『聊斎志異』目録 第12巻。 私と『聊斎志異』との関係は、思い返せば古いものである。父が、晩年図書館で借りて読んでいたのを、少し読んで面白いと思った記憶がある。父はその才能の割りに不遇な人生を送ったが、それを慰めるものとして、この作品があったと思う。柴田天馬訳で日本人の筆になる挿絵が素晴らしかった。 聊斎志異の面白いところは、人生が描かれているからである。鬼や狐が出てきても、全体として人の人生を現わしている。 主人公が素直な凡人であること多く、親しみが湧く。 |
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巻 | 題 | 角川 文庫 巻数 |
読了日 | 物語への手引きと評(私のコメント) | 分類 | 中国古典文学全集 |
12 | 司文郎 | 6 | 2020/6/16 | 王は試験のため寺に間借りしていたが、隣に秀才がいたので挨拶に行ったが、相手にされなかった。ある日寺に来た宋という少年と親しくなり、そこに秀才が割って入り、文章の優劣について競う。また、王は宋の指導も受けるが、宋の勧めで盲目の僧に文章を見てもらう。盲目の僧は、燃やして匂いで判定する。試験に通るレベルと言われる。秀才も同様判定してもらうが評かは低い。王は試験に通らず、秀才は通る。・・・ 宋は鬼で、天界での選考で司文郎(文官試験副委員長)の役に就くという。 【評】文章の良し悪しを、それを燃やして匂いで判断するという珍しい判定法がある。主人公の王の性格のため、全体としては穏やかな物語。 |
鬼 | 文章の鑑定 |
呂無病 | 5 | 2020/6/18 | 孫は愛妻を失った後、悲しみの余り山中の別荘に住んでいた。そこへ、押しかけ女中のような形で「無病」がやって来て、懇ろになる。その後、孫ののち添えの話が起き、無病の勧めもあって、これを娶るが、無病はその新婦許と仲良かった。許はやがて3歳の子を残して亡くなる。さらに王家の娘を嫁にもらうが、これが悪女で、徹底的に先妻の子、許阿を苛め抜く。無病はこの子をかばい、子も無病を慕う。悪女の悪行は続く。 【評】長編。久しぶりに悪女の登場、それに対するは無病は鬼なのだが、意外と地味。悪女の回心も上手く描かれている。孫の人生も思いやられる。 |
鬼 | 幽霊妻 | |
崔猛 | 3 | 2020/6/23 | 崔は腕っぷしが強く、不正を許せない男で、多くの人が彼を頼ってきていた。近所の嫁が姑いじめしているのを知って、殺してしまった。単純で乱暴な男であるが、母のいうことだけはよく聴いた。ある道士が彼の運命を占い、自制を促し、万一の助けと趙氏の息子を紹介される。 悪い男甲が出てきて、申という男の妻に横恋慕する。 物語は崔と申の友情物語。 【評】長編。一本気の男の清々しさ。申は博打で妻を取られるような男であるが、後々の行動が目を見張る。 |
人 | 侠士とその下男 | |
安期島 | 8 | 2020/6/23 | ある大臣が朝鮮に使いした時、安期島に仙人が住んでいると聞き、行く話 不老長寿の術を聞くと「富貴のひとは不可能」と。 【評】国王の土産も不思議 |
神 | 神仙の島 | |
薜慰娘 セツ |
8 | 2020/6/24 | 貧しい男豊が、行き暮れて、墓の傍で寝てしまう。そこで、老人に会い、そこにいる娘薜慰娘と縁組する見る夢を見る。起きて、村へ行くと村人は驚き、お前は一日前に亡くなっているという。同姓の男に救われしばらくいるうちに、李叔向いう進士が父親の墓を探しにやって来る。ある墓を暴くと、娘が出てきて、生き返る。これが慰娘。今娘の生前の話が出てくる。悪い男のかどわかされている。因果は巡る・・・・ 【評】挙人、進士の沢山の人が出てきて、誰が主役か分からない。 |
鬼 | 墓の中の女 | |
田子成 | 6 | 2020/7/3 |
田子成は洞庭湖で遭難し、妻は自殺、残された主人公はまだ乳飲み子だったはお祖母さん育てられ、進士。役人になるがあまり仕事が合わないようである。ある日、湖の畔で、笙の音につられて、覗いてみると3人が酒盛りをしている。そこへ引き込まれる。・・・・父の埋葬の場所へと誘導される。 【評】酒席の様子が分かる。その遊びはよくわからないが風流なもの。 |
鬼 | 洞庭湖の亡魂 | |
王桂菴 | 4 | 2020/7/10 | 桂庵は南に旅行中、船頭の娘に一目惚れしてしまう。何度も言い寄るが成功せず、夢に見るほどだった。苦労の末、やっと結婚でき、故郷へ連れて帰るところで、事態急変・・・ 【評】ラブストーリーの逸品。次の「寄生」へと続くのも珍しい。主人公は幸福の絶頂にあって、どうして嘘をついたのだろう? |
人 | 船の中の女 | |
寄生 | 4 | 2020/7/10 | 王孫は前話の桂庵の息子である。閨秀という娘に惚れ込んで、恋の病になる。両親は憂いて、閨秀の親に縁組をお押し込むが不調に終わる。王孫の病はますますひどくなる。一方、張家の娘五可も美人であった。ある時、王孫を見初めていて、仲人婆さんが登場。病の王孫の所へ行って、五可の美しさを吹聴する。王孫は聞く耳を持たないが、その夜、五可の夢を見る。2転3転して、王孫は閨秀も五可も得るという話。 【評】前話連続した、息子の代のラブストーリー。夢が一役買っているのも前話と同じ。2話続き人間の美女が出てくるので楽し。 |
人 | 情深き男 | |
褚遂良 | 5 | 2020/7/11 | 貧乏な独身男、粗末な借家住まいでしかも病身。そこへ、狐の女が押しかけ女房としてやって来て、病気を治してくれるし、生活も豊かに一変し、友達も招くほどになる。唐代書家褚遂良の時のとき受けた恩を返したいのだという。 【評】爽やかな中編。去り際も優れている。 |
狐 | 狐の恩返し | |
公孫夏 | 2 | 2020/7/12 | 県知事の職を金で買った男の話。準備をしていたら病気になってしまった。そこへ、もっと高い地位を売ろうという者が現れる。賄賂の半分を出せば残りは赴任してからでよいという。男の買ったのは冥府の官職であった。関帝の前で裁かかれ、散々な目に合うが、生き返る。 【評】あの世でも官僚組織があるのは、時々出てくる話。病気が癒えてから彼のいう言葉が可笑しい。 |
鬼 | 冥土汚職奇談 | |
紉鍼 ジンシン |
5 | 2020/7/18 | 虞、王、傳、黄の家系が絡む。虞の妻、夏が里帰りから帰ってくると、門前で悲しんでいる母、娘(紉鍼)がいる。事情を聞いて見ると、大きな借金の返済で困っているという。夏が金の工面をしてやるのだが、その金を盗まれる。約束を守れなかった夏は自殺する。娘は墓前で泣いていると雷が落ち娘も死ぬ。あと、二人とも生き返るり、あとは娘の縁組の話へと展開する 【評】文章、関係が複雑、雷など偶然が多すぎる。最初に憐憫をかけた夏にも最後に福が訪れるのは素晴らしい。 |
人 | 雷の加護 | |
桓侯 | 8 | 2020/7/19 | 他所で飲んで帰り、馬から降りて小便をした。馬は傍の草を食んでいて、見ると香しい草で、馬の食べ残しの草を懐に、馬に乗ると、素晴らしい速さで駆けていった。知らない所で、桓侯(張飛)の館へ導かれ、酒宴となる。 【評】気持ちの良い中編。薬草のお陰としか言いようがない。 |
神 | 不思議な草 | |
粉蝶 | 3 | 2020/7/20 | 陽は、旅の帰り、海で暴風に会い難破寸前に空舟が来て、、それに飛び乗ったら、ある島に着く。そこで、歓待をうけ、琴の演奏を習う。そこに、美しい腰元粉蝶と遭う。2曲習ったところで、帰国したいと申し出ると、まだ、乗ってきた舟が繋いであるという。帰宅すると16年経っていた。 陽は粉蝶と結ばれるだろうか? 【評】桃源郷のバリエーション。暴風で不思議な島に付く話は類話が多くある。 |
神 | 神仙島の仙女 | |
錦瑟 | 5 | 2020/7/26 | 王は貧しい独り者だが良い男。金持ち蘭氏の婿になるが、蘭氏はすぐなくなると、嫁も親族も辛く当たる。加えて、試験には落第。死にたいといえば、嫁は縄を用意してくれる。死のうと思って、山に入る・・・・冥界に入り、そこで誠実に勤める。突然の虎の出現と、身代わりに噛まれるというのが話のピーク。清廉な主人公も聊斎志異的。 【評】長編。思いもかけない展開は聊斎志異では当たり前が、それにしてもドラマティック。 |
神 | 亡者を養う女 | |
房文淑 | 8 | 2020/7/27 | 鄧が仲間と廃寺で勉強していたが、仲間は皆里帰りで、一人でいる所に、女がお参りくる。良い女で近づくと、女は、近くの村の寺子屋の先生になれば、一緒に暮らせると知恵を授ける。一緒に暮らしているうちに子供ができる。鄧が郷里に連れて帰ろうとするが、女は子を連れて消える。 一方、鄧の妻。3年経っても夫が帰らないので、周りは再婚を促すが、独り身でいる。そこへ、子連れの女がやって来る。 【評】子供はどのように育ったのだろうか?人間の子でないのに。 |
鬼 | かりそめの妻 | |
豢蛇 ケンダ |
6 | 2020/7/27 | 山奥の禅寺で道士が大蛇を沢山飼っている話。 同じく大蛇を飼っている別の寺院の話。 |
人 | 蛇を飼う道士 | |
狂生 | 8 | 2013/7/4 | 酒飲み男と、酒飲みの新任知事が呑み友達になった。酒の男が次第に馴れ馴れしくなるので、知事は嫌気がさしてくる。ある日、男が知事に所行くと笑ったので、男大笑いする。知事は怒る。 【評】つまらぬ飲兵衛の話? |
人 | 秀才大いに笑う | |
孫必振 | 7 | 2013/7/4 | 孫必振が江を渡る時、大しけにあって、船が転覆しそうになる。神様が現れ「孫必振」と書いた札をしますので、同船の者たちは彼が神の怒りを買ったのだと彼を他の小舟に移してしまう。 【評】3行。小気味の良い一品。 |
人 | 金の鎧の神 | |
張不量 | 2 | 2013/7/4 | ある商人が、突然の大雨と雹に出合って、田んぼに逃げ込むと、天の声があって「ここは、張不量の田である、稲を傷つけてはならない」という。村でその張氏のことを聞いて、その名前の由来が分かる。 【評】4行。徳のある素封家の話。 |
人 | 張不量の田 | |
紅毛氈 | 6 | 2013/7/3 | 紅毛人との貿易は許されていたが、相手が大人数になので、港の長官は上陸を許さなかったが、絨毯一枚分だけ土地に敷かせて欲しいと言われた。許すと2人くらい入れるその絨毯は大きくなった行った。 【評】3行 |
物 | 紅毛人の毛氈 | |
負戸 | 6 | 2013/7/3 | 木こりが市から帰りに、背中の荷が重くなったので見てみると、首のない死体がぶら下がっていた。驚いて叩くと見えなくなった。村へ発し行くと村人が焚火をしていてそのことを話した。 【評】4行 |
人 | 死骸を背負った男 | |
鞫薬如 | 7 | 2013/7/4 | ある男が妻に死なれて、家を出る。数年後、道士の姿で買ってくる。一日居て去ろうとすると親戚が押し留める。散歩にかこつけて村を出ると・・・ 【評】2行 |
人 | 青州の道士 | |
盗戸 | 3 | 2013/7/4 | ある部落はほとんどが盗賊であるが、一応、帰順しているので、役所は「盗戸」として、特別扱いし、争いがあっても盗戸の肩を持った。 【評】5行の笑話。ありそうな話。 |
狐 | 盗戸 | |
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