アイルランドの細道

ダブリン5

何度も目が覚め、何度も悪夢を見た。五臓の疲れが出始めているかもしれない。故郷への船の出帆を待つ旅人の気持ちが分かる。
毎日移動していた時に比べて、一箇所に停滞している方が精神のバランスを取るのが難しい。アイルランド縦走という目標は達成してしまい、言わば消化試合をしているようなものである。望みもしないのに与えられた休暇でもある。
午前中はホテル。
午後は美術館で過ごすことにした。二回目なので少し馴染みが出来たとは言え、この美術館は迷路である。1室から50何室あるのをゆっくりと見て回った。ジョン・B・イエイツ、これはW・B・イエイツのお父さんであるが、彼の息子(W・B・イエイツ)の肖像や他の肖像もあって、なかなかの腕前であった。紛らわしいが、ジャック・B・イエイツという画家がいて、アイルランドを代表する異色画家で、この人のために一室設けられている。ガラヴァジオの「キリストの逮捕」という絵はこの美術館の目玉の一つのようだ。いつも思うのは油絵の堅牢さである。数百年の歳月を経てなお生き生きしている。2時間ほど見ると足が棒のようになったので、館内のレストランでコーヒーを取り、足を休めた。美術館の中のレストランは世界何処でも気持ちの安らぐ場所である。街は観光客ばかり、こんなに観光客が多い街は始めてである。地図か土産物屋の袋を持っているのでそれと分かる。

夕方、ホテルで食事をし、時間があるので「アイルランドでのインターネット」を書いた。一人旅の者にとって、メールの受発信は大きな心の支えなので、インターネットに繋がるかどうかは大問題なのである。この世と交信できなったら死んだも同様とは前にも書いた。書きたいことは一杯あるのだが、細かく書く気力がなった。

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