帰ってきたケネス・ブラナー

3月下旬から新聞の批評欄は、ケネス・ブラナーの話題で持ちきりです。

ケネス・ブラナーは英国の俳優で現在42歳。20代の頃にはロイヤル・シェイクスピア・シアターでも活躍し、「ローレンス・オリビエの再来」と期待されていたのですが、10年前からはハリウッドで映画作りに専念していました。

例えば1996年、ブラナー自身が監督し、主役を演じた映画「ハムレット」は4時間半の超大作。タイタニックでアカデミー主演女優賞を受賞したケイト・ウインスレット(オフィーリア)はじめ、オールスターキャストで話題となりました。

その彼が今回、10年ぶりに舞台に戻ってきました。それもロンドンではなく、イングランド北部の都市シェフィールドにあるクルシブル劇場です。この劇場が今、英国中の注目を集めています。演目はマイケル・グランデージ演出の「リチャード三世」。ブラナーがタイトルロール(主役)を演じています。

最終日(4月10日)までのチケットはとっくに完売。劇場始まって以来のスピードで売り切れたそうです。

初日が開ける前には、舞台での10年のブランクを問題視するような記事も見受けられましたが、幕が開いてみると、各紙とも「さすがブラナー」という賞賛の記事を掲載しています。

例えば3月20日付のイブニング・スタンダード紙は、『ケン(ブラナーの愛称)勝利の復帰』という見出しで「観客に息つく暇も与えず舞台に引き込み、時に雰囲気をがらりと変え、冷笑的ユーモアを備えたこのパフォーマンスは、非常に感動的で、今まであまり目にすることの無かった、ブラナーによる深みのある演技、赤裸々な感情表現で結末を迎える。」と感動を伝えています。

3月24日付のサンデーテレグラフ紙は、「劇全体を通じ、ブラナーの持つ決然とした演技とスピード感に加え、ステージ上でもステージ外でも有名な、彼特有の人を引き込む魅力が発揮されている。」と伝えています。

3月20日付のガーディアン紙は、『ブラナーの喜ばしいステージ復帰』という劇評を載せています。演出、ステージセット、衣装、脇役陣をそれぞれ賞賛した後、劇評は次の言葉で締めくくられています。

「しかしこの劇のスターは、なんといってもブラナーである。彼の演技がこの作品の長い歴史において、厳密な意味でのターニングポイントでないとしても、英国演劇界にとってなぜ彼の復帰が必要かは、彼の演技が示してくれている。」

ロンドンのステージにブラナーが本格的に復帰してくれることを、多くの人々が願っています。今回シェフィールドまで行けなかった私も、それを切望しています。

日本でももうしばらくすれば、ブラナーを映画館で見ることができます。人気映画ハリー・ポッターの第2作にロックハート先生として登場するからです。これによって若い世代にも、知名度があがることでしょう。こんなブラナーをイブニング・スタンダード紙は次のように評しています。

「新しい、中年を迎えたケン・ブラナーのイメージは、こんな風に要約することができる。ある意味で成熟した性格俳優、そしてある意味で国家的な宝であると。」

(02・04・06)

ブラナー・ファンの方はゆーりさんのShakespeare Film Databaseを是非ご覧ください。

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