『聊斎志異』目録
       
         第5巻


本棚の奥から右のような本が出てきた。
@中国古典文学全集(上下)昭和33年(1958)平凡社刊
私が今読んでいる本と同じ青柯亭刻本によっているので配列は同じ。訳者は5人。これを会校会注会評本に従い編集しなおしたのが中国古典文学大系(上下)1970年平凡社刊で、これが全訳翻訳としては最も新しいらしいが、持っていない。
A横の日に焼けた本は公田連太郎原注、田中貢太郎訳昭和4年(1929)北隆堂書店刊。35編の翻訳、返り点付きの原文、語注がある。公田連太郎は漢籍、仏典に通じた大学者で、私も『至道無難禅師集』『易経講話』を持っているが、『呻吟語』や『資治通鑑』など欲しい本も多い。この仰ぎ見るような方が『聊斎志異』に手を出しておられることが嬉しくて買っておいたものである。公田先生が原文に訓点を付けておられるので読みやすく、35編はこれで読むことにした。なお、この本は平成9年明徳出版から再版されている。
角川文庫
巻数
読了日 物語への手引きと評(私のコメント)   分類 中国古典文学全集
狐諧
9/09/16 賦役を逃れて他県にきている男のところに、狐の女が押しかけ女房的に居つき、生活の面度を見てくれる。友達が聞き知って押しかけて、その友達と狐女の宴席での滑稽なやり取りが展開する。
【評】頓知的冗談が中心なので、文章は大変難しい。
女の去り方があっけなく、それがかえって印象的。
狐女の諧謔
   続黄梁  1  9/09/23 曾は進士の試験に合格して、同じく合格組みの友人達と馬を並べて遠出する。寺に占い者がいるので将来を占ってもらうと大臣になると言うので有頂天になる。折から雨で、僧坊で雨宿りをするが、そこには一人の僧が座禅したいた。疲れて横になっていると天子からの召喚状が届く。それから、出世の極みを味わうが、讒訴にあって、没落。現世で難渋するだけではなく、地獄に落ち、責め苦にあうだけ足らず、乞食の家の女の子に生まれ変らせられ、苦難の道を歩むと言うもの。
悪夢から覚めたところで、僧は「大臣になる占いは当たっていましたか?」と笑いながら言う。
【評】邯鄲の枕のバリエージョンである。黄梁ー炊の夢であるから、表題が続黄梁となっているが、『聊斎志異』の中に「黄梁」という編があるわけではない。原作「邯鄲の枕」の中身はよく覚えていないが、没落後の描写はこちらの方が凄いのではないかとおもう。
 人 宰相の夢のあと 
   小猟犬  2  9/09/30  書斎を静か僧院へ移したのはいいが、そこで、蚤や蚊に悩まされる。食後横になっていると、2寸ほどの武者が現れ、そして次々と武者が鷹や猟犬を連れて、蚤や蚊を退治してくれる。子犬1匹を残して引き上げる。
【評】小さな生き物の出てくる話は他にもあったが、どこだったか思い出せない。
物    小さな猟犬
   辛十四娘  1  9/10/17 赤い服を着た美しい女が、小姓と連れて歩いているのに出会う。酔って帰る途中にまた出会い、禅寺に入って行くので、その後を追う。辛家の14番目の娘と分り、結婚を申し込むのだが、なんだか上手く行かず、放り出される。今度はまた明かりが見えるので入ると、そこの主人は遠縁の叔母さんの家であった。事情を話すと、その娘を呼び、縁結びをしてくれるのだが、結局これも幻影に過ぎないことが分る。所がその女(狐)が現れるのである。勿論狐であろうがかまわない。主人公の幼友達が登場して、狐の嫁を貰った主人公にちょっかいを出す。これが後半。
【評】狐や幽霊の話と分りながら、この主人公と一緒に話にのめり込むように出来ていて、リアリティーのある話である。男は従酒(さけのみ)であることが、主題の一つで、酔うとつい本音が出てしまい禍を招くとごろがおかしい。
 狐  助けられた?
   白蓮教     10/4/25  妖術の先生が、盆の上に盆を重ねて、留守中、中を見てはならぬと言って旅に出るが、弟子は覗いてしまう。中は、水の上に帆掛け舟が浮かんでいる・・・
もし。先生の女に手を出したらどんなことになるか?

【評】白蓮教は明末の邪教。天馬訳見当たらない。先生の旅とは一体どんなたびなのであろう。
 人 白蓮教徒 
   胡四相公  7 10/4/25  腹の据わった男が狐の胡四相公と友情を深める話である。病人から金を巻き上げている巫女をやっつけたりする。胡四の弟にも引き合わされる。男の弟は出世するのだが本人はうらぶれたままだったが・・・

【評】豪放自縦(大まか)な性質のいい男は蒲松齢が好むものである。幸運が舞い込む。爽やかな中篇。
 狐  姿なき若様
   仇大娘  2  10/4/25 仇一家とそれを陥れようとする魏とが織り成すドラマである。父は反乱軍さらわれて、残された2人の息子、福、禄はまだ15,6歳、これに魏がかんで仇家を没落させようとする。そこに登場するのが先妻の娘、大娘、性剛猛、大活躍する。魏の最後は哀れ。

【評】登場人物が多く、大河ドラマに出来そうな、複雑な筋である。ここでも男は弱い。
 人  男まさりの姉
   李伯言  8  10/4/27  閻魔さまの代理を勤めるために、一時、冥土に呼ばれた男の話である。炮烙の刑も目の当たりにしたり、親戚の男がやってきたりする。

【評】短いながら、天の裁きが公平無私であることが良く分かる好編
人   閻魔の代理
   黄九郎  3  10/4/27 男色の気のある男が、ある夕方、美少年黄九郎に出会う所から物語りは始る。その美少年との関係が深まるが、九郎のもう一つの目的は男を通じて母のための薬を入手することであった。そうこうしているうちに男は腎虚で亡くなる。別のあるところで自害した男があって、そこに乗り移って再び生きる。また九郎が現れ、今度は従妹を世話するという。仙女のように美しい女だった・・・。

【評】二世に渡って狐の美少年と関係がある男の話も珍しいが、この物語の主人公は実は狐の方かもしれない。
 狐  狐の美少年
   金陵女子  4   10/4/28  道で夫を失って泣いている女に出会う。見ると良い恩なので、家に入れ、2年過すが、女は去ってしまう。男は恋しく思い尋ねてみると、そっけない。

【評】心の中に冷たい風が通るような物語であるが、男女の間にありそうな話。
 人  道でみそめた女
   l瑣 2   10/5/14  引っ越した先は古いお墓の近くで、夜、風のざわつきの中、詩を吟ずる声がする。詩の後半を吟ずることによって、声の主である女性と親しくなる。友達が知り、女に会わせろとせがむ。この女は鬼(あの世の人)で、友人の介入で2人の仲は一度終わるのだが・・・

【評】後半は漱石の「夢十夜」を思わせる。
鬼   青い鳥
   白干玉 3   10/5/18 呉青年は若いときから秀才の誉れ高く、翰林の葛氏は、試験に合格したら、美人の娘を嫁がせようと言う。彼はこれを励みに勉強ををしていたところ、白皙の青年白干玉と出会い親しくなる。白干玉は仙界の人で、やがて呉青年をこの世界へと導き、楽しい思いをさせる。俗界へ戻って十数ヶ月経った時に、仙界から、これは貴方の子供と嬰子が届けられる。母が育てている所に、葛氏の娘が押しかけ女房として押しかける。呉青年は仙界へと赴いてしまうのだが、さらに子の代の話へと続く。

 【評】いやみな所の全くない話で、仙界、俗界のつながりが自然なものとして描かれている。仙女の子が出来が良いのは、次の夜叉国の子供とも響き会う。
 神  飛んで行った腕輪
   夜叉国  8  10/5/18 商人が台風に流せれ、夜叉の国に着いてしまう。彼は煮炊きが出来ることから、夜叉たちに受け入れられ、言葉も覚え、雌の夜叉を与えられ、二男一女を得る。7年経ったある日、雌が次男と娘を連れて遠出をしている時に、長男を連れて浜辺に来てみると、元の船がつながれている侭だったので、急に里心がついて、息子と国に帰る。この息子は怪力で18歳の時には副将軍のような地位についている。一方残された方であるが、・・・やがて合流して立派に暮らす。
【評】 中国人が夜叉の言葉を学び、夜叉の子が中国の言葉を学ぶという両方が描かれている。他の雌が商人に言い寄るのを拒んでいる所に妻の雌が見つけるくだりは面白い。
いつも面白くない「異史曰く」が珍しくしゃれたことを言っている。「どこの家の寝台にも、夜叉が一匹居るではないか」 けなげな妻というのは心を打つものである。
 人  夜叉の国
  老トウ  3  10/7/22 ?徳は土賊の親分で、腕っ節は強いが、商売は下手。商人は彼がいると安全なので、商売の旅に連れ出す。
上手く行かず、年の瀬、一人で酒場で飲んでいると、金を持った老人が少年と僮僕いて、その金を奪おうとするが散々な目に合う話。
【評】この男後に善人となるのが可笑しい。
 人 敗れた連珠矢 
   姫生  6  10/7/22 叔父の所が、狐にたたられているのを、主人公の姫生がその対策に乗り出す。「化かすぐらいだから、人の心も理解できるはず」と、丁寧に、狐に呼びかける。銭も鶏もなくなるなるのだが、ある日、酒1樽、鶏、銭400問がおかれているが、これは狐が盗んだものに相当する。酒は香りがよく、飲むと、急に盗みがしたいという気になって、金持ちの家に入り、盗みを働く。・・・・

【評】狐は一度も姿を現さないのだが、確かに狐がいるという現象が起きている。 姫生の人柄も良いし、その妻の気転もいい。
 狐  わなをかけた狐
   大力将軍  3  10/7/22  大力だが人の5,6倍もの飯を食べるために定職にありつけず乞食している男に情けをかけてやったら、10数年後、その乞食男は将軍になってはぶりを利かせていた。
【評】会えば、財産の半分をその恩人に与えようと几帳面に管理していたところが寝かせる。
 人  大力の将軍
             
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