アイルランドの細道


バリーシャノン − ブンドラン

7時45分、典型的なアイリッシュ・ブレックファースト。リンゴがおいしいので旅のおやつにひとつ頂いた。アイルランドの青いリンゴは、中型で、甘過ぎず、酢っぱ過ぎず私の好みに合う。
インターネットへの接続は、2階のロビーに共用のパソコンがあるのだが、これは英語表示のみで、主人が自分のパソコンを動員して、手伝ってくれたが、もう少しのところでうまくいきそうで、結局駄目だった。主人のパソコンは日本語表示されるので、フラッシュ・メモリーで送りたい情報を取り込み、コピー・アンド・ペーストでやれるはずだが、これをまったく使ったことのない他人のパソコンでやるのは意外と難しい。私のワードと先方のワードとバージョンが違う・・・奥さんも心配して時々覗き来るのだが、もう少しのところでうまくいかなかった。そんなことで、ここを出発したのは10時10分となっていた。ちょっと気がかりなのは私の取り込んだデータが宿のパソコンに残ったことである。無害だが、見た人は驚くはず。家の造作といい、主人夫妻の人柄といい、本当に気持ちよく、アイルランドの豊かさを感じた。仔牛ほどある犬を散歩させていた主人が見送ってくれた。

しばらくは国道沿いにひたすら歩く旅である。一歩一歩の旅。1時間ほど歩いて小休止していると反対側の車線で車止めて、独りの青年が、水とオレンジジュースを両手に持ってやってきた。頑張ってください。これあげます。矢継ぎ早に質問を受け、ありがたく差し入れをいただいた。アイルランドではよく声援を受けるが、物を頂くのは初めてである。水はアイルランドでよく見るriverrockという銘柄で1リットルはある。厚意で荷物が重くなるのは仕方がない。持参の水は捨てた。この頃から陽が差し始めた。声援でよくあるのはIs it your holy days? と声を掛けてくることである。勿論yes なのだが、心の中で、Ii’s my walking holy days, not my working holy days.と言いたいのだが、これがジョークとして通ずるかどうか分からないので、言わない。
周りの景色は美しいと言うに尽きる。野辺の花、牛や羊、時に野兎、鳥の声。聖なる日(holy day)が続く。

2時間近く歩くと足もくたびれてきて、こんな歌を口ずさんでいた。

主よ 御手もて 引かせ給え
ただわが主の道を歩まん
いかにつらく 険しくとも

みむねならば われいとわじ

これは小学校5、6年の頃、日曜学校へ行っていた時に覚えたものだから、60年前の記憶である。私はこの教会の付属の長田幼稚園の卒業生で、あるとき園長兼牧師の松田先生に捕まって、一時教会に通ったことがあるのである。私はこれまで、2度オーラを見たことがあるのだが、その一つは、松田先生が説教をししておられる時に、後背の輪のようなオーラがを見たのと、これは最近、絵の仲間の山本さんの奥さんの体の周りに輝いたオーラである。

12時半、リンゴとジュースの昼飯。さらに1時間して4叉路に来て、ここでずいぶん迷った。
標識と私の持っている地図とが合わないである。一度はこれまでの国道沿いの道を取り始めたのだがBundran 11kとあったので、引き返し、バリーシャノンへの道を選んだ。これは正解だったようだ。国道を離れると、周りの人家と接する普通の道になり、ほっとする。バリーシャノンはメインストリートの街並みが200メートル近くあり、なかなか素敵な町である。パブでギネスを飲みながら道順を教えてもらった。教会の時計が片方は2時40分、他方は2時30分を指していた。おそらく宗派も違うのだろう。すぐその横の橋を渡って、右に折れる。しばらく行くとサイクリングの中年男性5,6人に取り囲まれた。自分たちはこれからドゴネールへ向かう、お前はどこに行くのか?しばしの立話。写真を取り合って、一人ひとり全員と握手した。

再び、ひたすら歩く旅。国道より生活の匂いがするのは、一軒一軒お庭を見せていただきながら歩くからである。アイルランドの家は敷地2,300坪くらいのものが多く、もっと大きいのもいっぱいあって、住宅レベルは圧倒的に日本を上回る。勿論、新興住宅地であまり大きな庭を持たないのもあるようだが、これらは街道からかなり離れたところにある。思い思い庭を覗いて行くのも徒歩旅行の魅力のひとつでもある。時々犬に吼えられるが、私は杖を持っているので犬は怖くない。

ブンドランという町に着いた。最初二軒並んでB&Bがあって、一方に空き室ありの看板が出ていて、釣られて近寄って、そのまま泊まることになった。AUGUSTAという名前で、何でもご主人がゴルフ狂いなので、名門ゴルフ場の名を付けたそうである。玄関にゴルフのトロフィーなど飾ってあるのもうなずける。そういえば、神戸にもゴルフ好きのマダムのやっている「オ−ガスタ」いうバーがあったっけ。後で分かったことだが、この町にはおそらく50軒以上のホテルやB&Bがあって、私が泊まったのはその一番端のものである。町の中心まで4,5分はかかる。日本のガイドブックには出てこないが、有名な海浜のリゾート地で、もうすぐわんさと人が押し寄せるそうである。シャワーを浴びて夕食に出る。CHEF PEKINGという中華料理屋で、久々に麺類を注文したら、柔らかな麺の上に海鮮や肉や野菜を煮た八宝菜のようなものがかかっている。箸を所望して、それで食べるとちょっと信じられないほどうまい。酢も芥子もなくそのままで文句なしにおいしい。あわててスープを頼むとこれもおいしい。東洋のものを食べるのは10日ふりである。ワインを仕入れて帰る。(7月3日のこと)

【ここからは、写真がありません。HPのサーバーが満杯となったためです。いずれ、工夫して掲載します。】

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