「地下の国のアリス」
ルイス・キャロル 安井泉訳;解説
新書館 2005年2月刊 1400円
― まだアリス・ファンでないあなたへ ―
「不思議の国のアリス」をまだ読んだことがないという方にもお勧めの本です。
本屋でこの本が目にとまりましたら、いきなり17ページの本文を読んでみてください。
『アリスは、お姉さんの隣で川辺にじっと坐って何もしないでいるのが退屈でたまらなくなってなってきました。
・・・・・
どんどん、どんどん、下へ、下へ、下へ。これで終わりがあるのでしょうか。「もう何キロぐらい落ちたのかしら」アリスは声を出して言いました。・・・・』
立ち読みですと大体この辺まで行きます。出来れば声を出して読んで欲しいのですが、立ち読みでは無理ですね。
この本には詩が沢山出てくるのですが、たとえは、最初の出てくるのは
「かわいいナイルのワニさんは
しっぽをぴかぴか磨いてる
ナイルの水をいとおしく
黄金(きん)のうろこのかけながら
・・・・・
こんな詩です。何んだか面白しろいでしょ!やさしいでしょう!
読んでいるうちに、子供や孫にも読んで聞かせようと思うようになります。
挿絵は、下手と思われますか?これは著者ルイス・キャロル自信が描いたたものです。丁寧に書かれていて良く見れば味があります。
この「地下の国のアリス」は皆さんが普通目にされる「不思議の国のアリス」ではありません。それ以前の、キャロルが実在のアリス・リデルたちに話したお話を、手書きして、アリスに贈った本なのです。「不思議の国のアリス」は、後に出版のために手を加えたものです。勿論キャロル本人が手を加えたのですが、その前の、いわば元祖「不思議の国のアリス」なのです。手書きですから、世界に一つしかなく、今は大英図書館にありますが、その複製は容易に手に入ります。その原文を英語学の大家、ルイス・キャロル協会の会長安井泉先生が訳されたのがこの本なのです。
この本から「不思議の国のアリス」が生まれ、「鏡の国のアリス」へと発展しますが、源流は「地下の国のアリス」のアリスですから、ここからアリスの世界に入るのも理に叶ったやり方です。
そうこうしているうちに、あなたもアリス・ファンになっていると思いますので、この本の序の部分や安井先生が大英図書館で原本に触れた感激や発見の話が本当に面白いと感じるようになっていることでしょう。
「地下の国のアリス」の最終ページはどうなっていると思いますか?実は大変な謎があるのです。その仕掛けをこの本では再現しています。
安井先生の情熱とそれを立派な装丁で世に出された新書館に拍手をお送りします。
この本さらに詳しい紹介は新書館のページをご参照。
アリスファンのための書評はは木下信一さんのホーム・ページThe Rabbit Holeの「『アリス』邦訳ブックレビュー」にあります。
宮垣弘
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