CRISIS もう一つのクリスマス
 
イルミネーションが輝き、プレゼントを買い求める人でにぎわうロンドンのクリスマス。でも誰もが楽しいクリスマスを迎えられるわけではありません。特に身よりのないホームレスの人々にとって、寒さ厳しいこの時期は大変辛いものです。
 
英国ではいろいろなチャリティー団体が、このような人々に援助の手をさしのべています。CRISIS OPEN CHRISTMAS SHELTERSもその一つです。昨年友人の一人が、この活動に初めてボランティアとして参加しました。彼女は50代です。
 
「主婦をやっているとこの時期はとても忙しい思いをするのに、今まで家族から感謝されたことはなかったの。でもこのシェルターでは何をやっても、ゲスト、つまりホームレスの人たちから感謝の言葉が返ってくるの。それにボランティア同士の連帯感もあるし、とてもいい雰囲気だった。やりがいが感じられたし、本当に楽しかったわ。」と彼女は話してくれました。
 
CRISISは30年以上の歴史を持つチャリティー団体です。この団体を支持する企業が自社の倉庫を提供し、そこがクリスマスの時期だけホームレスの人々のシェルターとなります。暖かい寝場所があり、ボランティアの人々が心を込めて食べ物を用意してくれます。
 
それだけではありません。シェルターにやってきたゲストは、自分にあった服や靴もプレゼントされます。これも支持企業からの提供です。簡単な健康診断、住居や仕事を見つけるためのアドバイスも受けることができます。このようにしてホームレスの状況から脱却し、社会の一員として自分の力で生きていけるよう手助けするのが、この団体の目標のひとつです。
 
しかしクリスマスのこの時期、身よりのない人々にとって何よりうれしいのは、話相手や共に時間を過ごす人がいることです。
 
前述の彼女はいくつかあるシェルターのうち、アルコール依存症患者のシェルターでボランティアをしました。
 
「そのシェルターで働くのはちょっと心配だったの。でも、事前にスタッフの人たちから対応の仕方を丁寧に教えてもらったから、何の問題もなく、とても穏やかな雰囲気だったわ。シェルターの壁にはゲストの人たちが作った詩が展示されていたの。70歳ぐらいのおばあさんがいて、彼女はアルコール依存症のせいで家族と一緒に住めなくなったのだけど、その中の一つが自分の作品だと私に教えてくれたの。『とてもすてきな詩ですね、気に入りました』と言うと、彼女はすぐにその詩を紙に書き写して、私にくれたの。彼女と心が通じ合ったようで、とてもほのぼのとした気持ちになったのよ。」
 
友人はボランティアをすることによって、他人に何かを与えるだけでなく、自分も新しい世界を広げることができ、得るものが多かったと話してくれました。
 
今年もロンドンでは、たくさんのボランティアの協力によってCRISIS OPEN CHRISTMAS SHELTERSが開かれています

02・12・23