雨中の戦没者追悼パレード
 
11月は、英国が関係した戦争で亡くなった人々を偲ぶ月です。国会議事堂に近いWhitehallという通りには、道の中央に戦没者記念碑(cenotaph)が立っています。11月11日のRemembrance Dayに先立つ日曜には毎年、ここを中心にして戦没者追悼の式典とパレードが行われます。
 
エリザベス女王を中心とする王室のメンバー、首相および各党の党首、新旧英連邦各国の大使などが参列し、厳粛なムードで式典が行われます。英国国教会の牧師によるキリスト教の式典ですが、ヒンズー教、イスラム教、シーク教等々、主な宗教の代表もその場に招かれており、宗教的多様性に対する配慮が感じられます。
 
午前11時、ビッグベンの鐘の音を合図に2分間の黙祷が行われます。そのあと、エリザベス女王から順に、赤いケシの花をあしらったリースを記念碑に捧げます。こうして公職にある人々がリースを捧げ終わり、建物の中に退いた後、パレードが始まります。
 
このパレードの主役は退役兵士達。特に第2次世界大戦を戦った人々が部隊ごとに退役軍人会を組織して参加しています。当日のロンドンは朝から雨。既に高齢となっている元兵士達は、式典のずっと前から整列して、雨に打たれながら待機していました。毅然とした表情で背筋を伸ばして歩くその姿からは、亡くなった戦友を思う熱い気持ちが伝わってくるようでした。
 
私は自宅にいて、テレビでその模様を見ていました。事前に録画した映像も交え、いくつかの部隊について詳しい紹介がありました。「数百人いた仲間のうち、帰って来れたのはわずか数十人でした。この体験は一生忘れることができません。」と語る元兵士。背景には、彼の地に立つ数百という墓標が映しだされていました。
 
『それぞれの戦争については、英国が参加したことに是非の論議もあるだろうが、私達が今こうして自由を享受できるのは、そのために命を捧げてくれた多くの人のおかげであることを決して忘れてはならない。』というのがRemembrance Dayの趣旨です。この日は、ロンドンだけでなく英国各地の都市や町でも、同様の式典がおこなわれます。
 
この式典の放送をみていると、日本人が都合良く忘れている過去の事実も思い出されます。
 
「これは、第2次世界対戦で日本軍の捕虜となった兵士たちの軍人会です。日本軍から大変ひどい扱いを受けていたので、英国軍によって救出されたときには感極まったといいます。」
 
「これは、第2次世界大戦中日本軍によって収容所に入れられた民間人のグループです。彼らは一般人であるにもかかわらず、数年間に渡って自由を奪われるという過酷な経験をしました。」
 
また、第2次世界大戦中の英国を指揮したChurchillへの言及もしばしば登場しました。
 
「この部隊は独軍の攻撃で後退を続けていたのですが、Churchillが前線を訪れて激励、新しい指揮官を任命してから攻勢に転じました。」
 
「この部隊は、英国を勝利に導いたChurchillの作戦で重要な役割を果たしました。」
 
という具合です。英国の指導者として力強いリーダーシップを発揮し、今も人々の記憶に残っているのは、やはりChurchillなのかもしれません。
 

2回続けてご紹介したBBCのGREAT BRITONS。Shakespeareは番組放送後票が伸びて4位のDarwinに迫ってきたもの、依然として5位。トップ3は、Brunel、Diana、Churchillの順です。
 
Brunelは、英国が先進国となるためのインフラ整備に大きな功績のあった、産業革命時代のエンジニアです。彼を特集する番組がシリーズの最初に放送され、好位置で発進したため、アンチDiana派の票を集めてトップを走っています。
 
最終結果の発表は11月24日。シリーズの最終番組はChurchillの特集です。もしかしたら第2次世界大戦の対ドイツ戦のように、Churchillの逆転大勝利があるかもしれないと私は密かに思っています。

02・11・15