鏡の国のアリス
ルイス・キャロル
ジョン・テニエル 絵
安井 泉 訳
新書館 1600円


普通のお父さん、お母さんへ
クリスマスや誕生日の贈り物に本などどうかと思っておられませんか?
子供が欲しがっている本ならともかく、本を貰って喜ぶ子は意外と少ないかもしれません。親がためになる本を与えようとしているのが分かるからです。
与える前に一度この本をご自分で読んで見ませんか?
「不思議の国のアリス」の続編です。アリスは今度は鏡の向こうの国へ行って、色んな経験をするのです。「不思議の国」と同じく、変な人物?が沢山出てきて、変な理屈を言うのです。何の役にも立たない、所謂ノンセンスなのですが、子供はこんな話が好きなのです。ナンセンスと言いながら、どこか忘れられないものがあり、英米の人は大人にいたるまでこの物語が好きです。
言葉遊びが多くて、下手に訳すと変な文章になるのですが、安井先生の訳は、全く自然にこれを取りこんでいます。
小学校低学年の子には読んで上げるのが良いかもしれません。見本をここに付けておきました。クリックして拡大してみてください。

ご覧になってお分かりのように易しい日本語でしょう。もう一つ挿絵のことなのですが、こんなに美しい挿絵は、普通入手できる原書でも余りありません。しかも、キャロル時代の原書の原寸で表示するなど、この本には隠れた工夫がなされたいます。一度本屋で手にとって見てください。

キャロル・ファンへ
また、皆さんのコレクションが増えましたね。安井先生が言葉遊びをどう工夫されているか楽しまれることでしょう。
流暢な日本語でもう原文を読みたいと思わなくなるかもしれません。
挿絵については上に述べた通りですが、配置も含め、限りなく原書に近づける工夫がなされています。
そのほかにも、これまで取り上げられなかった、「かつらをかぶったスズメバチ」が訳出されています。
チェスの駒の動きについては木下信一さんが平易な解説をしておられます。これによって私も初めて駒を追ってみました。安井先生の解説では、大変重みのある考察が加えられています。
最後にこのような見事な本の編集に当たられた新書館松下昌弘さんにも拍手。

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