ロンドン通信 106
 
高校生の地域奉仕活動

娘の通う高校(American School in London / ASL)には、社会奉仕をするクラブが何種類かあります。このクラブへの参加は生徒の自主性に任されていますが、学校側が生徒の意思を尊重し、やりたいと思ったことを積極的にサポートしてくれるのが印象的です。
 
例えばKilburn Park クラブは、ASLから1キロほど離れたところにある、公立のKilburn Park小学校を援助するクラブです。ロンドンは不思議なことに、通りを一本隔てて高級住宅地と低所得者の住む地域が隣り合わせになっています。Kilburn Parkのある地域は低所得の移民が多く住むところで、この小学校に通う子どもたちの約9割が黒人です。これに対してASLは高級住宅地にあり、経済的にも恵まれた生徒が通っています。今から6年前、この地元の小学校のため何か役に立てないかと考えたASLの生徒が、Kilburn Park クラブを設立しました。小学校のほうでも校長先生がこのアイデアに賛同し、受け入れに協力してくださったそうです。クラブのメンバーは、自分たちの学校がこの小学校より一足早く夏休みにはいるのを利用して、小学校の放課後に来校し、子どもたちの補習を手伝ったり、遊び相手をつとめたりします。Kilburn Parkは公立の小学校であるため、先生が生徒一人一人に個人指導をするゆとりがありません。そこでASLの高校生の出番となります。娘も去年と今年の夏休みこの活動に参加し、授業から落ちこぼれている子どもたちに算数を教えたり、英語の本を読んであげたりしました。 中にはまったく勉強に意欲を示さない子もいて、手を焼くこともあったようです。この活動はKilburn Park小学校の先生達から大変感謝されていますが、ASLの生徒にとっても、多くのことを学ぶ場となっています。このクラブの参加者はあまり多くありませんが、その活動は熱心な生徒たちによって、しっかりと受け継がれています。
 
娘はThe Elderly Outreach Clubにも参加しています。これは地域に住むお年寄りと交流を図るクラブです。前回(2003年11月)は103人のお年寄りを学校に招待、生徒のつくったサンドイッチと紅茶でもてなし、みんなでビンゴゲームやダンスを楽しみました。経験豊かな人々とのふれあいは、若い生徒たちにとってもかけがえのないものです。紅茶の入れ方に細かい注文を付ける英国老婦人に、生徒が立ち往生する一幕もあったようですが…。この時、クラブの名称を変更しようという提案がだされ、一人の老婦人が「Young at Heart !」と叫ぶと、満場一致で新名称が決定しました。ダンスを楽しむお年寄りたちはまさにYoung at Heart(心は若者)だったと、娘は語ってくれました。12月はじめには、学校で生徒の劇が上演されるのに合わせて、再びYoung at Heartのゲストを招待しました。娘は「学校の勉強が忙しいから」と家事の手伝いはしてくれないのに、この活動にはいそいそと参加します。お年寄りが喜んでくださるのを見るのが、彼女にとっては何よりも嬉しいようです。

(写真は高校生との交流を楽しむYoung at Heartのゲストたち)

03・12・7     目次へ