アイルランドの細道 アイルランド徒歩旅行への誘い

アイルランド徒歩旅行への誘い

もし、旅心に促されて、自由な、心豊かな旅をしたいと思っておられるなら、アイルランドの徒歩旅行を勧めします。
お勧めする理由はいくつもあります。

美しい国 アイルランド

まず、アイルランドが美しい国だからです。世界には美しい国はいくらでもあり、日本もその一つですが、アイルランドの美しさは、とても自然で、どこか懐かしく、既視感を味わいます。石垣で囲われた牧草地の中に、白い羊の群れが草を食んでおり、その向こうの丘の上にクリーム色の農家があったりして、それを見ると故郷に帰った思いがするのが不思議です。牧草の緑は目も覚めるような鮮やかなエメラルド・グリーンで、この国がエメラルドの島と呼ばれるのが納得できます。「ダニー・ボーイ」などで知られるアイルランド民謡も、このような美しいアイルランドの地から生まれたのです。アイルランドにも奇景もあり、ケルトの文化遺産もありますが、まず心惹くのは、アイルランドの何処でも見られる普通の風景で、こんなに緑が美しく、心安らぐ国は少ないのではないでしょうか。(季節により違うかもしれない)

美味しい国 アイルランド

食べ物は旅行者の関心事ですが、アイルランドの食べ物は、これも懐かしい味がします。スープは味噌汁を少し濃いしたような、お袋の味がするのです。B&Bで出されるアイリッシュ・ブレイクファーストは質、量とも申し分なく、暖められた皿で出される料理は画一的と言えなくもありませんが、飽きが来ません。魚介類の豊富なこの国の料理は、何時も量が多すぎますが、日本人の口に合い、アイルランドの料理には裏切られることはありません。いたるところあるバブでいつでもギネスが飲めるのも酒好きには嬉しい。
小さな町にも中華料理屋があって、入った所は皆美味しかった。

心の温かいアイルランド

しかし、風景、料理より、何よりも私の心を捉えるのはアイルランド人の心の温かさです。人を思いやる心、その心の温度は、日本人より高いと思います。日本人もかってはそうでしたが、しばらく忘れていたような暖かさがアイルランドの人にはあります。その心の温かさを味わうためにもアイルランドを旅して欲しいのです。人間らしいというより、人間くさいという方は当たっています。この感じは直に触れないと分からないものです。、路上で見知らぬ人に道を聞いたり、観光案内所でのちょっとした対応でも、私の心を読んで心で答えてくれるように思うのです。時には言葉より先に体が動いている感じもします。
カタコトの英語で旅ができるのもアイルランドを選ぶ大きな理由です。

なぜ、徒歩旅行なのか?
アイルランドには立派な鉄道もあり、バスもよく発達していて、これらの乗り物で十分に旅が出来ます。さらに、アイルランドはもう車社会で、道もガソリンスタンドも整備されていますから、レンターカーで旅行しても快適だと思います。行動範囲が広がり、旅行案内所も各地にあり、景勝地や遺跡など、気ままに見て回れることでしょう。自転車で回るというのも良いアイデアだと思います。
しかし、私が徒歩旅行をお勧めするのは、アイルランドの素晴らしさを味わうのに歩くのが一番と思うからです。
360度見渡せれる空に、雲が動いて、その雲が近づくと雨を降らし、程なく晴れる。その間の移り行く景色は見事なもので、一箇所にビデオカメラを置いてその変化を収めると面白いだろうと何度も思いました。そのような中を、一歩一歩、心に納めて歩くのは楽しいものです。
たとえば、スライゴーにベン・ベルベンという台形の美しい山がありますが、それが見え始めてから、一日以上その山に向かって、何千回も心のシャッターを押しながら、歩くことになります。逆に、一度だけタクシーに乗ったことがありますが、車の中から見る景色は流れてしまって、心に残らない思いがしました。

何より大切のは、徒歩旅行の方が、地元の人に接するチャンスが多いことです。
観光客の行かない、普通の道を歩き、村のパフやレストランで普通の人と出会うのですから、アイルランドの人と接する度合いが違うのです。歩き草臥れてたところ、遠くに教会の尖塔が見え、もうすぐ村か町ががあるのだと、元気を出して、歩みを進めます。一日の行程を終え、B&Bに着くと、女主人が優しく迎えてくれます。それはまるで孫を迎えるおばあさんのように、また、女神のように見えます。
こんな形でアイルランドを旅して欲しいというのが私の願いです。

私の経験はわずかなものですが、それがどんなものだったかは、「アイルランドの細道」を読んでいただければ分かります。

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