アリスとチェシャ猫の対話(63)

234 猫: <今後は、そのような角度から見た話を続けたいと思いますが、如何でしょうか>というのは、霊的世界はいろいろな角度から扱うことができるという意味です。

霊的世界は「一即多」」の世界です。そうであれば、「一」として扱うのも「多」として扱うのも、「非一」あるいは「非多」として扱うのも、どれが正しくどれが間違いということはありません。そのようなさまざまな角度から接近しながら、最終的には言葉や論理を離れた世界へと離陸することが私たちの話し合いの目的なのです。とりあえず、暫くご希望に添って、「一」という立場から「不如意解消」の問題に向かって進んで見ましょう。

 最初に質問を一つします。いま「幻想を見ている一つの霊と地上に住んでいる60億人の人間」という構図ができています。人間はみんな一つの霊が見ている幻想であるということになっています。一応アリスさんもこの構図を了承されたものと考えていますが、ところで、アリスさんは自分をこの構図のどこに当てはめますか。それが質問です。

 アリスさんは、自分を幻想である人間のひとりだと思いますか。それならアリスさんは本当は存在していないのです。それとも、幻想を見ている霊だと思いますか。もしそうなら、アリスさんは全世界に対して、責任を負うことになります。なぜなら、アリスさんが見ている世界はすべてアリスさんが創造したものだからです。

 アリスさんはどちらの道を選ばれますか。

 

235アリス: 私は、これは選択の問題ではないと思うのですが・・・一という立場からは私は後者ですが、キャラクター(幻想)としてのアリスでもあります。でなければ猫さんと対話が出来ないのではないでしょうか?「責任」というこれまでなかった言葉が出てきましたが、私が生み出したものと言う意味なら肯定いたします。

 

236 猫: 私たちはいま、たいへん難しいところに差し掛かっています。これから述べる私の言葉が挑発的に聞こえることがあるかも知れませんが、人間の言葉の直線的な論理を超えるためです。我慢して聞いてください。

 アリスさんは、いま、自分が幻想のアリスであると同時に、それを生み出した一なる霊である、と思っておられるようですね。

 では、もしアリスさんが一なる霊であるなら、どうして同時にチェシャー猫でないのでしょうか。チェシャー猫も一なる霊によって生み出されたのですから。

 それとも、アリスさんは、自分がアリスであると同時に、それと対話している猫でもあると思っておられるでしょうか。

 断わっておきますが、これはどれかの考え方が正しくて、どれかが間違っているという意味ではありません。アリスさんが何処まで意識を拡大できるかという問題なのです。そして、それによってこれからの話の進め方が変ってくるので、お伺いしているのです。

 

237 アリス: チェシャー猫さんも一なる霊によって生み出されたものだと思います。生み出されたという表現がいいのか分りませんが、一なる霊の姿だと思います。

 

238 猫: たぶん私の質問の主旨がおわかりにならなかったと思います。実は世界がどんな構造になっていると考えるかは、あまりたいした問題ではないのです。それよりも、自分は何者だと考えるか、ということが問題なのです。なぜなら、私たちは自分が定義している自分を体験するからです。

 私の質問の主旨を明確にするために、表を作ります。「アリス」「チェシャー猫」「一なる霊」の三つについて、アリスさんが「自分である」と思うものに丸をつけてください。答えは7通りあります。アリスさんが自分だと思うのはどれでしょうか。

     

番号

アリス

チェシャー猫

一なる霊

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリスさんの答が1番なら普通ですね。アリスはアリス、猫は猫、自分は自分、他人は他人・・・・これが普通の考え方です。けれども、アリスさんは、対話235で、<一という立場からは私は後者(霊)ですが、キャラクター(幻想)としてのアリスでもあります>とお答えになりました。つまり、アリスさんの答えは5番だったのです。私はそのように、受け取ったのですが間違いでしょうか。

 それで、前回私がお尋ねしたのは「もしアリスさんが一なる霊であるなら、アリスさんは同時にチェシャー猫でもあるはずではないでしょうか。本当に、そうお考えになりますか」ということです。つまり、私から見れば、5番という答えは中途半端です。アリスさんの答えは7番ではないのでしょうか、というのが、私の質問の主旨だったのです。どうお答えになりますか。

 

239アリス: <アリスさんの答えは5番だったのです。私はそのように、受け取ったのですが間違いでしょうか。>私は5番を意図しておりません。その時点で猫さんはどうかのご質問がなかったのでお答えに含めなかっただけです。

私の現時点の考えは231ではっきりさせたと思うのですが、234で<自分を幻想である人間のひとりだと思いますか。それならアリスさんは本当は存在していないのです。それとも、幻想を見ている霊だと思いますか。>というご質問があり、私は235とお答えし、更に猫さんから<自分がアリスであると同時に、それと対話している猫でもあると思っておられるでしょうか。>というご質問に対して、237とお答えしました。この答えで、<たぶん私の質問の主旨がおわかりにならなかったと思います。>と仰るなら、私は戸惑います。私のこれまでの表現が不十分なのかもしれません。231で7番の態度を表明した積りですが・・・・これが今の私にぴったりの表現なんですが・・・

また、折角表を作っていただいたのですから、0番か8番に3者の丸の入らないも行が欲しいと思います。私の認識はそれも含みます。(さらに付け加えるなら、235で触れましたように、私は3者の関係はand orの選択の問題ではないと思います。)

 

240 猫: アリスさんのお返事に従って、これまでの経過を読み直してみました。確かに私の方がアリスさんのお返事の主旨を読み損ねていたようです。

 ここで、アリスさんのお考えを再確認しておきたいと思います。アリスさんは表で言えば7番、つまり「自分は一なる霊であり、そしてそれが生み出したすべての存在でもある」と考えておられます。これでよろしいでしょうか。これが確認できれば、後の話はぐっと楽になります。

 つぎに、アリスさんのお返事に関連して、二つ質問があります。

 (1) アリスさんは、表に全く丸のない行を入れろとおっしゃいました。確かに、表としてはそれでないと完結しないのはわかりますが、その行は果たして何を意味しているのでしょうか。<私の認識はそれも含みます>というお言葉の意味を知りたいと思います。

 (2)<3者の関係はand orの選択の問題ではないと思います>とおっしゃる意味をもう少し説明してください。

アリスさんのこの二つのお言葉は、非常に重大な内容を含んでいるかもしれないと思うので、お伺いしたいと思います。

 

241 アリス:猫さんのご質問を繰り返すことになりますが、その方が誤解が少なくて済むと思いますのでお許しください。

<アリスさんは表で言えば7番、つまり「自分は一なる霊であり、そしてそれが生み出したすべての存在でもある」と考えておられます。これでよろしいでしょうか。>

   OKです。

< アリスさんは、表に全く丸のない行を入れろとおっしゃいました。確かに、表としてはそれでないと完結しないのはわかりますが、その行は果たして何を意味しているのでしょうか。<私の認識はそれも含みます>というお言葉の意味を知りたいと思います。>

 231の式で示したように、一なるものは無限大(∞)でもあり、空(0)でもあろうと思います。∞も0も十分わかっている訳ではありませんが、取り合えず0もないと落ち着きません。

 <<3者の関係はの選択の問題ではないと思います>とおっしゃる意味をもう少し説明してください。>

 一なる霊と猫さんやアリスはカテゴリーが違います。存在のレベルが異なっていると言っていいのかもしれません。猫さんの神の細胞というイメージとも異なります。どう表現していいのか分かりませんが、andとかorで結びつく関係にはないと思います。

 

242 猫: お話の趣旨はわかりました。これについては、いろいろ話題にする余地はありますが、暫くお預けにして、出発点に戻りましょう。「一」なる立場から出発して「不如意解消」の問題に進んで行きます。

 アリスさんは、いま、ご自分が一なる霊であることを認め、世界に存在するすべては「一なる霊」即ち「自分」が作り出したものであり、「自分がそれらのすべてである」ことを認めておられます。そうであれば、「不如意解消」の問題は、アリスさん自身の決心だけの問題ということになります。

一なる霊は何によって世界を創造するのでしょうか。私はそれは「意志」だと思います。聖書の冒頭に、神が「光あれ」と言ったら光が存在するようになった、という記事が出てくるのをご存知でしょう。不如意を作り出すのも、解消するのも、一なる霊の意志にかかっているのです。そして、一なる霊はアリスさんでもあります。アリスさんが、「不如意を解消する」とか「不如意は存在しない」と断固として宣言し、アリスさんの全意識をフルに使ってその意志を堅持すれば、不如意は消えてなくなります。これが、私が「責任」という言葉を使った理由です。自分が一なる霊であることを認めるならば、全世界に対してそれをどのような世界にするかという責任を負うのです。病気だけではありません。戦争でも、公害でも、不景気でも、自然災害でもすべて同じです。

たぶん、アリスさんは今回の主旨には賛同されるのではないかと思います。結局、アリスさんが見ている世界を変えるためには、アリスさんが変るしかないということになります。話は、どこかへループして戻ったようですね。そして、そのための方法は、となるのでしょうか。

 

243アリス:<そのための方法は、となるのでしょうか。>

方法について、どうかお話をお進めください。

「不如意解消」の問題に集中したいと思います。

(独白:私は今、世界創造の問題に直面している。「一」の世界からどのように踏み出すか?猫さんの仰る「神の意志」であるかどうか分らない。創世記にはそう書いてある。しかし、ヨハネ福音書には、はじめにロゴスがあった、とある。何故、もろもろのものが立ち現れたのか?の追求には時間がかかる。解るかどうかも分らない。

お釈迦さまが仰った毒矢の譬えのように、先ず、毒矢を抜くことだ。射られた人の家柄や人物を知り、毒矢の出所、性質を調べてから、抜いていたのでは、間に合わない。)

 次へ