の人間だったら、いずれ寿命が来て、本来の目的を果たさないままに死んでしまうかもしれません。けれども、この記者が決して死ぬことのない永遠の生命の持ち主で、新聞社も無限に待つだけの時間の余裕があるとしたらどうでしょうか。新聞社は本来の目的を忘れてしまったこの記者を、見捨てたり、処罰したりはしないでしょう。本来の目的を忘れるほどに組織に入り込んだ人間には、決して他の記者には書けないような記事を書く力が育っているはずなのです。新聞社は無限に待ちます。そして人を送ってその記者に接触させ、それとなく記者の本来の所属や任務を思い出させようとします。

 もうお分かりと思いますが、この記者が「人間」であり、新聞社は「神」です。アリスさんも神の「知のシステム」の一つの要素システムして、ご自分の「永遠の人生」の今という一瞬を地球の上でのある体験のために過ごしておられるのです。私は、そのアリスさんのところに、本来の姿を思い出させるためにつかわされたメッセンジャーというわけです。

 

115 アリス:この前のお話で一番面白かったのは次の箇所でした。
『「私が   を体験する」というのが神の御業なのであって、空白の部分に何を入れるかは、私たち人間の一人一人に任された部分なのです。したがって「私が   を体験する」ということは変えることができません。人間は、神の意識の中の体験エージェントです。このことは人間の本質であって、決して変えることはできません。

けれども、「私が   を体験する」その内容は、「私」が選んでいるのです。すべての人が一人一人、自分で選んだ「夢」を見ているようなものです。その夢の中身は、だれでも、自分で変えることができます。むしろ逆に、この夢の中身を「神が変えることはできない」というべきなのです。』

その「私」は何かと思っておりましたら、本来の自分を忘れた新聞記者の例え話となりまして、猫さんが本社からの呼び出し役をやっておられるのですね。

しかし、もともと、無制限に、無期限に「私はXを体験する」ために派遣されているのではないでしょうか? Xの一つとして、絵を描くのも、テロするのも・・・いろんなことがあるわけですね。そんなことを止めて、そろそろ本社に帰る時期が来たというこなのでしょうか?理由をお聞かせいただけませんか。

それから、以前、チェシャ猫さんに道を聞いたときのことを思い出しました。
”Would you tell me, please, which way I ought to go from here?”
“That depend
a good deal where you want to go”  said the Cat.
でした。今度は本社へ帰るの道を教えてくださるのですね。

 
対話35へ   対話37へ  トップへ  Alice in Tokyo へ

 

アリスとチェシャ猫との対話(36)