晩鐘のこえ渡り来るドナウ川
萌ゆるもの無くて王城聳えたり
咳払い壁の奥より余寒かな
淡雪の微塵と化して川に消ゆ
十字架に纏わりしまま牡丹雪
風花や熱きグヤーシュ香り立つ
冬雲の割れて尖塔燦々と
芽吹くもの生まれてドナウ動かざる
村の春帽子の似合う男達
マジャールの騎馬の音かや春
雪雲の密度見る間に丘の村
陽炎の中に慰霊塚
春光のあるかなきかに動乱碑
燗酒をストリッパーと分かち合い
踊り子はグルジア生まれ朧かな
春寒やトカイワインの黄金を愛で
盛衰を経し巨き橋寒々と
冴え切って大河が分かつブダ・ペスト
(2000年3月)