アメリカンスクールで学ぶ「英語」とは

娘と息子が通うロンドンのアメリカンスクールは、ハイスクールが4年制になっています。英語の授業に関していうと、最初の2年間は全員同じ事を学びますが、後半の2年は、自分で好きな講座を選択して学べるようになっています。1年は3学期制になっていますが、毎学期十数種類の講座の中から授業が選択できるようになっており、日本の高校の経験しかない私には、うらやましい限りです。

どのような講座があるか、少しご紹介しましょう:

評論文演習 世界の古典文学 詩の鑑賞 現代アメリカ文学 創作演習 戯曲文学 ギリシャ神話 文学に見る個人と社会 アイルランド文学 文学とアメリカ映画 文学と世界の映画 ホロコーストの文学 ロンドンを舞台とする文学 アフリカ系アメリカ人による現代文学 19世紀アメリカ文学 19世紀英国小説 哲学と文学 ロシア文学 シェイクスピア上演 シェイクスピア研究 シェイクスピア悲劇 20世紀アジア文学 20世紀英国文学 20世紀ヨーロッパ文学 文学に登場する女性 中世の世界文学 近代世界文学 世界の神話 活字メディア向け文章演習 などなど

どの講座もただ本を読んだり文章を書いたりするのでなく、そこで学んだことと、自分の周りの世界との関連を求めるところが、私にとっては非常に新鮮です。

例えば『ロンドンを舞台とする文学』では、実際にその舞台となった場所を訪ねてみます。当時そこはどのような意味を持つ場所であったか、そして現在はどうであるかを自分の目で確かめます。

『活字メディア向け文章演習』では、そこで習得したスキルを使ってニュース、特集記事、論説、インタビューなどを含めた立派なニュースレターを作成、全校に向け定期的に発行しています。

『ギリシャ神話』ではナショナルギャラリーを訪れ、ギリシャ神話の絵画への影響を探ったり、現代生活の中でこの神話がどのように生きているかを考えます。

『ホロコーストの文学』では、ナチスの迫害を生き延びた人々による文学を研究しますが、映画を利用してその時代の状況を理解したり、倫理的な問題にまで迫ります。また実際にホロコーストから生還した人を招いて話を聞いたそうです。その人は授業で取り上げた本の著者と同じ収容所にいたのですが、その本の内容に大変批判的で、「真実」というのは見る角度によって異なってくることを知らされたようです。

私が自分で授業を体験するわけにはいかないので、以上は息子から漏れ聞く情報によるものです。しかし今回幸いなことに、ある講座の総まとめともいうべきイベントに立ち合うことが出来ました。

『シェイクスピア上演』という講座です。この講座は非常に要求レベルが高く、「演劇術(Theater Arts)」という科目の中にある『演技:シェイクスピア劇上演のテクニック』という講座も一緒に履修することが求められています。

「演劇術(Theater Arts)」とは耳慣れない科目ですが、音楽、美術などとともに、芸術分野を構成する科目の一つです。そういえば自分の高校時代、芸術の選択といえば「音楽」「美術」「書道」でした。たしか「書道」の先生は、週1回おいでになる非常勤の先生だったと思います。しかしこちらでは、演劇は重要な科目であり、熱心な常勤の先生が指導にあたっておられます。

こうして英語科の『シェイクスピア上演』と演劇術科の『演技:シェイクスピア劇上演のテクニック』を選択した生徒達が、英語の先生、および演劇の先生の厳しい指導と訓練を受け、学期末の総まとめとして上演したのが、シェイクスピアの悲劇「マクベス」でした。先週末3日に渡ってこの劇が一般にも公開されたため、私は喜んで見に行きました。次回ロンドン通信でその様子を報告させていただきます。

02・02・26