SHAKESPEARE’S GLOBE の夏
東京グローブ座がこの夏から一時閉鎖になるという残念なニュースを耳にしましたが、ロンドンのグローブ座はオープンから5年目を迎えてますます元気です。
シェイクスピア当時の建材および建築法にこだわって忠実に復元されたグローブ座と、隣接するシェイクスピア関連の展示施設には、1年中観光客が絶えません。テムズ川南岸の観光スポットとして、すっかり定着した感があります。
特に5月から9月はこの舞台で実際に劇が上演されるため、注目度はますますアップします。グローブ座は自然光の下で公演をするようにつくられているので、日照時間の長い夏の間しか利用できません。しかし夏といっても英国のことですから、雨も降れば肌寒い日もあります。円形の劇場の中央部分には屋根が無いので、平土間で見物する観客は雨に濡れるのを覚悟しなければなりません。屋根のある椅子席に座っていても、コートを着ないと寒い日もあります。
そんな悪条件にもかかわらず、グローブ座の公演は大人気です。実はオープンしたばかりの1997年、劇の評判はあまり良くありませんでした。グローブ座での上演に時代考証的な意義はあっても、公演そのものを楽しめるようにはなっていなかったのです。演出家も俳優もそして観客も、従来の劇場空間に慣れきっているため、シェイクスピアの時代から突然タイムスリップしてきたようなこの新しい劇場に、戸惑っていたのかもしれません。
あれから5年。試行錯誤と努力を積み重ねた結果、グローブ座公演は中身も充実したものになってきました。
今年は『キューピッドとプシューケーのシーズン』と題して、シェイクスピアのTwelfth NightとA Midsummer Night’s Dream、そして新作のThe Golden Assが上演されています。グローブ座芸術監督のマーク・ライランスは「溢れる気持ちを抑えきれない、人を変えてしまうこともある、そしてしばしば大混乱を引き起こす、そんな愛のエネルギーがこの夏のテーマ」と語っています。
Twelfth Nightは、シェイクスピア時代の演出の再現を目指しています。400年前に遡って初演時の記録文献を研究し、それに基づいて衣装や音楽を考案、時代設定は1602年となっています。
これに対してA Midsummer
Night’s Dreamは、当時の上演スタイルにとらわれないモダンなものになっています。衣装も音楽も時代設定も、できる限り2002年らしいものを目指しています。
古いものを大切にしながら新しいものにも挑戦する、いかにも英国らしい姿勢だと感心しながら、私はTwelfth Nightを見ることにしました。シェイクスピア時代の演出再現に興味があったからです。次回ロンドン通信でその様子をお知らせします。