コメディーに宗教ネタは御法度?  Mr. BEANの反論

英国のコメディー俳優であり、劇作家でもあるRowan Atkinsonをご存知ですか。1955年生まれのAtkinsonはオックスフォード大学でエンジニアリングを専攻しますが、在学中からコメディー作家、俳優としての才能を発揮、大学卒業後はコメディーの道を選びました。1978年から始まったBBCの番組Not The Nine OClock Newsに出演。これが大当たりで、番組は国際エミー賞など数々の賞を受賞、彼自身も「BBC年間最優秀パーソナリティー」に選ばれるなど一躍有名になりました。

その後も活躍が続きますが、日本ではBBCの人気番組「Mr. BEAN」の主人公として知られているのではないでしょうか。NHKでもMr. BEANのエピソードをいくつか放映していましたし、映画版も制作され、日本でも公開されました。Mr. BEANにはせりふがほとんどありませんが、そのとぼけた演技と状況設定のおもしろさで、観客を楽しませてくれます。

このMr. BEANことRowan Atkinson氏の投書が、10月17付のTHE TIMES紙に掲載されました。タイトルはReligion as a fit subject for comedy。テロ対策緊急立法の一環として、「宗教的憎悪を刺激する行為」を違法とし、最高7年間の禁固刑に処する新法案が、内務大臣から議会に提出されたことに反論するものです。

Atkinsonは、「今まで自分がやってきた仕事は、自分自身のキリスト教徒としてのバックグランドから、宗教に関わる人物をパロディー化したものがかなりの部分を占めています。宗教をからかうような要素が暗示されたり、宗教に関わる人物を諷刺することが実質的に違法になるとすれば、おそろしいことです」と述べています。

かつてNot The Nine OClock Newsでは、モスク(イスラム教の寺院)で一斉に床まで頭を下げて礼拝する人々の映像に、「こうしてアヤトラ・ホメイニ氏のコンタクトレンズ探しが続きます」というナレーションが流れるジョークがありました。これも新法案が成立すれば処罰の対象になるのかとAtkinsonは疑問を投げかけています。「確かにこれはちょっと不謹慎かもしれません…しかしその時代と状況にあって、非常に面白いジョークであったわけです。ジョークの適切さを判定するのは観衆のリアクションであって、その国の法律ではないと私は考えます。」

彼の意見は、他のコメディアン、諷刺家、メディア関係専門の法律家から強い支持を受けています。メディア専門の高名な弁護士であるMark Stephensは次のように述べています。

「この法案は、多文化社会では実質的効果を果たさないでしょう。いかなる行動においても、基本的人権法に定められた言論の自由が優先されるべきです。宗教団体の定義をどうするかも同様に難しい問題だと思います。」

内務省のスポークスマンは「この法案は緊急立法の一環です…この件に関してコメディアンの方々から意見を聞く予定はありません。」とクールな対応をしていますが、本当にこの法案が成立すれば、宗教に関するジョークがたくさん登場するThe Merchant of Veniceも上演できなくなるかもと、私と娘は心配しています。

01・10・23