ロンドンの駐車違反取締事情

ロンドンも東京と同様交通量が多く、車で出かけると駐車スペースを見つけるのに一苦労です。目的地に管理人のいる大型駐車場がある場合はそこを利用すればよいのですが、都合良くそれが見つからない場合は路上駐車となります。路上駐車で難しいのは、駐車禁止時間に色々な条件が付いていることです。多くの場合、8:30−18:30が駐車禁止ですが、我が家の前はなぜか11:00―12:00だけ駐車禁止。他の車がたくさん停まっているからと安心してこの道に駐車し、11時過ぎに戻ってくると、自分の車だけが路上にあり、しっかり駐車違反の黄色いチケットが貼られている…という事態になりかねません。このほか、一旦駐車したあとは同じ区域に4時間以上経過しないと再駐車できないとか、居住者専用駐車区域が設定されていてそこには駐車できないとか、いちいち路上にある表示を確かめて、駐車しなければなりません。駐車料金が必要な場合は、パーキングメーターや自動券売機で料金を前払いするのですが、この機械はコインしか受け付けず、しかもお釣りがでません。時間制の前払いですから、もし用事が長引いてメーターや駐車チケット(駐車可能時間が印字される)が時間切れになれば、即駐車違反です。作動しないパーキングメーターに停めた場合も、駐車違反扱いとなります。小銭がない、パーキングメーターが故障しているなどというときは、本当に機械をけ飛ばしたくなります。しかし駐車違反になってはもともこもありません。罰金だけならまだしも、クランプ(車輪が動かないように鉄の枠をはめる)されてしまうと大変です。その場では外してもらえず、レッカー車で専門の業者の所まで行き、やっと外してもらえるのですが、その費用もレッカー車代も自分で負担しなくてはなりません。

こんな駐車違反取締事情に辟易しているのは日本から来た私だけでなく、イギリス人の友人達も同様のようです。先日数人で集まってランチを一緒にしたときも、それが話題になりました。

「その日私はとても疲れていて、車がたくさんとまっているから大丈夫だと思ってその列に停めたら、居住者専用の区域だったの。本当にがっかり。駐車違反の罰金なんてお金をどぶに捨てるようなものよね。」

「駐車違反取締官は歩合制らしいわよ。たくさん駐車違反を見つければ自分の稼ぎになるから一生懸命やるのよ。私もたった5分、時間切れになっただけで駐車違反になったわ。」

「私なんか突然『罰金を14日以内に支払わなかったので通常の2倍の罰金を請求する』という手紙が送られてきたのよ。確かに私の車が駐車違反したらしいけれど、駐車違反のチケットをもらった覚えはないし、絶対納得できないわ。断固争うわよ。」といつも強気の彼女は言います。

そんなわけでこの日は、「駐車時間切れになると困るから、そろそろお開きにしましょう。」ということでみんなと別れました。

そのあと、私は昨年夏にストラットフォード・アポン・エイボンで駐車違反チケットを受け取ったことを思い出しました。日本から来た両親と湖水地方を旅行したあと、ストラットフォードの街をちょっと見せたいと思って立ち寄ったのです。エイボン川の手前の駐車場に車を置いて街に入ったのですが、人と車が多いため思うように動けず、駐車チケットが時間切れになって20分後くらいにやっと駐車場にたどり着きました。駐車違反取締官がすでに黄色の駐車違反チケットを車に貼ったあとでしたが、あわてて帰ってきた私達を見た彼はこういってくれました。

「追加の駐車チケットを今すぐ買って、それと駐車違反チケットと一緒に交通局に手紙を書いて送ると、きっと大丈夫だよ。チケットを買う小銭が足りなくて両替に時間がかかったとか理由を書いてね。」

ロンドンに戻った私はストラットフォードの交通局宛に手紙を書きました。

「日本からはるばるやってきた両親にストラットフォードを見せたかった。夏のシーズンで人出が多く、両親を残して急ぐこともできず、時間に遅れてしまった…」と。

後日ストラットフォードから返事が来ました。

「お手紙ありがとうございました。ご事情よく分かりました。今回の駐車違反は罰金を免除させていただきます。」

それ以来私はますますストラットフォードが好きになりました。RSCのストラットフォード改革案には、交通改革も盛り込まれています。エイボン川手前の駐車場を広くし、街中は歩道とサイクリングロードを整備、駐車場からシェイクスピア劇場へ向かうエイボン川の渡し船も計画されているようです。親切なストラットフォードの交通局ならきっと、この街を愛する人々が快適に楽しめるようにしてくれることでしょう。.

01・12・5