アイルランドの細道  


ドネゴールへ向かう

朝6時前、今なら客がいないので相手してもらえるだろうと、フロントに行ったら、色黒の青年がコンピューターの前に座っていた。インターネットへ接続できないという問題を話すと、よしきたと相談に乗ってくれた。パソコンが電波を受信していることは間違いないのだが、インターネットに繋がらないのである。正確に言うと一度は繋がるが、gmailやブログの更新が出来ず、その理由がわからない。彼は、私の日本語表示のパソコンをアイコンを頼りに操作するのだが、30分以上付き合ってくれたがうまくいかなかった。ドガンという名前のトルコ人でアイルランドに来て6年だと言う。部屋に帰って椅子に座ったまま寝込んだらしい。8時半になっていた。食堂へ行くと、ウエイトレスは昨日道を尋ねたアジア系の娘さんだった。朝小雨が降っていたが、チェック・アウトする頃には止んでいた。
この街の旅行案内所へ行った。次のドネゴールへは30キロ以上あり私の脚では一日では歩きと通せないので、20キロ当あたりで宿を取らなければならない。99ユーロで4つ星のリゾート・ホテルはどうかと勧められたが断り、半額以下のB&Bをとってもらった。経済的なこともあるが、高級ホテルはどこも同じで、快適だが面白さがないのに対して、B&Bは普通の民家で、それぞれの家庭の味がする。旅行案内所を出たのは10時40分。ひたすら歩く旅が続く。30分も歩くと人家がまばらになり、車以外は私を除いて誰も目に入らないのだから、無人の街道を行く感じである。
一回目の小休止の時、ふと気が付くと傍に背の高い人の良さそうな青年が立っていた。写真を撮ってもいいかと言うので、良いよというと、車から、大きなキャノンを取り出してきた。アイルランドの風景を主に撮っているというプロのカメラマンで、東京に1週間行ったことがあると言う。お互いに写真を撮り、ホームページを教え貰い、別れた。*


ボイボフェイの街


ポールさんが撮ってくれた

カメラマンの
ポールさん




Biddy’sというパブが見えてきた

Biddy’s


今日の宿はもう直ぐ


魚料理の美味しい
The Harbour

道中の慰めは周りの美しい景色、路傍の花。そして野鳥の声は私の心に鋭い喜びを与えてくれる。すれ違う車が声援のクラックションを軽く鳴らしてくれたり、手を振ってくれる人もいて、一瞬に過ぎてしまうのであまり意味がないのだが、私はその都度手を上げて返礼する。森羅万象が私の旅を祝福してくれているようである。そうでないのは肩の荷物と足の豆。1時前、路傍でチョコレートと水の昼食を取る。お茶を沸かすためのコッフェルと携帯のコンロはあるのだが使うゆとりがない。
1時半、ボリボフェイとドネゴールの県界を通過。左手に湖、前方に二つの山が見える。この山を通過したあたりが今日の宿のあるところである。やや高い2つの山の鞍部越えるのである。4時半、その広い峠あたり、待望のBiddy’sというパブが見えてきた。旅行案内所の人の書いてくれたメモには、ここはpassと書かれているのだが、最大の目印である。私がパブをパスするはずはないではないか。これのために5時間近く歩いてきたのだ。堂々たるパブであるが、カウンターは3席しかなく、真ん中の空いているところに腰を下ろす。アイルランド娘が注いでくれたギネス1パイントが瞬くうちに空く。両側の男は、間にいる私を越えて話をすのだが、まったく理解できない。この店の常連であろうが、その都度律儀に現金を払っていた。苦労して歩かないとこのギネスの味は分からないだろうな。もうハーフパイントを飲み干して嬉々として宿に向かった。それにしてもこのパブは車でしか来れないはずだが、不思議なパブである。前には広い駐車場がある。飲酒運転の規制が緩いのかもしれない。
歩いて10数分、今日の宿、Gap Lodgeに着く。豊満な女性が出迎えてくれる。アイルランドのB&Bはどこも立派で、これまで失望させられたことがない。問題は夕飯であるが、もう一度Biddy’sへ行くか、ドネゴールに出るしかないという。旅装を解いていると女主人がやって来て30分後町に出るが、よければ車に乗せてあげると言う。助手席に収まって、Gap Lodgeの名前の由来を聞くと、この地が2つの山の間にあって、地名はバーネスモア・ギャップだと説明してくれる。Gapは日本流に言うと広い峠という感じ。小雨の中着いたドネゴールの街は海に面した町で、魚料理のおいしい店The Harbourを教えてもらい、その前で降ろしてもらう。高級な感じだが、家族連れや友人同士が大いに飲み、食べ、おしゃべりして、取り澄ました所がなくアイルランドらしい。隣の席の中年女性の2人連れは、もうかなりメートルが上がっているようだった。海鮮チャウダー、ロースト・サーモン、グリーンサラダ、赤ワイン。アイルランドのサーモンは定評があるが、さすが上品でおいしかった。帰りはタクシーに乗って宿まで帰ったが随分と遠かった。B&Bは夕食がないのが当然で、それをどうするか、宿を決めるとき考慮しておかなければならないのだが忘れがち。インターネットは電波は十分なのだが、繋がらない。繋がってもHPなら一部見えるが、書き込みは出来ない。Gmailは読めない。奥さんパソコンを借りてやってみるとよく見える。しかし書き込みが出来ない。このところこんなことばかり。

*この方はPaul Mcguckinといって素晴らしいホームページを持っておられる。
http://www.landscapeireland.com/
上記写真を送ったら、すぐその時の写真を送ってくださった。9ヶ月の前なのことなのに。

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