アイルランドの細道

スライゴー ― バレーソダレ

今日は宿の取れ具合から、スライゴーから12キロの所に泊まると思っていて甘く見ていた。結局6時間近く歩いた。

今日からアイリッシュ・ブレックファーストは全部食べないことして、べーコンを残した。
スライゴーの宿を出たのが9時40分。昨日のインターネット・カフェの開店を待った。5分遅れだが、昨日の金髪の女性が現れてほっとした。まったく無口の人だが有能なのである。早速LANケーブルで繋いでもらい、メールのチェックなどしたら、小1時間があっという間に過ぎ、この町を出たのは11時を回っていた。街道のN4に出るのに、最初に聞いたおばさんと少し離れた所で聞いた娘さんとは全く反対の方向だった。娘さんの指示に従った。N4は広く、うれしいことには、茶色の舗装のサイクリング・ロードが付いて、そこは今日は誰も走っていないので歩きやすく、よく晴れていて、しかも追い風で調子がいい。この追い風のありがたさは徒歩で旅をしないと分からないだろう。やがてサイクリング・ロードは折れて、別の道に入ってしまった。途中、路傍で休んでいると、大きなトラックが止まって、武骨な運転手が乗らないかと誘ってくれた。断わりの理由を言うと直ぐ理解してくれた。

12時過ぎ、道端でリンゴとチョコレートの昼飯を取った。1時20分、N4とN59との分岐に着く。標識は地図と全く逆なので当惑したが、しばらく行って分かったのだが、N59はH4の下をくぐって、本来の方向に行く。13時40分、目的Ballisadoreに着く。街と呼ぶには小さい。適当なパブは見あたらないので、中華レストランでスープとビール(青島ビール)を頼んで、中国人の娘さんに、目的のB&Bのことを聞くが分からない。向かいのスーパーで訊ねてみなさいと言う。私は郵便局なら大丈夫だろうと思ってそこで聞いたら、これも知らない。一体郵便物をどう届けるのだろう?電話番号を言うと、電話を掛けてくれたがB&Bは応答がないと言う。今度は向かいの雑貨屋で聞けばと言う。雑貨屋の親父は地元の生き字引なのであろう、即座にそれば3マイル先にあると教えてくれた。その店で、ジェムソンのポケット瓶と少しの食料を仕入れて、西へ向かって歩き出したが、その距離の長いこと。本来の道筋から(実はそんなものはないのだが)1時間半以上も脇道に宿を取ったスライゴーの案内所のアヴィーさんを恨んだが、これも神の思し召しと黙々と歩いた。途中、地元のおじさんに道を聞いたら、英語がさっばり聞き取れない。ゲール語だったのかもしれない。ただ救いはこのあたりの景色は趣があって見飽きない。4時25分、歩き草臥れたころ、宿のサインSeashoreの看板が見えた。そこから細い土の道を600メートルほど海岸の方に入る。周りには家がなく、荒涼としていて、萱のような植物の向こうに光った海が見え、息を呑むほど静謐な雰囲気である。新婚旅行に来るならこんなところが良いなと思った。
太った女性が陽気に迎えてくれた。家具を含めて落ち着いた造りで、居間からは270度の展望が楽しめる。深く切り込んだ入り江を囲んで左右に岬が見える。庭にはダリアが咲き乱れ、私はこんな景色を日本では見たことがない。ここで10日くらい過ごせたらどんなにいいだろう。この宿を取ってくれた案内所のアヴィーさんに感謝した。

夕食はジェムソンのポケット瓶、チーズ、ポテトチップス、リンゴで済ました。B&Bはどこも電気ポットが備えられていて、コーヒーや紅茶のパックが添えられているので、飲み物には困らない。電圧が220ボルトなので、あっという間にお湯が沸くのである。
今日は腰の調子は比較的よい。右親指の爪はやがて剥がれるかもしれない。(7月7日のこと))

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