『聊斎志異』目録

         第1巻






「物語の手引き」は話の要約ではありません。一編一編がいわばミステリーですから、ネタをばらさないように書いています。
どんな話か思い出す手がかりだけで、本文は皆面白いものばかりです。
角川文庫
巻数
読了日 物語への手引きと評(私のコメント)   分類 中国古典文学全集本の見出し
考城隍
コウジョウコウ
08/12/30 病気の主人公の所に、城から、試験を受けるようにとお迎えが来る。着いて見ると、既にもう一人来ていて、ともに試験を受ける。首尾よく合格して、河南の城隍に欠員があるのでそこに当てるという。主人公はおかしいことに気づき、帝王のような人に、老母の面倒を見なければならないので、存命中はこらえてくれと頼む。・・・・

【評】科挙に落第した蒲松齢の本の巻頭に試験の話が出るのは面白い。
閻魔様も話せば分る人らしい。
天馬訳は原文の異史曰とある著者の短評は説教臭いのですべてカットしている。(すべての編を通じて)
考城神になる試験
瞳人語
ドイジンゴ
08/12/30 プレーボーイの主人公が、ある日、里帰りの若く美しい夫人の車を追っかけていると、腰元に土を投げられ、失明する。1年ほど経ったある日、目の下で小さな声がする。両目に小さな人が住んで居て、鼻から出入りする。・・・・

【評】奇想天外、落語のネタにも使えそう。
終わりもほのぼのする名品
瞳人の会話
画壁
ガヘキ
08/12/30 孟さんと朱さんとが連れ立って旅をしている途中、あるお寺に立ち寄った。そこに見事の壁画があって、人物は生きているように描かれていた。天女が花を撒いており、特にお下げの少女が可愛らしかった。朱さんは見とれているうちに絵の中に吸い込まれてしまった。その少女の導きで奥に這いいていくうちに、その子と出来てしまう。艶っぽさとスリルのある話。
孟さんが、朱さんのいないことに気づき、坊さんに呼んで貰う。・・・・・

【評】壁画が前後で変化しているのが秀逸。
どうしてこんなことが起きるかと坊さんに聞くと「幻は人から生じるもので、老僧には解らん」と笑って答える。
画壁の中の少女
種梨
シュリ
08/12/31 田舎の人が車に一杯梨を持って、街で売っている。中々の香りの良いもので値段も上がっていく。みすぼらしい道士が前に来て、梨を1つ恵んでくれとと言う。田舎の人は追っ払おうとするが、群集の中の一人が、一つ買い与えると食べたあと種をまく。瞬く内に、樹となり、鈴なりに実をつける。・・・・

【評】梨売りの結末がちょっと可哀想。
魔法の梨の木
労山道士
ロウサンドウシ
09/01/01
11/03/05
20/8/16
王さんは若いときから道術に興味があり、労山に仙人が多いと聞いて出かけて行って、ある仙人の弟子になる。しかし、来る日も来る日も薪取りで嫌気が差し、国へ帰ろうとした所、不思議な宴会があり思い止まる。又使役の日々。今度は本当に去ろうと思い、小さな術でよいからと言って教えてもらったのが、壁抜けの術。国に帰えり妻に話すと・・・

【評】宴席で月から嫦娥を呼び寄せる描写が面白い。それにしても、男は妻の前では良い格好が出来ぬものらしい。
 追記1
安岡章太郎『私説聊斎志異』の終わりの方にこの篇を紹介して、現実に戻る著者の姿を上手く表している。さすがだと思った。
 追記2
子供用の白話『聊斎故事』の巻頭に出ている。
壁抜けの術
長清僧
チョウセイソウ
09/01/01 80歳の高僧がつまずいてぽっくり亡くなったが、魂の方は気づかず、河南の方へ彷徨った。河南では10数名の供を連れ、鷹狩をしていた公子が落馬して、死んだ。その体に高僧の魂が入ったところで、公子は息を吹き返し、家に運ばれた。どうも様子がおかしいと本人も周りの人も思う。・・・・・

【評】体と魂のどちらが本人なのかが良く分かる。
老僧の身がわり
狐嫁女
コカジョ
09/01/01 胆の太い男の話である。あるところに、妖怪が出るということで廃屋となっている立派な屋敷があった。若者達が肝試しに、ここで一夜過ごしたものに一杯奢ろうという話となった。主人公が名乗りを上げる。夜になって横になっていると、物音がして、やがて婚儀が始るのだが、主人公はこれに加えて貰う。大層華やかな宴会で、証拠にと金の盃をくすねて持って帰る。主人公は出世して・・・と話はひと捻りしてある。

【評】主人公が中々の快男子で、読んでいて気持ちが良い。描写も細やか。
昔、宴席で、そこの盃を持ち帰って得意になっているのをよく見聞きした。
狐の嫁入り
嬌娜
キョウナ
09/01/03 知事をしている友人の招きで訪ねていったら、その知事は亡くなっていて、路頭に迷う。寺の書記になって暮らすが、ある日、近くのお屋敷の前を通ると、可愛い少年が挨拶し、屋敷に招き入れられ、その少年の家庭教師とし住み込むことになる。胸に瘤ができる奇病になるなど話が展開するが、香奴、嬌娜、松娘という美女がでてきて、飽きさせない。

【評】原文は5頁であるが、複雑な構成を持っていて日本の作家なら100頁ぐらいは書くだろう。やはり最後の1行が光る。
美貌の女医
   妖術
ヨウジュツ
 3  09/01/05  豪傑な男の話。連れの僕(しもべ)が病気になったので、易者に見てもらうと「僕の方は大丈夫だが、お前は3日後の死ぬ」と言う。さらに「いくらか金を出せば、救う方法がある」と言ったが、男は断った。さて3日目が来た。・・・・・

【評】易者に見てもらっていながら、易者の意見に従わないのも少し変だが、その結果、妖怪と死闘が繰りひろげれれることになる。
  妖術 
葉生
ヨウセイ
 09/01/06 葉生は学問、文才はあるのだが、試験にはいつも落第していた。知事が彼の文を読んで、その才能を愛し、二人の交際が続いた。葉生は試験で凄く出来たが、発表を見るとまたしても落第して、寝込んでしまう。知事は上官に逆らって、首になり、葉生を連れて国へ帰ろうとするのだが、病気が重い。・・・知事の息子は葉生の指導のお陰で試験に合格して出世する。 その息子の赴任先が葉生の国に近いこともあって、葉生は故郷へ帰ることになる。

【評】読者は途中で、著者の企みに気づくき、果たしてそうであったという喜びを味わう。主人公ー知事ーその息子の付き合いが細やかでしんみりさせられる。天馬訳が省略した異史曰くの所で、「魂は自分を知ってくれる者に従う」と言っているが、私もそう思う。婧女離魂型。
妄執
成仙
セイザン
09/01/08 周と成は親友で、年上で金持ちの周の家に、貧しい成はいつも入り浸りで、周が妻を持ったら、その人を嫂さんと呼ぶほどだった。しかし、この人は産後の肥立ちが悪く死に、周は後添えを貰う。このあたりから、物語が急転し、周の不幸がつ続く。成の出番となり、周の窮地を救うことになるのだか、物語がさらに大きく展開する。読み応えのある長編である。

【評】管鮑の交に近い話で、友情物語は何時読んでも気持ちが良い。
仙人
王成
オウセイ
09/01/08 王成は旧家の子だが、怠け者で、妻と極貧の生活を送っている。ある日、釵(かんざし)を拾い、見ると祖父さん持ち物である印が付いている。そこに女が現れて、そのかんざしについてのやり取りをしているうちに、女は狐で祖父さんの妾だったと言う。この狐の手引きで、商売を始めようとするのだが、大雨にあったり、売り上げ金を取られたり、不運続きであった。・・・・

【評】異史曰「富は勤勉から得られるものだが、怠けものが富を売るとは珍しい・・・」主人公は怠け者だが、人柄が良い。数(運命)と割り切る所が爽やかである。このために幸せを掴んだのだと私は思う。この頃、闘鶏ではなく、闘鶉というものがあったことがわかる。
鶉あわせ
青鳳 09/01/08
11/02/04
豪胆な男と狐一族との交流を描いた話。例の如く、廃屋のような御屋敷の中で、宴会が開かれている。主人公は招かれざる客として加わるが、もともとこの屋敷は叔父さんの物で、大きな顔が出来るのである。その宴席の中の「青鳳」が良い女で、こんな女を妻にしたいと思うのである。・・・・

【評】この物語に出てくる美女「青鳳」はやはり狐なのだが、何とも可愛い。主人公とともにさわやかさが残る。
この物語を愛読していた豪傑の男が第8巻「狐夢」に見える。よく似た話。
青鳳
画皮
ガヒ
09/01/08
11/2/11
朝早く若い美人に出会い、家出の女とあって、家にかくまう。道士が主人公の顔色から、もののけが着いていると警告するが、主人公は聞く耳を持たない。その後、女が鬼であることをを発見して、道士に助けを求める。だが、・・・やがて主人公の心臓は噛み取られる。・・・・後半は妻が活躍する物語でもある。怖い壮絶なお話。道士以外に狂人が一役買う。

【評】色に溺れ、人の忠告が聞けない怖さ。鬼が人間の皮を着ている。その正体を見てしまった男の恐怖。妻の愛情が凄い。
稲田孝『聊斎志異』も取り上げている。
人間の皮
賈児
カジ
09/01/10 父親が商売で旅に出ている間、母親が狐に取り付かれ、色狂となってしまう。左官屋の真似をして、窓を塞いでしまったり、その狂い方は尋常ではない。父親が帰ってきて、父子ともどもその対策あたるが、子の果たした役割は大きい。

【評】自分の母親がこんな目にあったらと思うとぞっとする。主人公ともいえる子供は大変よく出来た子で、後に出世するも不思議ではない。文章が難しかった。
狐を退治した少年
董生
トウセイ
09/01/11 董生が寝ようとしているとことに、友人から、飲み会の誘いがかかる。行って見ると、仲間の一人に脈で吉凶や寿命を占うのがいて、皆のを見るののだが、董生と王生九の脈に問題があり、自重せよとのことだった。帰って床に入ると、暖かい。既に美女が這いいている。勿論、美女は狐である。・・・・一方、王生九の書斎ににも美女が現れる。・・・・

【評】太素脈という、脈にによって、その人の吉凶や寿命を占うのは唐時代からあるようである。
狐に魅入られた男たち
陸判
リクハン
09/01/11 朱は、豪放なのだが、学問は出来がよくない。あるとき、勉強仲間の会で、寺の怖い閻魔の像を背負って持って来れば、一杯飲まそうと言うので、朱はそれを負って帰る。この閻魔ののようなのは陸という。この陸と朱の物語である。先ず、陸は朱の内臓を取り替えて、出来のいい男に朱を換え、朱は試験に合格する。そこで朱は陸に、自分の女房は、下半身は良いのだが、顔がまずいので、これを替えて欲しいと頼む。・・・・

【評】異史曰くで、接木のように首をすげ替えることの不思議を述べているが、昨今の移植技術では当たり前のようになってきた。首をすげ替えると境目は一本の赤い線となり、上下色が違うそうな。
首のすえかえ
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