『聊斎志異』目録

   第2巻


  右の本は1975年、台湾・文源書局有限公司で出版されたもの。注が前頁の2冊のものと違って、注が本文の間に挿入されていず、煩わしさがない。さらに句読点、会話には「 」が付せられいて、私のような素人にはこちらが読みやすい。ただし、この本は本文の一部がカットされていることもあり要注意。きわどい表現がカットされているから、どうやら青少年用の編集されたものらしい。編者も注を付けた人の名もない。
 
 巻  題  角川文庫
巻数
読了日  物語への手引きと評(私のコメント)   分類   
嬰ィ(寧) 09/01/13 王は父親に早く死なれて、母親に過保護に育てられた。勉強もよく出来たが、許婚が早死にしたのでまだ未婚。いとこの呉と野遊びをしていて、綺麗な女性と出会って、一目惚れし、恋の病に取り付かれ、寝込んでしまう。見舞いに来た呉が、その女を探したやろうと申し出て、探すのだか、見つからない。王に、ここから18キロ離れた所に住む遠縁の娘だと嘘をつく。王は自分で探しに出かける。・・・・

【評】嬰ィは美しいだけでなくよく笑う娘さんで、読んでいてその笑い声が聞こえそうだ。嬰ィの育ての親が耳が遠い事など細やかな描写、山間の桃源郷のような住まいの描写も素晴らしい。狐の話としなくても通じる佳編である。
笑う女 
聶小倩 09/01/15 気性の真っ直ぐな堅物の男の話である。旅の途中、廃墟に近い寺で泊まろうとすると先客に書生が住んでいる。夜窓の外で話し声がするので覗いてみると、中年女と老婆が話しており、そこに7,8の女が来る。絶世の美女の聶小倩で、主人公と女性とのやや長い物語が続く。この女性はこの世の人ではないとわかりながら、話が進む所が面白い。

【評】愚直な男が幸運を掴み、読後感が良い。あの世とこの世を行き来する聶小倩のけなげさもよく描かれている。嬰ィに劣らない。母親も賢い。
不思議な皮袋 
水奔草 09/01/17 水?草はそれを食べると死んで、かつ、誰か替りが出来るまで、魂が輪廻できなくなる。ある茶屋で、美人にこれを飲まされた男の話である。これを救うには、飲ませた相手の姓を知って、そこから古い袴を貰ってこれを煎じて飲めば助かると。相手は寇家の三女と分ったが・・・

【評】主人公は死ぬが、なんだか幸せな話のような気がする。寇家の三女が良い娘だから。
水奔という草 
鳳陽士人 09/01/18 半年すれば帰ってくると、遊学に出た良人を待つ妻が主人公である。ある夜、綺麗な女性がやって来て、ご主人に会いたいだろう。あわせてあげると言って連れ出す。確かに、白い驢馬に乗った主人と出会う。その麗人の家に夫婦一緒に泊ることになるのだが・・・・

【評】妻、良人、弟が同じ夢を見る。この数をもっと増やせばどうなるだろうか?リアルな描写の一部を文源書局本はカットしている。
最後の但不知麗人何許耳(麗人は何者かわからなかった)が光る。
符合した夢 
珠児 09/01/18 金持ちだが跡継ぎのない男が50過ぎて妾に産ませた子供、珠児は頭が弱いが、親にとっては宝なのである。眇めの僧が寄進を要求するのだが、ケチったために、珠児は病気になる。・・・・

【評】複雑な話で筋を追うのが難しかった。
冥土の子供 
小官人 09/01/16 書斎にいると、馬が蛙ほど人が蟻ほどの大きさの天子の行列が通る。主人公のために贈り物を持ってくる。さてどうなるか?

【評】原文、5行の小品だが面白い。
小さな役人 
胡四姐 09/01/18 艶福の男とはこのような男を言うのだらうか?美女が次々出てきて最後にはあの世での世話まで焼いてくれる。

【評】文源書局本は4箇所カット。
狐の姉妹 
祝翁 09/01/18 一度死んだ男が、黄泉路を歩いていて、老妻のことが気になって、引き返し、生き返り、今度は一緒に連れて行く話である。

【評】康煕21年(1682)の記録である。
死出の道づれ 
侠女 09/01/20 母親と暮らす貧乏な男の向かいに、これまた貧乏な母娘が住む。娘は美人だが冷たい。その娘が男のため子供を生んでくれる。

【評】珍しく女は狐ではない。美しいが凛としている。
侠女 
酒友 09/01/20 大して金持ちでないのに大酒飲みの男の話。ある日、ベッドに入ると狐が居て、酔っ払って術を忘れたと見える。男は酒友として遇し、運が開ける。

【評】酒飲みのおおらかさが嬉しい。
飲み友達 
蓮香 09/01/22 主人公桑は物静かな読書家といった感じ。そこに蓮香(狐)と李(鬼=幽霊)の美女が絡んでくる。どちらも良い女だが一方は体が温かく、一方は冷たい。・・・この2人の美女はそれぞれ一度生まれ変わる。

【評】他の主人公と同様に、性格がよく、艶福がある。長編で2人が互いにすき合うのが面白い。
二世にわたる情縁 
阿宝 09/01/22
21/03/05
主人公は指が6本ある。愚直そのもので、馬鹿呼ばわりされて、みなのからかいの対象となっている。しかも、妻を失い貧乏と来ている。一方、阿宝は大金持ちの娘で婿探しの最中、絶世の美女で引く手数多。この2人の結ばれる話である。

[追記〕この話には、科挙に関連して「関節」ということが出る。これは、試験官と受験生との不正ななれ合いでということであるが、主人公は、「関節」だと言って騙され、答えを丸暗記して受験したら、偶然、同じ問題が出て、進士になると言う話が出る。 宮崎市定『中国に学ぶ』中公文庫99頁 「科挙と関節」

【評】好きな女の所へ、心が鸚鵡なって飛んで行くのが面白い。このような男にこそ幸せを上げたいものだし、作者もそうしている。一念を貫く凄さ。
鸚鵡なって 
任秀 09/01/23 商売の仕入れに旅に出た任さんが途中せ申さんという人と仲良くなったが、病気になり、有り金を申さんに渡して後のことを頼んで死ぬ。所が申さんは粗末な棺を用意しただけで、ずらかる。話が任さんの子供、秀の話へと続く。

【評】秀は博打が好きで最後は思わぬ結末となる。
姿のない助太刀 
張誠 09/01/25 明末の動乱で、妻を敵にさらわれた男が、新たに妻を娶り、納という子を得るが、妻は早世。次の妻は誠という子を産むが、これが典型的な継母として、納をいじめる。弟の誠はよく出来た子で、兄を庇う。この2人の兄弟を中心に話は進むが、やがて思いがけない出会いが起きる。

【評】紆余曲折があって講談に仕立てると面白い。著者は何度も泣いたという。終末がほのぼのと心温まる。
奇しき遭遇 
巧娘 09/01/27 父親が60歳を越してから生まれた廉は頭はよかったが、性的に不具者で17歳でも嫁さんがいなった。一物が蚕ようだと書いてある。その男の話である。勉強が出来るのだがある日ふと、猿回しを見て、家出してしまう。(不思議な話)それから、彼の旅が始り、2人の美女との巡り合いが始る。狐と鬼の感覚の差の様なものがあって、齟齬が生じるのだが、結果はOK。場所も世代も変わる。

【評】最後の結末が分らないのが良い。狐や鬼にかこつけて書いてあるが、こんな女性が本当に居たのではないかと思う。
墓穴の中の恋 
伏狐 09/01/28 憑いた狐を追い出す話が二つ。男でないと出来ない。
【評】8行の原文に対し、翻訳は16行。漢語の力知るべし。
狐退治
三仙 09/01/28 科挙の受験に行く途中、3人の秀才に会い、一夜歓談する。試験の結果は良かった。
【評】三仙の正体が珍しい。予知夢か?
三人の仙人 
蛙曲 09/01/28 蛙を使った見世物。原文、2行、。
【評】12匹いるのだから、12音階の音が出たのかも。
 蛙の歌
鼠戯 09/01/28 鼠を使ったお芝居。原文3行。。
【評】実際にあったのであろう。
 鼠芝居
趙城虎 09/01/29 70歳の婆さんが一人息子を虎に食われた。知事に訴えるが「虎は法が及ばない」というが婆さんは動かない。その虎を捕らえようとする者が出たり、問題の虎も出てきて面白いことになる。

【評】母の一念は強い。
趙城の虎 
小人 09/01/29 手品師が箱から小人を取り出して、歌わせて稼いでいる。あるところの知事がその中身を詮索するが・・・・4行原文

【評】真面目な知事のような気がするが、このような人には問題は解けない。
小人された子供たち 
梁彦 09/01/29
くしゃみが出る奇病で、ある日、大きなくしゃみをすると、親指大の犬のようなものが飛び出してくる。これが4度続き、強いのが弱いのを喰べてしまう。原文6行

【評】奇妙
瘤になった犬