No.73
 
                                          ハリー・ポッター 秘密の部屋の住人
 
世界中で大人気のハリー・ポッター。英国では第5作目Harry Potter And The Order Of The Phoenixが6月に発売されることになり、すでに予約が殺到しています。
 
映画も第2作まで公開され、日本でもたくさんのファンを魅了しているようです。
 
映画のキャストは全員英国人.。英国を代表する俳優たちが出演しています。例えば第1作から魔法学校の先生ミネルバ・マクゴナガルを演じているのがマギー・スミス。第2作に登場するギルデロイ・ロックハート先生を演じているのが、ケネス・ブラナーという具合です。
 
そして今回、ひとりの若い俳優がこの作品で、メジャー映画デビューを果たしました。秘密の部屋に住むトム・リドルを演じたクリスチャン・カールセン(Christian Coulson)です。クライマックスでハリー君との息詰まる一騎打ちを演じるので、映画をご覧になった方なら覚えていらっしゃることでしょう。
 
私の親友はクリスチャンのお母さんと大の仲良しで、長年にわたって家族ぐるみの付き合いがあります。それで以前から「友達の息子が俳優をしているのよ」と聞いていましたが、ここにきて映画やテレビドラマでの活躍が目立つようになりました。
 
クリスチャンは歌が上手で、勉強のとても良くできる子どもだったそうです。中学・高校は、ロンドンのウエストミンスター校で学びます。ウエストミンスター校は、『セント・ポールかウエストミンスターか』(日本で言えば、東京の男子校御三家、麻布・開成・武蔵のようなものでしょうか)といわれるほどのロンドンの有名校です。学業だけでなく、芸術にも力を入れており、この学校の合唱隊は非常に有名です。クリスチャンも合唱隊に入って活躍、ミュージカルにも出演するようになり、アンドリュー・ロイド・ウェーバーのプロダクションが米国公演を行った際には、夏休みを利用してキャストとして同行しています。
 
こうしてクリスチャンは、将来舞台に立ちたいという気持ちを強くしていくのですが、ご両親は彼にこんなアドバイスを与えました。
「将来自分のやりたいことをやるのは賛成だ。でも何をするにも、知識・教養を身につけることは重要だから、大学には進学してほしい。」
 
クリスチャンは勉強も頑張りました。そして見事ケンブリッジ大学に合格します。
 
大学では演劇サークルで活躍。彼の演技は全国大学演劇コンテストなどで「学生俳優のレベルを超えたプロの演技」として絶賛されました。
 
そして大学卒業後、プロの俳優としての道を歩み始めました。
 
ハリー・ポッターに関するBBCのインタビューで「ケネス・ブラナーと一緒に仕事をするのはどんな気分ですか」と聞かれ、彼は次のように答えています。
 
「ブラナーに会ったのは、映画の完成試写会のとき一度きりです。僕の役は50年前の話だったり、人が近寄らない場所での出来事だったりするので、他のキャストとは、ほとんど接するチャンスがありませんでした。僕が映画を撮影しているとき、ブラナーはシェフィールドの舞台でリチャード3世を演じている真っ最中でした。」
 
「次はどんな役をやってみたいですか。」という問には
 
「ちょっと的はずれな答えに聞こえるかもしれませんが、僕はシェイクスピアが大好きです。最近は(リバプールの劇場で)『ロミオとジュリエット』のロミオを演じたばかりです。今やってみたいと思うのは『リチャード2世』です。誰かが僕にこの役をやらせてくれると、とってもうれしいんですが。僕は、リチャードは若い役者がやるべきだと思っています。」と答えています。
 
私の親友は、クリスチャンがまだ無名の頃ハムレットを演じるのを見て、「この子には才能がある」と確信したそうです。
 
知識と教養を身につけ、シェイクスピアが大好きな『秘密の部屋の住人』。これからの彼の活躍がとても楽しみです。

03・01・21