ロンドンクリスマス風景

クリスマスは大部分の英国人にとって、イエス・キリストの生誕を祝う日であると共に、家族や親戚が一堂に会する、日本のお正月のような時期でもあります。料理が得意な友人の1人は

「クリスマスは親戚がみんな家にやってくるの。毎年最上級の七面鳥を肉屋から取り寄せてローストし、カモも1羽丸ごとローストし、大きな固まりのローストビーフをつくって、サーモンも大きいのを2尾、ポーチドサーモン(一旦ゆでて冷製にしたもの)にするのよ。何と言っても大変なのは七面鳥のお腹に詰める栗の皮むき。こればっかりは缶詰やビン詰めじゃあおいしくないから、生の栗を買ってきて家族総出で皮むきをするの。毎年徹夜作業になるわ。」

日本のおせち料理につきものの「栗きんとん」が頭に浮かびますが、栗の量では七面鳥のほうに軍配が上がるのではないでしょうか。

「つくるのは本当に大変でクリスマスの朝にはぐったりだけど、そのあとは楽よ。」

まさにおせち料理と同じです。出来立ては暖かいものをいただきますが、その後はスライスしてサラダにしたり、サンドイッチにしたりと、冷めてもおいしいものばかりだからです。

「みんなが帰る頃には、きれいに全部なくなるのよ。」

と友人は嬉しそうに話してくれました。

こうして顔を揃えた家族・親戚がプレゼントを交換し合うのも、クリスマスの楽しみの一つであり、またその準備に大変なエネルギーが必要です。

かくして11月の末あたりから、人々はプレゼントをあげる一人一人の顔を思い浮かべながら、クリスマスショッピングに出かけることになります。この時期どこのショッピング街も人であふれ、レジには長蛇の列。もともとレジの対応は日本ほど迅速でないのにこの混雑ですから、品物が決まってから店を出るまでにかなりの時間がかかります。それでも我慢強い英国の人達はじっと列に並んで順番を待ちます。

英国の店では、日本のようにプレゼント用の包装はやってくれません。商品をビニールの袋(plastic bag)に放り込んで渡すだけです。(それなのに何であんなにレジで時間がかかるのか不思議!)そこで自分でラッピングするため、包装紙も買い求めなければなりません。これは色々なデザインのものがあり、見ているだけで楽しくなります。包装紙に合わせたリボンを付け、小さなカードに誰から誰へのプレゼントかを記入して貼り付けると、出来上がりです。

ビニール袋をいくつも抱え、包装紙の筒を持った人々が忙しく行き交うのは、12月24日まで。12月25日は街中が静寂に包まれます。店はどこもお休み。地下鉄、バスなど公共の交通機関も一切動きません。教会の鐘が鳴り響き、普段教会に出席していなくても、この日ばかりは礼拝に出かける人が多いようです。

12月26日も休日です。この日は「ボクシング・デー」と呼ばれていますが、拳闘のボクシングではありません。クリスマスが終わって、使用人に心付けを与えたのがその由来で、箱に入れて渡したからBOXING DAYなのだそうです。交通機関は休日ダイヤで動き出しますが、店はまだ閉まっています。

クリスマスまであと1週間。寒くて暗い毎日だけど、本屋で孫のプレゼントを選んでいる老夫婦を見かけたり、女性用下着売場でパートナーへのプレゼントを選んでいる男性がいたり、なんだか微笑ましい気分にさせてくれる季節です。

01・12・18