『聊斎志異』目録 第10巻 右の本は、中国人初の芥川賞作家楊逸(ヤン・イー)が「読売新聞」に 12回にわたって連載したエッセイと、そこに取り上げられた話の、 黒田真美子による原文からの翻訳からできている。 楊逸は、文化大革命化で発禁本とされていた「聊斎志異」を、 子供の頃、父親の蔵書の中で見出し、読んだ経験がある。 |
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巻 | 題 | 角川 文庫 巻数 |
読了日 | 物語への手引きと評(私のコメント) |
分類 | |
10 | 賈奉雉 カホウチ |
4 | 16/01/06 | 賈は学才があるのに試験には落ちてばかり。あるとき郎という男のアドバイスを受けることになるのだが、勧める文章は賈の軽蔑する類のものだった。落第を続け3年目また郎に出会い、また、特訓を受ける。今度は低俗な文章を無理やり覚えさせられて、試験を受けるが今度は通る。しかし自分の回答の低俗さを恥じ世を避け山に入る。この時の先導も郎が行う。仙界、帰還さらに波乱の人生が続く。 【評】大河小説に出来る内容を持つ。仙界への往還、その後の時間の流れは、ちょっと理屈に合わないが、それを平気で描いている所も面白い。主人公を導く郎という男が不気味。 |
神 | 中国のリップ・ヴァン・ウィンクル |
三生 | 2 | 16/01/07 | 某は郷試の試験官をしていた時、興は落第させられて憤死する。そして、閻魔さまに訴え出たところ、同類の亡者が大勢いて加勢してくれる。某は試験の合否は上官することだと弁解すると上官は下からの推薦がないと採用できないと罪のなすりあいをする。閻魔さまの裁きは、3世にわたる。・・・ 【評】試験の恨みは怖いが、いかにもありそうな話。閻魔様がうまく描かれている。 |
人 | 三世にわたる恨み | |
長亭 | 6 | 16/01/10 | 石はお札による呪いが好きで、ある道士から、狐に効く呪いと鬼(幽霊)に効く呪いの内、鬼に効く呪いの伝授を受ける。商売繁盛しているところに、老人が娘の病を治して欲しいと迎えにやってくる。着いてみると娘のところに若者の霊が憑いている居るらしく、それが狐であると言うと老人はそんなことはないという。夜、憑いている若者がやってきて、自分は鬼だが、この一家は全部狐だという。さらに、娘の妹長亭はなかなかの美人だが、お前のために手づかずに残しておこうという。結局、石は長亭を嫁にするのだが、岳父との間が上手く行かない・・・ 【評】人間、道士、狐、鬼の4つの世界が絡み合って、複雑な物語である。みんな感情を持っているのでうっとうしい。 |
狐 | 婿と岳父の間 | |
席方平 | 7 | 16/01/28 | 席方平の父は一本気の男だった。金持ちに羊とはいさかいがあった。羊が先に死ぬ。数年後、父が危篤の再、羊が冥土で賄賂を使って自分を苦しめる」と言ったので、席は父の潔白を訴えに冥土へ向かう。冥土ではどこも羊の賄賂が効いていて、席は痛めつけられる。それでも席は訴え続ける。・・・ 【評】あの世にも、地裁、高裁、最高裁と言ったハイラルキーがある。そこで賄賂が効くとなれば、恐ろしい。冤罪の怖さを知る。最後の判決が素晴らしい。一徹な男の重く、長い物語。 |
人 | 正義の一念 | |
素秋 | 2 | 17/12/27 | 受験のため都に出た男がそこで美しい兄弟と出会い、友情を結ぶ。前半は兄、後半は妹(素秋)をめぐる人達の話。異類(シミ)にも拘わらず友情が貫かれさわやかな話。 【評】長編、読むのに半日はかかる。 |
物 | シミの兄妹 | |
喬女 | 7 | 16/01/29 | 喬の娘は不器量で、びっこで嫁に貰い手がなかったが、穆という男が40歳で妻を失った時、その後妻となり一子をもうける。数年後穆は亡くなる。孟という秀才も一歳の子を残して妻を失い、その後妻に、喬の女を求めるが、女は二夫に見えずと断る。孟も亡くなり、物語は喬女、その子、孟の子の話となる。・・・ 【評】席方平は男が筋を通す話だが、これは女性が節操を貫く気持ちの良い話である。女心がにじみ、女の名が示されず、ただ「女」とあるのは心打つ。 |
人 | 貞女の鑑 | |
馬介甫 | 7 | 16/04/02 | 楊萬石の妻は、悪女で気に入らぬことがあると暴力を振るい、義父は召使のように扱い、側室が身ごもると堕胎させてしまうと言った有様。弟の萬錘と試験を受けに言ったとき、馬介甫という優美な男と親しくなり兄弟の付き合いが始まる。馬介甫がこの悪妻を懲らしめるのであるが、悪妻振りと、萬石の恐妻振りの話が延々と続き、惨めな結末を迎える。 【評】嫌な気持ちを起こさせる話であった。馬介甫は自ら狐仙といっているが、その介入の仕方が中途半端で、面白くない。 |
人 | 前代未聞の恐妻家 | |
雲翠仙 | 8 | 16/03/18 | 梁は妻子も財産もない小商人。あるとき村人とお寺参りしている、若い綺麗な娘が居たので、にじり寄ってゆくのだが、娘に逃げられる。しかし、帰り道、母に連れられたその娘に出会って、何とか縁を結ぶ。娘は梁がつまらぬ男であること見抜いているのだが、母の命に従い結婚し、梁は豊かになり、博打など放蕩を尽くす。終いには、妻を売る処までにいたる。売られた妻と挨拶に妻の実家へ赴くのだが、富貴な家あった。物語は急転する。 【評】聊斎志異の主人公となる男はどこか取柄があるものだが、珍しく、くだらぬ男が出てくる。その惨めな末路も描いてみせる。くだらぬ男が見た夢なのかもしれない。 |
鬼 | 道ならぬ男 | |
顔氏 | 3 | 17/12/22 | 美男子だが余り勉強ができない男と聡明な美女とが結婚して、女が男の弟に化けて、科挙に通り出世する話である。その後利益は男にも及ぶが、男は終生謙虚であった。 【評】主人公たちは、ともに親がいなかったはずだが、物語の終わりのほうで、天子が親に恩典を授けるあるのは解せない |
人 | 夫人侍御 | |
小謝 | 2 | 17/12/22 |
久々に『聊斎志異』を繙くことになった。「小謝」は、貧しいが愚直な男が、幽霊のよく出る家を借りて住むことから話は始まる。それに取り付く妙齢の美人二人(幽霊)、科挙、道士、富豪が登場して、如何にも志異らしい構成で、渇を満たしてくれた。二人の美女が主人公を誘惑する描写も面白いし、やがて、読み書きを習うのもほほえましい。女同士の張り合いもちらりと触れるのも良い。 |
鬼 | 両手に花 | |
恵芳 | 6 | 17/12/23 |
何の取柄もなく、貧しい男の所に、目も覚めるような女が、押しかけ女房としてやって来る。夢のような話である。10年過ごした後、女は天に帰る。その後の話が美しい。 【評】朴訥だけが取柄の男に舞い込む幸運なのであるが、著者は我々には、狐や幽霊さえ寄り付かないこぼしている。 |
神 | 天女のおしかけ女房 | |
蕭七 | 7 | 16/03/31 | 小役人の徐が酔って帰宅の途中、立派な家の前に老人がいたので、水を所望すると、中に案内され、歓待される。未婚の七女を側添えにもらってくれないと言われ、一方的に事が運ぶが、何しろ相手は美人。帰って部屋を掃除して待っていて欲しいといわれる。家で、その話を妻にすると、冗談に部屋を片付けていると、件の女がやってきて、かいがいしく仕える。両家の付き合いが始まり、その中でひとつ上の娘(六女)が滅法美しい上に、徐にちょっかいを出してくるのである。 【評】 男はもう少しで言い思いが出来るというところで中断されるので、未練連綿と続く。 |
狐 | 肌をなでるも宿世の縁 | |
顧生 | 7 | 16/03/21 | 顧秀才は旅先で酷い眼病を患い、10日ほど苦しんだ後ようやく痛みは取れたのだが、瞼をあわせるとなにやら景色が見える。大邸宅の門をくぐると、そこは、当家の若様の快気祝いの席であった。顧はそこに招かれ、歌舞音曲を楽しむのだが、途中、宿屋の者が呼びに来るのだが、途中舞い戻って、元の宴席の続きを楽しむのである。・・・ 【評】現実と幻視の間の行き来が見事に描かれている名品。 |
鬼 | 人生かくのごとし | |
周克昌 | 6 | 16/03/21 | 50歳を過ぎてやっと一子を得た夫婦は、その息子を溺愛した。顔立ちは良いのだが少年になっても勉強嫌い。ある日突然行くへ不明となって、1年ほど帰ってこなかった。ある日帰ってくると、これまでとは違って勉強もするし、試験も通で、嫁の来て沢山出来た。美人の嫁をもらってやるのだが、子供が出来ない。それをせっつくと、息子は逃げ出すのであった。 【評】人格が入れ替わるようなことは現実にもありそうな気がするし、元の人格が現れるのもリアリティーがある。 |
鬼 | 替玉の幽霊 | |
鄱陽神 ハヨウシン |
5 | 湖上の祠の神像の位置を正したことによって、暴風雨の災いから救われる話。4行。 | 神 | 同族の神の救助 | ||
銭流 | 4 | 15/12/30 | 召使が、庭を歩いていると、銭が川のように流れてきて、両手に握り、また、体全体で被った。起き上がってみると、銭は消えていたが、手に握った銭はあった。2行 | 人 | 銭の流れ | |
楊疤眼 ヨウハガン |
6 | 15/12/30 | 猟師が夜、山中で小人2人に出会った。小人の会話から、仲間の目の傷跡を見舞いに行くと言っている。猟師は怪しいと見て大声を上げたら、小人は消えた。その夜、猟師は狐を獲ったところ、その狐の左目の上に、傷跡があった。4行 | 人 | 小人の会話 | |
龍戯蛛 ルウギシュ |
6 | 15/12/30 | 県令の徐公は食料などを役所の2階に蓄えていたが、盗まれるの見張りをさせると大きな蜘蛛であった。徐行は、この蜘蛛に餌を与え続け、蜘蛛も宛てにするようなった。1年余り後、徐行が書類を読んでいるところに蜘蛛が現れたので、公は餌が欲しいのかと思ったが、傍に小さな蛇がいた。異変が起きる。 【評】この知事は人民愛され、人民が金を集め棺を造り、その葬儀には哭声が野に満ちた。という結びが光る。 |
物 | 竜と蜘蛛 | |
役鬼 エキキ |
7 | 15/12/30 | 楊という医者は医術のほかに、鬼を使役で、身の回りの世話は皆鬼を使った。ある夜、友人と帰る途中、大男出会い、誰かと聴くと「ご主人を迎えに来たという」それなら先払いをしろというと2人の鬼は先払いをした。3行 | 鬼 | 亡者の先払い | |
三朝元老 | 6 | 15/12/30 | 2つのエピソード。明の宰相であった人が定年後、廟を建てたら、扁額と聯が何者かによって、掲げられた。二つ目は、軍の最高司令官のような人が戦没者の供養をしたとき、勝手の部下が文章を呈上した。・・・ 宰相も司令官も非難されているのであった。 【評】文章が難しい。 |
人 | 三度目の宰相 | |
夜明 ヤメイ |
4 | 15/12/30 | 南海を航行中、真夜中に突然明るくなり、山のような怪物が半身を乗り出し、やがて消える。福建でも見られたという。3行 | 人 | 夜明けを作る怪物 | |
鳥語 | 8 | 15/12/30 | 鳥の言葉を解する道士がいて、その言葉が良く当たる。そこで県令がその道士を抱えるのだが、県令の罷免まで言い当てる。 【評】鳥語には興味があるので、この巻の最初に読んだ。 |
物 | 鳥の言葉がわかる道士 | |
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