『聊斎志異』目録
       
   第7巻


角川
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読了日 物語への手引きと評(私のコメント)   分類
翩翩 10/12/8
男は、放蕩の末、悪い病気をもらい、皮膚もただれ、乞食をしながらさまよっているところを、仙女翩翩に拾われる。芭蕉の葉のようなもので服を作ってくれるし、水浴で皮膚病も治るし、やがて懇ろになってしまう。ある日、翩翩の友人花城がやってくる、二十三,四の良い女で、気を引こうとするとその都度、着ているものが木の葉に変わるので、浮気心を起こせなくなってまう。冬を越し、子供も生まれ幸せに暮らすが、故郷が懐かしい。
【評】浮気心を起こすと着ているものが木の葉に戻ることを除けは不都合はない。一度故郷へ帰るが、仙界が恋しくなり戻る。そこは以前とは異なり翩翩はいない。
洞窟の世話女房
促織 10/12/9 宣徳(1427−36)の頃、宮中で促織(こおろぎ)を戦わせる遊びがはやって、民間から、よい蟋蟀を差し出させた。そのために蟋蟀税のようなものが発生して民衆は苦しんだ。
話は、凡庸な男が蟋蟀によって災難にも会い、幸運にも恵まれる話である。
【評】一匹の蟋蟀がこんなに生き生きと描かれているのも珍しい。木鶏に喩えられるのもおかしい。
こうろぎあわせ
向杲 10/12/10 仲のよい異母兄弟の兄のほうが、芸妓と馴染んでやがて身請けするが、同じ芸妓に目をつけていた金持ちの息子の恨みを買って殺せれる。弟は官に訴えるが、官は買収されていて取り上げない。そこで、弟は直接あだ討ちをしようと機会を伺う日々が続く。ある風雨に会い、朦朧となって、山の祠へ入ると知り合いの道子がいて、乾いた着替えをくれる。それを着ると虎になる。・・・・
【評】引き締まった短編で上手い。烈風、雹も降る中、意識が朦朧となり、虎となって復讐をどげ、再び意識を取り戻す。リアリティーがある。
虎になって仇を討つ
鴿異 10/12/14 いわば鳩のオタクの話。色々な鳩を集め愛玩するが、ある日、白衣の青年が現れ、珍しい鳩を紹介する。主人公は欲しくてたまらない。ようやく手に入れるのだが、、ある日、ある高官から鳩を所望され差し出す。なんとその高官は鳩を食べてしまう。
【雹】各種の鳩の描写は面白いが、なんと言っても、鳩を食べた長官の出現である。価値観の違いを上手く表現しており、主人公はオタクをやめるのが面白い。
鳩の精
江城 10/12/22
11/03/02
主人公は、幼いとき一緒に仲良くしていた江城に再会したときはすっかり美しい娘になっていた。江城の家が貧しいので、親が反対する中、無理に意地を通して、めでたく結婚する。ところが、これが食わせ物で、主人公を尻に敷くだけではなく、親に大しても無礼である。散々な目に会い続けるが、どうしてこんなことが起きるか分かる。事態は急変する。
【評】堂々とした長編で面白く、途中から翻訳で筋を追ってしまった。それにしても上手い。シェイクスピアの『じゃじゃ馬馴らし』の向こうを張る。悍妻、こんなすごい女を見たことがない。
追記
安岡章太郎『私説聊斎志異』ではこの悪妻と蒲松齢の立場をかなり詳しく比較している。
悍妻
八大王 i10/12/24 借金の形に鼈(すっぽん)をもらっていた男が、その中で、額の白い大きな鼈を逃がしてやる。ある日、道で、酔っ払いに絡まれる。名を名乗ったところ、酔っ払いは、命の恩人だと、家へ連れて帰りもてなした上、お礼として男に超能力授ける。男は次第に裕福になる。邯鄲の夢の変形とも取れる話である。
【評】酒が一つのテーマ。酔っ払いの鼈のさまが面白い。海亀を海に逃がすときに酒を飲ますのをテレビで見たことがあるが、鼈も酒好きらしい。主人公もその妻もすっきりとした性格で好ましい。リアリティーのある話である。
異史曰くでは酒に関する長い賦が付いていて、大変難しいが、前半は酒の徳、後半が酒の害を説いて面白い。
すっぽんの恩返し
邵女 11/1/15 男の妻は大変嫉妬深い女で、妾を置くと、いびり殺してしまう。男はそんな妻きらい、何とか良い女を得ようとして、やっと得たのが、邵女である。貧しい家庭に育ったが学問が好き、観相学を学んでいる。その彼女が男の妾になるのを選んだのも男が福相だからである。男が密かに匿っていたのだが、邵女は自ら本妻の所へ行き、下手にでて、本妻に誠心誠意使える。本妻の方は、焼餅と疑念でやはりいびりを繰り返す。それでもなお邵女の態度はかわらない。・・・

【評】長編で読み応えがある。子供の出来ない本妻のヒステリックな言動と対する列女といえる邵女が、対比されながらよく描かれている。その間に立つ男の立場もリアリティーがあって面白い。娘を妾に売った邵女の父の話が最後2行あって、見事。「人相見」は最近見なくなったが、まだあるのかしら。
本妻と妾のあいだ
鞏仙 11/1/20 道士が王宮へ入ろうするのを門番は阻止するが、買収、ついで侍従も買収して入る。目的は王宮の庭の眺めを楽しもうと言うもの。不思議な力を発揮して、王とも親しくなる。この道士は尚という男の所に寄宿しているのだが、尚は、以前、芸妓の恵哥といい仲だったが、いまや王の後宮に入れられており、尚は道士に恵哥のことを聞くので道士は尚を袖の中に入れて連れて行く。やがて恵哥に子供が出来る。・・・
【評】道士は仙人ではないと謙遜するが、その法力は凄く、描写が自然で仙人らしい。道士の袖のなかで、若い二人が、連句を壁に書くのも面白い。出産に関することも出て、変化に富む仙人物語である。仙人の目的は分からない。
袖の中の天地
梅女 11/1/20 宿の泊まっていた封という男がふと外を見ると、塀のところに、女が顰め面をし、舌を出して、首に縄を巻いているのが見える。首を吊って自殺した女の幽霊であることは分かる。その幽霊が言うことには、舌が元どうりに戻らなくて苦しいので、首を吊った梁を木って燃やして欲しいという。封は宿の主人に話すと果たして、その宿は、曰く因縁があった。封の助力で梁の始末付くと、女が礼に現れ、その幽霊との付き合いがが始まる。最後にはその女と結ばれるのだが、ここに行くまでの物語。
【評】幽霊と綾取り遊びをするのも珍しい。やり方を口でいい頤で指すとはリアルな表現。幽霊は魚が水の中を自由に動けるように、地下にも抵抗なく行けるという。幽霊の物語だが、一つ一つの出来事の連鎖に必然性があって、納得できる。
悪役人と幽霊芸者
郭秀才 11/1/21 郭という男が友達の家からの帰り道、山で迷ってしまう。山頂の方から笑い声が聞こえるので行ってみると、男たちが酒盛りをしている。道を尋ねると、男たちは「丁度よい所にきた。こんな名月を愛でずに道を聞くとは無風流な」と言って酒宴に加える。郭の呑みっぷりの良さが気に入られ、さらに、隠し芸の鳥の鳴き声も受けて、次の中秋の名月の時にも是非来いという。返礼の男たちのやった事が滑稽。
【評】1ページの小編だが面白い。中秋の日がやってきて、郭は行こうとするが、友人は止める。どうしたのか分からないところが憎い。
人梯子の道
阿英 11/1/22 男が寺で読書をしている時のこと、外で話し声が聞こえるので窓から見ると、空き地で娘3、4人が宴会を始めている。そこへ鬼のような男が闖入してきたので、娘たち逃げるが,
逃げ遅れた娘は、男に指を食べられてしまう。男はそれを助けるのだが、弟思いの彼は、この女は弟の嫁に良いのではではないかと、その旨、女に告げる。女は自分は家事が出来ないから他の女を紹介すると言う。翌日、弟は、許婚であると名乗り出る女に出合う。許婚があったとは聞いていないので、兄に正すと兄も知らないと言う。数日後、、兄の方も女(阿英)にあい、その謂れを聞かされ、家につれて帰る。弟と引き合わせるが、何かちぐはぐ。正すと、実は鸚鵡だという。・・・・2年後、兄の留守中に動乱が起きる。・・・・
【評】話が込み入っていて分かりにくかった。父親の冗談話を飼い鳥の鸚鵡が聞いていたのである。鸚鵡の末路が悲しい。兄の嫁が良い人。
鸚鵡の許婚
牛成章 11/1/22 若くして父に死なれ、母は子を置いて、再婚。妹の嫁入り先の助力で父の家業を続けようとするが、賊に会って元手を失う。たまたま父にそっくりな人の店に雇われのだが・・・・
【評】短編ながら、事態が良く分からない。死んだはずの父が実は生きていたようで、そうでなかったということか?
幽霊夫婦
青娥 11/1/22 早く父を失った霍はマザゴン的に育った。一方、仙道にこって行方に知れない父を持つ青娥も一風変わった女となる。霍が青娥を見初めるのであるが、縁談は上手く行かない。ある日、霍の所に道士がやってきて霍にどんな硬い所も掘れる小さな鋤をくれる。霍はその鋤を使って青娥の家に闖入するのである。二人の結びつきは簡単には達成できなかった。結婚後も紆余曲折がある。
【評】長編である。二人の母親の出番が多い。親子2代にわたるが、なんだか間延びした感じがした。
鋤をもらって
鴉頭 11/1/23 王文は真面目な男であるが、金には縁がない。彼が旅行の途中、親戚で大商人の趙に出合う。趙は喜んで王を自分の宿舎へ招くが、そこは女郎屋であった。王は、そこの娘、鴉頭を見初め、趙のくれた10両に持ちがね5両を加えて一夜を過ごすが、その後の金の当てがない。鴉頭は夜逃げしよう(請以宵進)と言う。駆け落ちのあと、鴉頭は自分が狐であることを明かすのだが、王は気にしない。やがて連れ戻される日が来る。何年も経って、王は孤児院で自分に似た子を見つけ買う。・・・
【評】「聊斎志異」の主人公の男性は、特別な男と言うより性格は良いが、平凡なタイプが多い。それを女(狐や幽霊が多いのだが)が選び取るとる。女は異能でけなげで素晴らしい。この物語も典型的な組み合わせで、親子2代に渡り少し長い。大商人の趙が落ちぶれて行く様も上手く描かれている。
芸者狐
余徳 11/1/23 別荘の借り手、年若い余徳という青年の話である。その不思議な暮らし方、人付き合いを好まない。余徳との酒宴は優雅なものであった。しかし人に知られるようになると去っていった。去った後に甕が残されていたのでそれを使うことにする。・・・
【評】2頁弱の小品。捉えどころがない。
不思議な甕

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