『聊斎志異』目録
       
         第11巻


ここ数年、住んでいるマンションの建替え問題など落ち着かない生活をしていたのと、何よりも、「聊斎志異」が私の学力を大きく上回っているので、このサイトの更新が滞っていた。2017年11月、仮寓先に越してきて、やっと落ち着いた気持ちになって、最初に始めたのが、「聊斎志異」を読むこと再開したことだった。我ながらおかしかった。「聊斎志異」にはそんな魅力がある。 そして、コロナ禍、閑ができると、ここに帰ってくる。
角川
文庫
巻数
読了日 物語への手引きと評(私のコメント)   分類
11 菱角 17/12/27 母親は熱心な観音様信者で、一人息子の通学途上の祠に必ず参るよう言いつける。そこで見初めた娘菱角と結婚するが、戦禍で離れ離れになる。
【評】意志堅固な者には奇跡が起きる。
観音の手引き
けい子儀 17/12/27 白連教の残党で妖術をよくする男の話から始まるが、主人公は貧しい、性格の良い男。易者が主人公の吉運を予言しその通りになる。
【評】短い割りに人物が多く、筋も変化が大きい。
降ってきた女
陸押官 17/12/27 役人を辞めて故郷へ帰った男のところに、書生になりたいと少年がやってくる。彼の働きが良いので、役人も寵愛する。
この少年の起こす不思議な出来事。
【評】少年がなぜ現れたのかわからない。
陸という書記
陳錫九 18/01/16 陳錫九は名家の息子なので、周は娘を件組みさせたのであるが、錫九が何度も試験に落ちるし、家も振るわなくなってきたので、後悔し娘を取り戻そうとした。娘は拒否する。母親を死に会い、葬った後、遠くに行った父を訪ねに行くがその父も死んでいる。天界の父と出会いや舅、周も悪巧みなど事件は展開する。中篇の一代記。
【評】錫九やその嫁の素直な性質と対照的に、舅側周の強欲な性質が描かれ、その末路も対照的。孝行とは何よりも親を厚く弔うことにあるらしい。
孝行な息子
干去悪 18/01/17 陶が受験とために町に寄留しているとき、ある男の出会い,親しくなり同居を始める(志異ではよくある話)さらにもう一人の男が加わる。この2人は鬼(あの世の人)で、あの世も試験があるという。この世の試験とあの世の試験の話。
【評】あの世の試験の問題も具にわかり面白い。不正もまたある。したがって試験官の試験もあるのも納得する。
試験の不正事はいかにすべきか
鳳仙 18/01/19 三姉妹(狐)の八仙、水仙、鳳仙と胡、丁、劉の三人のカップルの話であるが、主は、劉が鳳仙の助けにより出世する話である。舅を中心に3カップルを含む宴席があり、それが面白い。
【評】何時も思うのだが、劉のような普通の男がどうしてこんな艶福を得るのか不思議。3姉妹居ると、リア王ではないが、大体末娘が美しく優しい。
鑑の中の女
   とう客 8   18/01/21  撃剣の好きで、ちょっと自惚れの強い男が、道に、20年も外国を旅した男に会い、異人(剣術の異才?)に出会わなかったと聞いた。旅人は、異人はどこにでもいるが、忠孝の人でないと、その術は伝授されないだろうという。そのうち事件が起きる。
【評】短編。その旅人はさわやかな異人。
 人  気が変わる
愛奴 18/01/25 塾の先生が暮れに帰省の途中、老人に会い、甥の勉強を見て欲しいと頼まれる。その家の使用人は皆女で、愛奴が彼の世話をし、親しくなる。あの世の人の家庭で、それを振り切って一度帰るのだが、1年後に再び老人に会い、愛奴とも関係が出来る。意外な結末
【評】愛奴が恩義を感じているこの家の夫人が優しい。あの世の人との付き合いが、極自然に語られている。
女魂を殺す
小梅 18/05/20 王の妻は観音信仰の真面目な人だったが病床に賦し、後を、侍女小梅に託して死ぬ。王はその小梅と結婚、一子を得、使用人も彼女に心服する。
【評】物語の展開が上手い。王がなぜこのような人生を歩むかは、冒頭のちょっとした事件。
狐の後添え
績女 18/05/20
20/06/07
ひとり暮しの婆さんの所に、若い娘が押しかけてきて、機織を手伝うようになる。織った布は高価に売れ豊かになる。婆さんの軽口から、娘の存在が知れ、最後には、家産を擲って、娘に逢おうとする青年が出てくる。青年が壁に詩をかくが、娘は縁が切れたと消える。
【評】娘は最初から仙女であることは明らかにされている。
長編になりそうな話だが、ちょっとあっけない。
艶姿をみせた仙女
張鴻斬 20/06/10 張は秀才、時の知事の横暴に、告訴するという仲間の動きに同調するが、妻(方)がその危険を察知し逃がす。張は、告訴状の下書きだけして、仲間から逃れるが、逃亡の末、行き悩んで、一軒の家にたどり着く。そこに、美女の女(舜華)がいる。三年共に暮らすが、妻のことが恋しく帰りたいという。ここから物語が二転三転する。ハッピーエンド。

【評】素直な男、賢妻、美女(狐)が醸す物語は他にも沢山あるが、これも嫌みのない物語。映画化したくなる長編。主人公と狐は前世の因縁で結ばれたというが、この狐は良く描かれている。
空を飛ぶ女
嫦娥 20/06/11 宗青年が遊学中、嫦娥を見染めるが、婚約まで至らなかった。隣にも、同様の美女?當がいて、親しくなり、将来を交わす仲となる。ある日、たまたま嫦娥に会い、彼女が金を呉れるという。宗は断るのであるが、その言い草が嫦娥をとらえる。結局、宗は二人の女性(?)を娶ることになるが、事件があって女がいなくなったり変化続く。

【評】嫦娥は伝説の仙女であるが、物語では同時代女として登場する。圧倒的に力を発揮し、結局、伝説の仙女であることが明らかにされる。張鴻斬と同様、男の誠意が験される。芸の細かい長編。実は仙女とか、実は狐となるところが面白いのである。
月仙をめとった男
チョ生 20/06/12
陳は商人の子、チョは出自は不明であるが貧しい。この二人が、これも余り豊かでない呂先生の下で勉強をするが、チョは学費が続かず、働きに出るが、陳が父の金をかすめて学費を工面する。しかし、それが父にばれて退学される。呂先生はチョを子供のようにかわいがる。試験が近づいてきたが、陳は作文が不得意、チョが代わってやろう言う。このあたりから話が変になってゆく。

【評】友情、子弟愛と気持ちの良い中編である。転生の現場に立ち会うこともできる。
友を択べば亡霊を
霍女 20/6/13 朱は金持ちだが、ケチ、好色家。ある夜、家出少女連れて帰ると美女なので家に置く。この女は贅沢三昧、朱の家計も傾き、女に節約をさせると従うが、家出する。そして、隣村の何という金持ちの家へ入っている。女を巡る争いが朱と何に起こる。
黄は貧乏書生、そこへ、女がやってきて居座る。物語はここから始まるといってよい。
【評】不思議な目に合うのは貧乏だが、大した力はないが、素直(誠実)な男が多い。女は一体何者だったか?謎が残る。
謎の女
   布商 3   20/6/14  ある商人が、たまたま、荒れはれた寺に入って、その荒廃を嘆いていると、僧が出てきて、山門を建て欲しいいというので、応じると、今度は建物を修理して欲しいと要求がエスカレートする。理不尽な話が続く。
【評】短編、神仏の化身が出てくる。
 人  信者と悪僧
彭二じょ 20/6/14 一緒に歩いてた男が、ふと見えなくなる。空の馬が付いてくるが、その袋から叫び声がきこえる。
【評】3行。聊斎志異らしい。
袋に詰まった男
跳神 20/6/14 民間療法の、シャーマン的行動が描写されている。
【評】民俗学の資料になりそう。山東、満州の2例。
跳神
鉄布衫法 20/6/14 指をそろえて切れば、牛の首も切れるという風な法術。
【評】3行。不思議な怪力の話。
沙かい子という男
美人首 20/6/14 宿の隣部屋との間が、板壁で、盃ほどの節穴が開いていて、そこから美人の頭が出てくる話。
【評】5行
美人の首
   山神  3  20/6/14  ある時山道を歩いていると、地面に敷物をしいて数人が酒盛りをしている。覗いてみると大歓迎される。途中で「山神が来た」とみんな逃げる。
【評】4行。ありそうな話。
 神  山神
庫将軍 20/6/14 取り立ててくれた、上司を裏切った武人の話。
【評】4行。
寝返りをした将軍

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