『聊斎志異』目録
       
         第9巻


角川
文庫
巻数
読了日 物語への手引きと評(私のコメント)   分類
雲蘿公主 11/3/30 安は生まれながらに口が利けたので、犬の血を飲ませて、止めた。聡明で美男子となり、縁談の話が沢山あったが、母が「子は天子の姫(公主)を嫁にする」という夢を見ていたので、縁談を進めていなかった。そんなある日、美しい腰元の先触れで、天界の雲蘿公主が現れる。嫁入り先の安の住まいを点検に来たのである。家を改装を来月から始めるよう命じて大金を残して帰る。
物語は二人の間に出来た二人の息子の運命へと続く。
 【評】登場人物も多く、ちょっと込み入った筋で、読み通すのに骨が折れた。面白場面が沢山ある。碁やお酒のお相手なら20年、臥所を共にするなら6年。好きなほうjを選びなさいと言われたら、あなたはどちらを選びますか?勿論男は後者がだが、女はそれを予め知っており、「数」=運命、カルマだと言うのも面白い。
陳瞬臣『聊斎志異考』で丁寧な形で再話されている。
姫君降嫁
甄后 11/3/30 頭は悪いが、本がとても好きな男の所に、ある日、美女が現れる。誰かと聞くと「あなたは何度も生まれ変わっているうちに頭が悪くなったのね」といわれる。やがて懇ろになる。別れる際に素性を教えてもらう。男は悶々としているところ、ばあやが、察して、彼女に手紙を届けてあげようという。仙界で会えたが彼女は男の希望には応じられないが別の女を差し向けようという。やがて別の美女が現れる。
【評】3世紀、三国時代曹操の頃の人たちの生まれ変わりの話である。故事を知らなくても面白い。結末を含めて凡庸の筆になるものではない。磚(かわら)磨くというのは禅宗の故事より古いようだ。
甄皇后の身がわり
宦娘
カンジョウ
15/8 温如春は琴がめっぽう好きで、旅行にも琴を携える。旅の途上、道士から琴の奥儀を教えて貰い、家の近くにまで帰って来たが、そこで大雨に会う。陋屋に宿を借りたが、そこに絶世美女、宦娘がいた。
話は変わり、文士の好きな葛公と言う人物の所で、温が琴を弾く機会があり、そこの娘良工が温を見そめる。温も美女良工に惚れ結婚を申し込むが、温の家が傾き気味なので結婚を断られる。誰が書いたか不明の詩が落ちていたり、緑の菊の話があったり、紆余曲折があるが、おだやかに物語が終わる。
【評】これも長編小説に出来るの内容を持っている。琴を介して、なおこの世につながる宦娘の心持がいじらしい。夫婦となる、温も良工も気持ちのいい人物である。全体としてさわやか。
幽霊と琴
阿繍 15/8 劉少年が15歳の時、叔父の家へ尋ねたとき、その近所の雑貨屋で店番をしている美しい娘阿繍に一目ぼれををして、せっせとその店へ通う。下男が怪しんで、叔父と相談して、国へ連れ戻す。次の年、劉は叔父を尋ね、雑貨屋へ行くが、一家は商売がうまくいかないので、郷里へ帰ったという。劉はがっかりし以降、母の勧める演談を断り続けるので、結局、叔父に阿繍との縁組を託して雑貨屋の郷里へ行ってもらう。返事は阿繍は縁組が決まっているという。劉はそれで半病人になってしまう。とある日、阿繍そっくりな女性に出合うのであるが、まさに阿繍であった。彼女との密かな逢引が続く。下男が狐ではないかと怪しめ始める。・・・
【評】ドッペルゲンガーと言えば、自分とそっくりな人間がいることなのだが、恋人とそっくりな人間がいるのをなんというのであろうか。主人公は二人の阿繍に愛されることになる。その秘密は前世の因縁ということになるのだが、嫌味がない。劉は特段の才能があるわけではないが、一途に思いつめる男がつかんだ幸運である。
これも映画化したい作品。
小間物屋の娘
小翠 15/8 王太常が子供のころ、ベッドに寝ているところ、突然の雷雨があり、そのベッドの下に、猫より大きな動物が逃げ込んできた。兄がそれを見て、太常が大物なると、喜んだが、果たして、その通り進士になり、高官へと出世する。所が、その子供、元豊は知恵遅れで、16歳になったも牡牝の差もわからない。そこへある夫人がきれいな娘小翠を連れてくる。
元豊と小翠の子供じみた奇妙な結婚生活が始まる。夫婦で馬鹿な遊びを続けるのである。
小翠の妖婦振りや政争などが絡み、孫を欲しがる親の話やら変化の多い展開がつづく。
【評】動物報恩の物語。いなくなった女を連綿と恋う男の話は多いし、面白い。動物が人並み以上の周到な配慮をする物語でもある。
人間改造
細柳 15/9 主人公は、なよやかで可愛いので、細柳と呼ばれた。勉強好きで、人相を本を読むのが好きだった。気に入った婿に巡り合えず、親の勧めで高という良家の男と結婚する。細柳はこまめに家政を取り仕切る。高はまもなく亡くなる。先妻の子、福と、自分の子、コという二人のいるが、いずれも問題児で、勉強嫌いで怠け者。この二人の息子をいかに育て上げるかがこの物語である。
【評】典型的な良妻賢母の物語。先見の明があり過ぎてちょっと怖い。二人の息子を苦労して、育て上げた後も、容姿は30歳くらいしか見えず、服装は質素なままだったという。
継母の子弟っ教育
鍾生 15/9 科挙の試験のために済南へ来ていた鍾生は、そこに占いのうまい道士がいると聞いて行ってみると人だかりであった。道士は、その中から鍾生を目ざとく見つけ、招き入れて親しく運命を予言してくれる。「余り幸せではないが、今回の科挙は合格するだろう。しかし、母親の死に目には会えないだろう」という。そこで、試験を中断して、母親のもとに帰ろうとすると道士は延命の丸薬をくれる。それにも関わらず帰国の途につくのだが上手く行かず、家僕に丸薬を持てたせて、自分は試験を最後まで受ける。家に帰ると母は回復し、さらに合格の通知も来たので、改めて済南の道士の元に礼に行くと、更に運命の予言をしてくれる。・・・・
【評】道士と予言はつきものだが、その予言通りになる所がおかしい。これも荒唐無稽でノンセンスの味わいがある。
予言
夢狼 15/9 白翁は官吏として南方に赴任している長男甲から3年も便りのないのを苦にしている。親戚のTという男がある日、一緒に歩こうと誘にくる。ある屋敷の前に、ここは、白翁の値の子の家であるという。その甥は遠くの地方の知事をしている筈なのでので、ためらっていたが、入ってみると果たして、その甥は立派な姿で現れる。さらに翁の長男も近くいると言うので、行ってみると、そこは多くの狼に守られ、床下にはは骨が累々としている。甲が出てきて翁との再会を喜び、宴席を命じると、大きな狼が死体を加えてくる。・・・さらに恐ろしいことが起きるのだが、それは夢だと分かる。物語は思いがけない展開にとなる。
【評】役人を虎や狼として表し、賄賂で昇進していく世界を描き迫力がある。予知夢の不思議さを表す。
狼の夢
天宮 12/6/22
20/8/16
郭という青年の所へ知らない老婆がやってきて酒をくれる。酔って目が覚めると美人が添い寝している。寝食をともに楽しむのだが所詮暗い。そのことを言うと天宮に連れて行ってくれる。脇役の侍女も結構やる。・・・
【評】天宮の素晴らしさを例えるのに、豪邸の有様を生き写しするしかないのだが、男の見た天宮は、現実の権勢者の館とよく似ているところが面白い。男としては一度は味わってみたい。天界,地上との行き来が巧み。

追記:白話『聊斎故事』にあり
天井の御殿
寃獄 15/12/17 妻をなくした朱という男が、後添えをもらおう、結婚を斡旋する仲人婆さんのところへ赴いた所、その家の隣の奥さんがとても綺麗なので、「あんな女性が欲しい」と言ったら、婆さんは「その女の亭主を殺しなさいよ。そしたら、その奥さんを取り持ってやろう」という。朱はそれはいいと笑って帰ったが、1ヶ月後、その亭主は何者かにより殺される。朱は獄に繋がれることになるのだが・・・
【評】捜査はもっぱら拷問によってなされた。指揮した知事は後に落ち目になり、冤罪が晴れた朱に福があるので後味が良い。
無茶な裁判
劉夫人 15/12/18 廉は勉強好きだか、貧しい孤児であった。ある夕方、道に迷い、劉夫人の家に泊めてもらうことになる。夫人は廉の来るのを予め知っていたようである。夫人は廉に資金を与え、商売勧め、次第に金持ちになろ地位も得ていく。夫人の孫の一人が問題児であること除けば大きな波乱がない。
【評】書痴の主人公も劉夫人もおっとりしていて嫌味がない。
貪らないことが幸せの道だと教える。
金主の夫人
神女 15/12/27 米という男はいい加減な男である。通りがかりの家で賑やかな音がするので、何事かと聴くと、ある人の誕生祝いをやっているところだと聞き、早速、祝いの品を買って、その宴席に乗り込むのである。その後、冤罪にあったり、美女から簪を貰ったり、物語は長い。神界の女性と結ばれ、ハッピー・エンド。
【評】米という男にはいい加減な所と節操な堅いところがあって、それが物語の流れを作っている。陳舜臣『聊斎志異考』で忠実に再話しているが、22ページかかっている。
神女
湘裙 15/12/28 兄思いの仲は、兄が35歳でなくなり、その妻もそれを追ってなくなった時、自分が2子を得たなら、一人は兄のあとを継がせようと思った。仲は1子をを得た所で妻が亡くなったので、後添えは貰わず、妾を貰おうとあるところに出向くのだが、気に入る相手ではなかった。酒を飲んで帰る途中、旧友に出会い誘われてその家に行くが、既に酔っていて、彼は既に亡くなっていることを思い出せなかった。ここからあの世の世界の話。兄に出会い、兄の妾の妹(湘裙)を見初めるのだが、このときは、兄の子一人を連れて、この世に帰る。その子が大きくなって嫁取りの時期に、湘裙が現れるのである。以下、さらに変転。
【評】長編。この世とあの世の往還が滑らかに行われるて見事。描写も肌理細やかで、主人公格の男女も好人物。
兄弟の愛情
羅祖 15/12/29 羅という男は貧しく、かつ豪胆な男だったので、一族の中で選ばれて北辺の警護隊になるのである。そこで、一子をもうける。隊長に気に入られて、隊長が西方面に転属になると乞われて付いて行くことになるが、その際、妻子を友人李に託した。3年経ち、隊長が北塞へ手紙を足すことが生じて、羅はその役買って出て、ついでに妻子を見舞うのである。そこで、妻が李と浮気していることを発見。刃に掛けようとするが、刀の穢れと、妻子、財産を李にくれてやり姿を消す。・・・
【評】羅という男が見事に描かれている。
神様になる
橘樹 12/6/22 高官が道士から橘の盆栽を献じられるが、断られ、その娘に上げることになる。その娘はこれを愛するが、親の転勤で置いていくことになる。年を経て、娘はエリートと結婚して、勝手の地方へ赴任し、大きくなった橘に再会する。
【評】橘が愛してくれた娘に反応するのがおもしろい。
盆栽の不思議
木雕美人 15/12/28 二匹の犬を連れた男が籠から美人の人形取り出すとそれは生きているようであった。犬に錦のかぶせその上に人形を乗せると曲馬団のように芸をした。「昭君出塞」を演じたところで、今度は、羊の皮衣を来た人形を乗せて後を追わせた。4行 木雕美人
金永年 15/12/28 夫82歳、妻78歳、子なし。夫の夢に、神様が「お前は正直に商売をしたから、一子授けてやろう」という。まさかと思ったが本当に子が出来た。3行 金永年
孝子 15/12/29 母親の腫瘍を治すために、自分の体の肉を切り取り軟膏を造り治したという話 股の肉を切る
   獅子  7  15/12/29  タイから貢物として送られてきた獅子の道中での様子。2行  物  獅子
   梓潼令  7  15/12/29  赴任先についての夢が2度当たる。2行  人  夢のお告げ

目次トップ Alice in Tokyo