歌仙三吟「池波やの巻き」

初折表

池波やたちまち集う散り桜

真砂男
   老嬢三人鶯もち食う 余 間
籠城の隠し砦に春暮れて 哲 太
   其処彼処なる妻のへそくり 真砂男
ATM通帳月に覗かるる 余 間
   原発停止残暑極まる 哲太
初折裏
萩咲いて野の石仏の微動だに
真砂男
  いまだ嫁がぬ初恋の人 余 間
純白のレース着てゆく勝負の日 哲太
  減るものもなし事の顛まつ
真砂男
祝言の隣から戻る松の鉢
余 間
  いざ鎌倉と江ノ電に乗る 哲太
弁天の膝の艶めき夏の月 真砂男
  下駄の素足に銀のマニキュア 余 間
仕立屋は仮の姿の極悪人 哲太
  霧に閉ざされ山姥棲む山
真砂男
花の道豆腐土産に会ひに行く
余 間
  朋友ありて春暁の牌 哲太
名残表 切り捨てる刃鋭し葱坊主 真砂男
  見上げる蛙が鼻をヒクヒク 余 間
三人と犬一頭の舟遊び
哲太
  葡萄畑を風渡り来て 真砂男
冬眠の百樽千樽琥珀酒
余 間
   転がせ転がせ聖夜のポルカ
哲太
恋ふ人のうなじ目で追ふ舞姿  真砂男
  腰のひねりのワンテンポづれ 余 間
寺々に軒を狭しと歓喜仏 哲太
   飛天を取り巻く五星の輝き
真砂男
月昇り涼風寄こす火炎山 余 間
   野分の加勢弘安の役 哲太
名残の裏 法螺鳴って薄俄かに生を帯び 真砂男
   立飲み屋さんの青き枝豆 余 間
酎ハイに釣銭添えるイラン人 哲太
  絨毯を織る少女の眼差し 真砂男
花時は無常迅速付け黒子
余 間
   フーコの振り子刻む惜春 哲太
遊山へ 起首:2005年4月25日
満尾:2005年9月9日
楽屋裏