アメリカ・インデアンの本(1)

何千年もアメリカでは、インデアンがその自然と共存しながら、今流に言えばエコロジーを大切にしながら、生きてきた。もし何もなければ、さらに何千年と生き延びたであろう。
ところが、15世紀以降、ヨーロッパ人の進出が始り、19世紀の終わりには、北アメリカを殆ど席捲してしまい、アメリカ原住民はReservation居留地へと追いやられてしまった。私はこのアメリカ・インデアンになぜか惹かれるのである。本当に僅かな道具で十分この大地に生きながらえる知恵をもった人たちが、ただ、兵器が勝れているだけで、世にのさばっていく文明人?に抹殺されていくのが、残念ななのである。19世紀後半は写真により、消え行くインデアンの姿が残っているが、インデアンそのものが自分達のことを語った素晴らしい本を2冊取上げる。白人の手で記録されたものであるが、澄んだ心で彼らの物語を記録していて気持ちが良い。

1.ISHI Last of His Tribe  by Theidora Kroebey
   1964 Parnassus Press、Berkelley California

ゴールド・ラッシュで白人が至る所に現れた頃のカリフォルニヤ、ヤヒ族の少年イシの話である。インデアンが家族単位で、谷あいに、白人の目を避けて暮らすようになっていた。数人の肉親と白人に見つからないように過すのは、敵軍に逃れ生きた、日本兵の横田さんや小野寺さんようでもあるが、彼らには、大きな自然があって、そこには心を通わせる肉親もいた。インデアンの言葉も使いながらの、生活の描写は大変リアルなもので、面白い。一人欠け、二人欠け最後イシ少年が一人になって行くさまが、ゆっくりと描かれている。読者はイシになって、自然の中に息をするが、いつの間にか一人となっている。

 なお、この本の翻訳は岩波書店から出されているので日本語でも読める。

2、The Arapaho Way A Memoir of Indian Boyhood by Althea Bass
   1966 Clarkson N. Potter, New York

この本には、当時のインデアンの風俗を描いた22枚の挿絵が付いている。これを描いたのはアラパホ族のカール・スウィージーというインデアンで、彼から聞いたことを、著者が文章にまとめたものである。上のISHIと異なり、部族単位のインデアンの生活が、バッファロー狩りをしていた頃から、居留地に定住させられる様子まで、簡潔にリアルに語られていて、納得できる。インデアンの居留地での白人、政府機関the Agencyの人や先生、教会の人たちのこともインデアンの目で上手く描かれていて、彼らに対する、パラパホ族の反応が、彼らの生き方、考え方をよく示している。個人としてではなく、コミュニティーとして生きていて、これが何千年の間に形成された彼らの貴重な伝統であることが分る。自分達がいかに宗教的であるかということを話した章も素晴らしい。

インデアンというのは差別的な響きを持つのかも知れないので、アメリカ原住民Native Americanが相応しいのかも知れない、しかし、どう呼ぼうとこの人たちへの思いがどうであるかが問題。 2冊とも著者は女性である。

読書の愉楽・私の書評