01・09・11
ロンドンで感じる東南アジア
私が初めてロンドンに住むようになった1992年、日本経済はまだ力があり、日本企業の英国進出や英国企業買収がさかんにニュースで取り上げられていました。当時はBBC(英国国営放送)の国内向けニュースでも、経済指標として日経平均に毎日言及していました。今では日本関連のニュースは極端に減り、日本国内の不況と、小学校に男が侵入して子どもたちを刺殺とか、花火大会で死亡者多数とか、日本の安全神話をくつがえすような暗いニュースばかりがこちらのメディアで取り上げられ、時代の移り変わりを感じさせられます。
この1992年から程なく、ロンドン北西部に日本の食品スーパーであるヤオハンが開店しました。JAPAN UNDER ONE ROOFといううたい文句で、食品だけでなく、日本人向けの書籍、眼鏡、美容院、食器、健康用品、旅行会社、レストラン、和風喫茶など、あらゆるものが揃っていました。日本からチンドン屋まで呼び寄せて華々しいオープニングを飾ったあと、しばらくは日本人(主に日本企業の駐在員と家族)で賑わいましたが、日本経済の曲がり角とぶつかり、日本企業撤退にともなう駐在員家族減少によってヤオハンの客足も思うように伸びなかったようです。スーパー内の日本人向けテナントは次第に店じまいに追い込まれ、ヤオハンそのものも経営に失敗して倒産。立派な建物はあるのに、お客さんはわずかで細々と営業しており、この先どうなるのかと心配したものでした。
この「もとヤオハン」が、最近は活気にあふれています。経営は全く日本人の手を離れたようで、その名もORIENTAL CITYとなっています。お客さんも日本人は少なくなり、それ以外の東南アジア系の人々が多数派です。といってもこの人達がどこの出身なのか、私には顔を見ただけでは区別がつきません。このスーパーマーケットにはヤオハン時代から、フードコートと呼ばれる飲食スペースがあります。中央に椅子とテーブルが並んでおり、それを取り囲むようにいろいろな飲食店がならび、お客さんは店から買った食べ物をセルフサービスで中央の席に運んで食べるようになっています。開店当初は、お好み焼き、たこ焼き、おでん、焼き鳥、日本そば、うどん、かき氷など、純日本風な食べ物を売る店が並んでいたものです。それが今は、中国料理、タイ料理、インドネシア料理、シンガポール料理、ベトナム料理の店が並んでおり、どこもなかなかの人気です。日本はかろうじてラーメン屋と定食屋が残っていますが、そのラーメン屋もあまりはやっていないので、いつまで持つか心配です。フードコートはヤオハン時代のような日本らしい清潔感はなくなりましたが、今はとっても活気にあふれています。最近このスーパーの入り口に、ドリアン(マレー半島原産の果実)食べ放題をうりものにした屋台も出現しました。JAPAN UNDER ONE ROOFという時代は確実に終わりを告げ、東南アジアの一員としての日本を強く意識させられるこの頃です。この週末も私たち家族はここで中国料理とインドネシア料理を食べ、ドリアンをおみやげに帰宅しました。
ロンドン通信25