AS IT FELL UPON A DAY   1850  ある日こんなことが・・・

AS I was sitting on the hearth
(And O, but a hog is fat!)
A man came hurrying up the path,
(And what care I for that?)

When he came the house unto,
His breath both quick and short he drew.

When he came before the door,
His face grew paler than before.

When he turned the handle round,
The man fell fainting to the ground.

When he crossed the lofty hall,
Once and again I heard him fall.

When he came up to the turret stair,
He shrieked and tore his raven hair.

When he came my chamber in,
(And O, but a hog is fat!)
I ran him through with a golden pin,
(And what care I for that?)

暖炉の前に坐っていると
(なんと、豚は丸々 )
男が小道を駆けて来た
(で、それが一体どうした?)

男が家に入った時は
ハアハア息を切らしてた

男がドア−に着いた時
顔はさらに青ざめて

男がノブを回した時に
気も遠くなり床へ崩れ

男が広間も横切る時に
またまた倒れる音がした

男が塔の階段 着いた時
叫び声上げ黒髪むしる

男が部屋に入った時に
(なんと、豚は丸々)
私は刺した 金(こがね)の針で
(で、それが一体どうした?)
タイトルのAS IT FELL UPON A DAYはバラッドの出だしによく使われる表現ですし、一連4行で2行目と4行目に合いの手を入れるのもバラッドのやり方です。

最初と最後の連にはさまれている(And O, but a hog is fat!) (And what care I for that?)の出所がわかりません。一見無関係な他の歌を合いの手として使うことはかなり以前からあったと思われます。
高橋康成先生は「リア王」の三幕のきちがいトムの歌を引いて、異質なものが呼び起こす効果について書いておられますが、私はシェイクスピアを引くなら「十二夜」の道化フェステが最後に歌う歌、With hey, ho,the wind and the rainとFor the rain it rainth every dayが合いの手として各行でリフレインされる歌に注目したいと思います。
キャロルはバラッドのつもりで書いているようですので、( )の合いの手は最初と最後の連だけでなく各連にも入れたほうが面白くなります。皆さんも( )を挟んで読んでみてください。

合いの手の出所ですが、私の調べた限り、シェイクスピアにもナーサーリー・ライムにもありません。キャロルの創作かもしれませんが、当時流行っていた歌の一節ではないかと思います。キャロルの蔵書には多くのバッラドの本があります。ご存知の方はお教えください。

キャロルに居る位置ですが、塔の中の部屋の暖炉の傍にずっと居たとしたら、音だけで状況を捉えたことになり、キャロルは素晴らしい耳を持っていたことになります。それとも映画のように男の移動に沿って視点も移動させたのでしょうか?
シュールな味のこの詩を読み解くにはちょっと時間がかかりそうです。

改:05・2・19  (05・4・24補
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