No.76

                           インターナショナルフェスティバル

娘の通う学校(The American School in London)では生徒の八割以上が米国籍で
すが、それ以外の生徒の国籍は50カ国以上に渡ります。このような生徒の母親が
中心となり、多様なバックグランドを生かして学校全体に貢献できるようなこと
がないかと考え出されたのが、インターナショナルフェスティバルです。

このフェスティバルは 年に1回で、学校の体育館が会場となります。今年は先
週日曜の午後に開催されました。中心となるのは、各国の料理が味わえるお料理
テーブルです。フェスティバルの入場料5ポンド(約950円)を入口で払うと、あ
とは各国別に並べられた食べ物をいくらでもいただくことができます。

日本人のグループは、おにぎり、いなり寿司、細巻き、やきとりなどを、すべて
一口大のミニサイズで用意しました。私はおにぎりの係だったので、ミニおにぎ
りを100個ほどつくって持っていきました。

出品されたお料理はすべて学校への寄付ということになります。つまり材料費は
自分持ちです。そこで国によって、このテーブルに対する姿勢が違うところが、
料理そのものの違いより興味深いところです。

例えば日本テーブルは、すべて主婦による手作りです。これと対照的に、アメリ
カテーブルにはスポンサーがついており、STARBUCKS COFFEEとホットドッグ。あ
る国は、自国料理の評判を落してはいけないと、ロンドンの一流店から自慢の料
理を取寄せたそうです。主婦の手作りではなく、お抱えの料理人が作っているら
しいところもありました。中国テーブルでは、専門の人を使ってミニ春巻を数千
本用意、揚げたてを提供していました。

日本人は、米国以外の国籍をもつグループとしてはインドと並んで最大勢力の一
つですが、日本企業の駐在員という立場の人が多く、自分達の出来る範囲で学校
に貢献しようというのがポリシーです。これに対し、人数が余り多くないグルー
プでも、国を代表するような立場や経済力を持っている人がいるところは、お料
理にも気合が入っているように思われます。

国と国との対抗意識も強く、毎年どの国がどの場所を占めるかが問題になりま
す。

国際情勢を反映して、隣国同志のインドとパキスタンのライバル意識も相当なも
ののようです。お料理テーブルのあるフロア中央では、色々な国のダンスが紹介
され、インド、パキスタンはそれぞれ、生徒も参加する踊りを披露してくれまし
た。生徒達は何週間もかけて練習をしたそうですが、ライバル国には当日まで、
どんな音楽でどんな踊りをするか漏らさなかったそうです。

ライバル意識のおかげでしょうか、インド、パキスタンの生徒や母親はその大多
数が、民族衣装とそれにあったアクセサリーを身につけていて、私達の目を楽し
ませてくれました。色鮮やかなサリーはとても綺麗で、その身のこなしから、民
族衣装が今でも生活の中に根付いていることをうかがわせました。

それにひきかえ日本人のほうは、ゆかたを着ている生徒がほんの数人いる程度
で、きものを着てきた大人は皆無でした。日本の民族衣装は残念ながら、普段の
生活とかけ離れたものになってしまっていることを改めて感じさせられました。

でもがっかりすることはありません。お料理テーブルで一番人気は日本のテーブ
ルでした。フェスティバルの前半で、用意したものはすべてきれいになくなりま
した。日本食の人気、日本人のものづくりのうまさ、チームワークの良さを実感
した午後でした。

03・02・11