ロンドン通信 108

夫の帰国辞令

春が近づいてきました。日本では入学、入社と新しいスタートの季節、転勤も多い時期です。夫にも帰国辞令が下り、先週日本に帰国しました。

それではなぜ私はまだロンドンにいるのでしょうか。日本の学校制度でいうと、春から高校3年生になる娘のためです。高校3年で編入を認めてくれる学校はほとんどありませんし、もしそれができたとしても、すぐに大学受験の準備をしなければなりません。中学、高校の勉強を英語でやってきた彼女にとって、日本語に切り替え、日本の大学受験に備えるのはとても無理な話です。

海外の高校を卒業していれば、海外帰国生として特別の入試を実施してくれる日本の大学がたくさんありますが、途中で帰ってきてしまうと、そのような配慮を受けることができません。そんなわけで、娘が現在通学中の高校を卒業する2005年の6月まで、二人でこちらに残ることになりました。

日本には、海外帰国生入試を受けて昨年大学に入学した息子がいます。夫と息子、私と娘という組合せで、しばらく別れて暮らすことになります。料理のできない日本組は、ロンドン組より苦労が大きそうで、私は申し訳なく思っています。

さてロンドン組は、これからの生活に備えて年明けから忙しい日々を送っています。まずは住居探しです。今まで住んでいたロンドン郊外の一戸建てから、娘の学校に近い小さなフラット(日本流に言えばマンション)に移ることにして、不動産屋を訪ねました。5軒の不動産屋に出向いていろいろな物件を紹介してもらい、そのうち10件近くを実際に見に行きました。時間と根気の要る作業でしたが、その結果、良い物件はまだ前の借主が住んでいるうちに押さえないといけないことが分かりました。私の気に入った物件は3月5日以降にしか入居できないので、引越しはこれからです。

新しい家は、ビートルズが数々のヒット曲をレコーディングしたAbbey Road Studioから歩いて2−3分のところにあります。スタジオ前の横断歩道は、ビートルズの4人が横断している写真がレコード・ジャケットに使用されたため、有名になりました。今でも観光客が、この横断歩道で記念撮影をしています。でも不動産屋のお兄さんがそっと教えてくれました。

「ビートルズが写真撮影したあの横断歩道は、そのあと移動されてしまったから、本当は元の場所からちょっとずれているんだけどね。」

メンバーの一人であるポール・マッカートニーは、今もこのあたりに住んでいます。

家の契約にかかわる様々な手続き、今住んでいる家の契約終了手続き、引越し業者の見積もりと選定、現在使用している車を売却する手配、日本に送る荷物とロンドンの新居に送る荷物の整理、今住んでいる家を借りたときの状態に戻す作業など、やるべきことが山ほどあって、あまり器用でない私はロンドン通信を書くゆとりがなく、今日まで過ぎてしまいました。長い間更新ができず失礼いたしました。

今は夫を無事日本に送り出し、ちょっと一息ついたところです。寂しさを感じるひまもなく、日本への船便発送、新居への引越しなどが待っていますが、これからもロンドン通信をどうぞよろしくお願いいたします。

04・02・24