サマータイムとしばしのお別れ

今年は10月28日(日)にサマータイム(British Summer Time)が終了します。生活に支障がないよう、日曜の午前2時に時計の針を1時間前に戻します。この日は1日25時間となり、なんだか得した気分になります。私たち家族が英国でサマータイム終了を迎えるのはこれで8回目となり、今でこそこの年中行事にも慣れましたが、最初の年はこれに気づかず、夫は翌日1時間早く出社してしまいました。慣れてくると自然にその時期が分かるようになります。今回も2週間前ぐらいから、子どもたちが学校に出発する朝7時過ぎでもまだ日が昇らず,早く通常時間(グリニッジ標準時・GMT)に戻ってほしいと感じていたところでした。時計の針が1時間遅くなったので、この問題は一気に解決、すがすがしい朝日と共に家を出ることができるようになりました。そのかわり日暮れが早くなり、4時過ぎには夕闇が迫ってきます。ところで、10月の終わりまでサマータイムというのはなんだか変な感じがします。意味的にはサマータイムの別名であるdaylight-saving time(日照時間有効利用タイム)という方が理に適っているのですが、英国の人々はサマータイムという呼び方が好きなようです。

皆さんは夏というとどんなイメージを持たれますか。日本なら、じりじりと照りつける太陽、汗、日焼けしたこどもたち、熱帯夜などが思い浮かびますが、英国の夏はこのようなイメージとはまったく違っています。1年で一番明るく、心地よい季節、太陽が輝き、緑が濃く、花が咲き乱れる美しい季節です。しかもこの夏の盛りは、あっという間に過ぎ去ってしまいます。それだけに人々は、サマーという響きに強い憧れを込めているような気がします。

シェイクスピアもソネットの18番で恋人の素晴らしさを夏の日と比較し、
       Shall I compare thee to a summers day?
恋人の美点をeternal summer としてあがめています。
      But thy eternal summer shall not fade,

日本語ならこんな場合、「春」を使うことでしょう。「青春」、「我が世の春」など、最も素晴らしい時期を表すのには春がよく使われます。国によって季節の持つイメージが全く違ってくるのは、大変興味深いことです。

さてこれから英国は、どんよりした灰色の空、底冷えのする天気が続きますが、来年3月31日にはもう次のサマータイムが始まります。それまでサマータイムとはしばしお別れですが、11月に入ってもし明るく暖かい日に恵まれたら、人々はそれをSt. Martins summerとか、インディアンサマーと呼んで喜びます。英国の人にとってサマーは、実に有り難いものなのです。

01・10・30