01・09・05
日本への一時帰国
この夏1年半ぶりに日本で2週間あまりを過ごしました。日本企業駐在員の間では、駐在期間中日本に里帰りするのを『一時帰国』、駐在期間を終えて帰国するのを『本帰国』と呼びます。猛暑の日本を覚悟していたのですが、帰国したのが8月だったため、思ったより快適に過ごすことができました。
今回帰国して強く感じたのは、日本の電車の快適さです。前回のロンドン通信でTubeを取り上げましたが、息子と娘がTubeで通学するようになってから、何度学校に電話を入れて電車遅延による遅刻報告をしたか分かりません。せっかく乗り込んだ電車も、途中で行き先が変わったり、運行中止になることがあります。一時よりは減りましたが、ロンドン中心部では爆弾予告によって駅が閉鎖され、電車が目的の駅に停車せず通過してしまうこともあります。また世界最古の地下鉄であるため、揺れや騒音も相当なものです。車両もかなり古いものが使用されています。これに加え乗客には様々な人種の人々がいて、緊張感があります。車内および駅構内ではスリが多発しています。
これに対して日本の電車は明るく、清潔で、運行も正確です。適度に冷房の効いた車内、見渡せば乗客は日本人ばかり、座席に座っている多くの人々が昼寝をしていました。何とも平和な日本の風景です。最近は日本でも電車内の暴力事件があるようですが、全般的にはまだまだ安全で信頼性の高い公共の交通機関。良いところはいつまでも変わらないでいてほしいと思います。
ロンドンのTubeではとても昼寝をする気になれませんが、いつ発生するかもしれない運行の遅れに備えてか、通勤・通学の車内で本(ペーパーバック)を読む人がたくさんいます。日本にあるようなマンガ本はこちらにはありません。言葉を尽くして意思を伝える文化と、何も言わなくても絵を見るだけで共感できる文化の違いかもしれません。
久しぶりに日本の本屋にも行きましたが、一般書店では「コミック」と「実用書」が主流で文学書のスペースが大変小さくなっていることに気づきました。ある書店では、コミックが売場の半分を占めていました。千葉駅周辺の大きな書店をいくつか当たりましたが、私の探している文学関係の新刊は見つからず、結局東京駅のそばにある大型書店で本を入手することができました。帰りの電車内、若い人達がケイタイのボタンを器用に操作しています。ケイタイメールの普及で短縮された簡単な日本語の使用が主流となり、分厚い本を読む人は減ってきているのだろうか…などと考えながら、ついつい車内でうとうとしてしまいました。日本の電車はやはり快適です。
一時帰国のため、ロンドン通信が遅れましたことをお詫び申し上げます。