チャーチルのVサイン
 
ロンドン通信でご紹介したBBCのテレビ番組GREAT BRITONSは、11月24日に最終討論と投票が行われて、終了しました。
 
最後の特集でChurchillを紹介したため、番組終了後にChurchillがトップに躍進。そのまま逃げ切りを果たしました。以下はBrunel、Diana、Darwinの順で、Shakespeareは5位にとどまりました。
 
Churchillの番組では、ヒットラー率いる独軍の前にフランスが降伏し、英国の存亡が脅かされていた1940年、BBCを通じてChurchillが全国民に呼びかけた演説が取り上げられていました。”We shall never surrender.”を結びとするこのスピーチは、今も多くの人々の胸を打つようです。
 
最終討論番組では、候補者10人の支持者(それぞれの特集番組の進行役)がそれぞれ応援団を引き連れて参加。白熱した議論が展開されました。支持者は、歴史学者、ジャーナリスト、政治家、役者など様々な職業の人々ですが、討論の際にはその力量の差がはっきり表れていました。
 
たとえばエリザベスI世の支持者は、前回の保守党・党首選にも出馬したマイケル・ポーティローですが、具体性のある、明晰な議論には説得力がありました。Churchillの支持者モー・モーラムも政治家です。番組でも言及されていましたが、Churchillは幼少時どもる癖があり、そのために学校でいじめにあったそうです。しかし政治家を志してからは、日夜スピーチの練習に励んだそうです。英国の政治家のスピーチのうまさには、陰で大変な努力があるのでしょう。
 
Darwin支持のジャーナリストも鋭い議論を展開していました。シェイクスピア陣営は番組進行役だったフィオーナ・ショーが出演できず、別の役者さんが代役となっていましたが、議論の際の力不足は否めませんでした。筋書きのない生放送の討論ですから、役者さんにはちょっと厳しかったのかもしれません。
 
Churchillの優勝で終わったこのシリーズ、我が家でも家族共通の話題となり、英国の歴史を知る良い機会となりました。英国内でも、以下のようにいろいろな話題を提供したようです。
 
Brunelの2位は知名度からいって意外な感じがしますが、英国にBrunel Universityというのがあり、この大学が知名度向上を狙って学生を動員、組織的に投票を行ったといわれています。
 
Churchill陣営はウエブサイトを利用して、世界中のChurchillファンに投票を呼びかけたそうです。(ロンドン通信でも、日本のシェイクスピアファンにもっと訴えるべきだったかも…)
 
ロンドンのNatural History Museumでは、シールを配ってDarwinへの支持を呼びかけました。
 
競馬やサッカーの賭けを扱うブックメーカー(賭屋)では、Churchillが一番人気でした。
 
Lennonの番組では、英国の人々がヨーコ・オノに複雑な感情を持っていることがよくわかりました。彼女と出会ってから、彼はビートルズとしての活動から離れていったし、ニューヨークに移って英国に戻らなかったのも彼女に理由があったからで、英国の人にとっては、なんだかヨーコ・オノにLennonを取られたような気がしているようです。
 
Dianaは女性から圧倒的な支持を受けました。家庭的な愛情に恵まれなかった子供時代、夫の裏切り、姑との確執、離婚、摂食障害など数々の困難を経験しながらもそれに負けず、慈善事業や地雷の禁止活動にも積極的に関わった彼女の姿が、多くの女性に勇気と希望を与えているようです。
 
Shakespeareは若い世代で支持が低くなっています。学校で無理に勉強させられるため嫌いになってしまうことが多いようで、英語教育の在り方が改めて問われています。
 
Shakespeareは400年も前の人で、DianaやChurchillのようにその姿が人々の記憶にあるわけでもなく、組織票もありませんでした。それでも5位と健闘したのはさすがというべきでしょう。今回のロンドン通信の最後も、彼の言葉で締めくくりたいと思います。
 
Greatness knows itself
Henry IV, Part1 IV.iii
 
The rest is silence.
Hamlet V.ii

02・11・30