Millennium Trilogy Quercus |
Stieg Larsson Translated from the Swedish by Reg Keeland |
![]() |
|
The Girl with the Dragon Tattoo 2008 |
|||
The Girl Who Played with Fire 2009 |
|||
The Girl Who Kicked the Hornets' Nest 2010 |
全世界で2600万部売れたというこの3部作を英訳で読み終えました。合わせて1850ページ、約3ヶ月かかりましたが、楽しい読書体験だったので、読書の覚えを残しておきます。
第1作目、The Girl with the Dragon Tattoo は島というある種の密室で起きた殺人を扱った、ミステリーの常道を行くもので、語り口が上手いので、読み出すとやめられず、538頁のこの本を一気によみました。ハードボルド的要素もありますが、謎を解くという一点に読者を引きつけます。
同書の一節。
”Friendship - my definition - is built on two things,” he said. ”Respect
and trust. Both elemets have to be there. And it has to be mutual.----”p454
第2作目、The Girl Who Played with Fire 569頁、
登場人物は前作を継承しているので、第1作を読まないでこの作品から読むと、おそらく面白さが半減するでしょう。
前作よりバードボイルド的要素が増します。何か社会の暗部にうごめいているようで、次々事件が起き、その構成の複雑さに舌を巻きます。性的な人格異常者、その影響が肉親にも及ぶというテーマは前作にもありますが、ここでも思いもかけない壮絶なシーンが展開されます。
フェルマーの最終定理が出て来るのもご愛嬌。
第3作目 The Girl Who Kicked the Hornets' Nest 746頁
国家保安体制、警察がらみのことや、法廷闘争という新たな展開があります。3部作とはいえ、ある意味で性格を異なるジャンルを、主要登場人物を変えず、破綻なくつなぎながら展開する力は大したものです。
第3作目は、登場人物が多く混乱するので、図書館で翻訳(早川書房)を借りてきて、冒頭についている「登場人物」表を時々参照しました。日本の翻訳ミステリー本の良い点はこの登場人物表や地図がついていることである。もっと早く気づけば良かった。
私は日本のミステリーは殆ど読まず、時折、英語のものを楽しむ程度なので、本書を論評する資格はないのですが、人物造形がしっかりしていて、エンターテイメント本としての手法が駆使され、読むというより読ませられるという読書の快感を味わいます。
珍しい点は、スエーデンという性に関して開かれた国らしく、思いもかけない性の結びつきがあること、ハッカー技術、携帯電話をモーバイル技術という現代的技術がうまく使われていることです。
ホンダ、ミノルタ、ニコンなど日本の製品があちこちに見られ、また寿司の普及などスエーデンでの日本進出の様子を垣間見ることが出来ました。これらはやがて韓国、中国に取って変わられるのでしょうか?
再び引用しますが、
”Friendship - my definition - is built on two things,” he said. ”Respect and trust. Both elemets have to be there. And it has to be mutual.----”
この作品は人間信頼への賛歌でもあって、その点が最も心に打たれた点でした。
【参考】
邦訳はフランス語版からの重訳で早川書房から出ている。邦題は「ドラゴン・タトゥーの女」「火と戯れる女」「眠れる女と狂卓の騎士」 映画化され、もなかなかの評判だったようです。
【M.Hさんへ】
「ご紹介戴いた三部作シリーズの1部でも、原書相手に、冥土のみやげとしてやって見ようかとの気がしないでもありません。」とのことですので、失礼を省みず、私の乱暴なアドバイスを書かせていただきます。
1.迷わず、まず、1冊買ってください。翻訳本の3分の1の値段で買えます。
2.コツコツ辞書を片手に読み進めるのもいいですが、途中で挫折する公算が大きいです。
3.そこで、図書館で翻訳本を借りてきて、対訳本を読むように、分からない所はそれを参照することにします。辞書を引くより長続きします。それに、翻訳本は登場人物表と地図が付いているので役立ちます。つい、翻訳の方を先に見てしまうことが起こるかも知れませんがかまいません。原文がどうなっているか時々見ればいいのです。
4.曲がりなりにも最後まで行けば、残り2冊も買うことになると思います。
5.私の経験では7割分かれば、原書で読む方が、翻訳で読むより、豊かな読後感を得ることが出来きます。英語に翻訳された、仏、独など欧州語の本も英訳で読むほうが、日本語訳より面白い。
6.ミステリーなどは、辞書を頻繁に引かなければならないと、ワクワクと筋を追う楽しさが得られません。自分の語学力に合った易しい、余り長くないものものから始めるのがいいと思いますが、貴兄の場合、がこの本に関心を持たれたのは運命の出会いだと思います。かまわ挑戦てください。
7.冥土までに道のりは長いので、お互いに、せいぜい寄り道しながら、歩きましょう。
2012.7
私の書評