アイルランドの細道  


本気にアイルランド徒歩旅行を考えている人に

もし、あなたが私の文章を読んで、アイルランドで徒歩旅行をしようという気になられたとしたら、そのあなたにお伝えしたいことがあります。

まず、私の1ヶ月の徒歩旅行、ダブリンの滞在を含めると40日のアイルランド体験は、極めて限られたものだということです。これから計画を立てるあなたには、無限の選択肢があります。

私の場合は、デリーからコークへとアイルランド縦断と心に決めていたので、ほぼ一直線に、結果的に国道沿いに歩くことの多い旅になりました。「アイルランドの細道」と銘打ちながら、大半が広い道がでした。日程に余裕があれば、ジグザグに小道を選んで歩けたかもしれません。国道は広く、車が通りますが、幅は広いので、日本の高速道路のイメージとは少し異なります。歩くに十分な上、何かがあっても、通りがかりの車に助けを求められるという安心感もあります。もし、今度アイルランドへ行くことがあったら、小道と国道を適当にアレンジして歩くことでしょう。
私は名所旧跡を見たいという気持ちは余りなく、アイルランドのごく普通の風物を楽しみ、それに満足しましたが、もし、名所旧跡がお好きなら、アイルランドにはそのような観光スポットは沢山ありますので、出発前によく調べておくのが良いと思います。風光明媚な景勝地を歩くのもいいかもしれません。どのような場所があるかもインターネットでも情報を得ることが出来ます。ハイキングコールのようなルートがいたるところにあり、細い土の道を、周りの景観を楽しみながら歩くのはどんなにか楽しいことだろうと思います。そのような場合はどこか一箇所を基点として、ループして歩くことになります。アイルランドはバスが発達していて、そのような基点へは容易に行けます。

宿はB&Bをお勧めします。ホテルはある意味で世界共通で、意外性がありませんが、B&Bは普通の民家に泊めてもらうのですから、一軒一軒個性があります。子供が巣立った後の空き部屋を提供しているのが多いようです。家族経営で、表に立つのは奥さん、日本の旅館の女将のようなものです。政府観光局登録のシャムロック(グローバー)印のB&Bはとても立派で、何処も満足しました。外国人がその国の人と接するのは宿か酒場くらいですが、その意味で、B&Bは最適です。
現地の観光案内所で予約するのもいいし、泊まったB&Bの人に頼んでも嫌がらずに探してくれます。アイルランド観光局公認のB&B便覧とも言うべきBed & Breakfast & Self Catering Guide が5ユーロで観光案内所で手に入りますが、大変便利なものです。自分で電話をかけて予約できる人はこれを頼りに旅が出来ます。
ホテルも数回泊まりましたが、皆満足しました。中にはB&Bより安いところもありましたが、大半は倍近くかかります。

テントを担いで、徒歩旅行を計画しておられる方は、おそらく、体力とかなりの経験のある方なので、私のアドバイスなど必要ないも知れませんが、予めキャンプ地の確認が必要だと思います。
私も、宿が見つからないときに備えて、簡易テントと最小限自炊用具を持って行きましたが、使いませんでした。
まず、出発前に原則として、その日泊まる宿を予約していたのでその必要がなかったのですが、私が歩いた範囲では、野営するに適した所はありませんでした。牧草地は石垣に囲われていて、そこで、野営するのは憚れる感じです。

現在、徒歩旅行は、巡礼路を除いて、稀で、現に、私はアイルランドでは徒歩の旅行者には一人も会いませんでした。下手をすると浮浪者に間違えられる危惧もあります。お遍路さんの白装束ではありませんが、旅人らしい身なりを大切です。私は立派な帽子を被り、立派な靴を履きました。普通の村を徒歩で旅行すると、地元の人の好奇心を引き、このことが逆に旅行者の気を引き締めます。珍しがられると言えば、馬や牛もいかにも珍しいという顔で見てくれます。

1日どれだけ歩くかですが、私は20キロを基準としましたし、それで丁度良かったと思います。若い人なら、40キロも可能かもしれませんが、そんなに早く一度に長く歩いても、旅の味わいがありません。時々、休日も必要です。

費用のことですが、B&Bに40ユーロ、食事酒代など40ユーロ、余裕をみて1日100ユーロが標準的な予算だと思います。現金で払うこと多く、町の銀行のATMで現金をこまめに用意することが必要です。

言葉は英語が話せれば問題ありません。西海岸の方はゲール語を話す地方もありますが、何処でも英語は通じると考えて良いと思われます。問題はその英語が上手く操れないことにあるのですが、それも、カタコトでも何とか埒が開くものです。どれだけ深く通じ合えるか、その人の感性によりますが、自分が聾唖者だとしても、通ずることが出来ます。

旅は道連れと言われるように、気の合った同士の旅行は楽しいもので、まず、安全度が倍になります。美しい景色や美味しい物をで出合った時の感激を共にでき、楽しみも倍になります。その代わり、自由は半減します。2人、3人連れで歩いていると、地元の人に警戒され、話しかけられるチャンスも少なくなるかもしれません。一長一短ですが、夫婦連れは両者の良さを兼ねるかも知れません。
私は一人旅を選びました。判断やリスクを一人背負いながら歩くのは緊張感があり、天上天下唯我独尊の自由を楽しめます。

以上のようなことをあなたにお伝えしたかったのです。
旅の準備 ー 役立ちそうな情報
 も重複がありかもしれませんが、参考にしてください。

旅は、出発前にあなたが頭に描いた通りには行かず、それがまた旅の醍醐味です。勇気をもって乗り切っていくのはあなたです。

あなたの旅が豊かで、味わい深いものになるなりますように!
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